UNRIPE

ポケモンに関する、Twitter (@lkm_mm) 上で吐き出した妄想をまとめていきます。

#4. ポケモンの化石復元技術の原理とその開発者

@lkm_mm

 

【概要】

 カントー地方・グレンタウンのグレンラボラトリー(ポケモンラボ;ポケモンけんきゅうじょ)というポケモンの研究所では、ポケモンの化石から絶滅したポケモンを復元してもらうことができる。しかしながら、具体的にどのような技術を使ってポケモンの復元を行っているか、また、そのような技術を誰が開発したかは不明である。本考察ではその技術の詳細について考えていく。また、そこから予想される化石復元技術の開発者についても考察する。

 

【背景】

 ポケモンの化石は第1世代(初代;赤・緑、青、ピカチュウ)から登場している。カントー地方・おつきみやま(以降、「おつきみ山」と表記)ではこうらポケモン・カブトの化石であるこうらのカセキ、及びうずまきポケモンオムナイトの化石であるかいのカセキが見つかる。赤・緑、青、ピカチュウ及びファイアレッドリーフグリーン(第3世代)では、おつきみ山でのイベントの後にどちから一方を入手することができる。また、ニビシティの博物館(ニビかがくはくぶつかん)ではかせきポケモンプテラのDNAが封じ込められているひみつのコハクを貰うことができる。これらの化石類はグレンタウンのグレンラボラトリーにいる研究員(エラーイはかせ;図1 A)に渡すことでポケモンに復元してもらえる。後の世代でも多くの化石由来のポケモンが登場しており、第3世代ではウミユリポケモンリリーラ(ねっこのカセキ)とむかしエビポケモンアノプス(ツメのカセキ)、第4世代ではずつきポケモンズガイドス(ずがいのカセキ)とシールドポケモンタテトプス(たてのカセキ)、第5世代ではさいこどりポケモンアーケン(はねのカセキ)とこだいがめポケモンプロトーガ(ふたのカセキ)、第6世代ではようくんポケモンチゴラスアゴのカセキ)とツンドラポケモンアマルスヒレのカセキ)が登場した。第3世代以降にも化石からポケモンを復元してもらえる施設は登場しており、前述した化石を持ち込むことで古代のポケモンを入手できる。しかし、化石復元技術がどのような原理に基づく技術なのかは明らかでない(ただし、ハートゴールドソウルシルバーのニビかがくはくぶつかんでは原理について記述した書籍の存在が確認できる;図1 B)。本考察では、主にグレンラボラトリーに着目することでこの技術について言及していく。

 

【知見と考察】

 

かつてグレンタウンに住んでいたポケモンの研究者

 グレンタウンに研究所(グレンラボラトリー)があるのは前述の通りであるが、この町には昔フジはかせ(以降、「フジ博士」と表記)という研究者が住んでいたという。フジ博士は自分の屋敷を持ち、研究を行っていたらしい。グレンラボラトリーにはその創設者として写真が飾られている (図1 C) ほか、グレンジムジムリーダーであるカツラとも親交があったことが示唆されている (図1 D, ※ 1)。グレンラボラトリーが化石復元技術を有するということは、研究所の創設者であるフジ博士はその技術開発に関与した可能性が高いと考えられる。

 

ポケモン屋敷の日記とポケモン図鑑から読み解くフジ博士の専門分野

 フジ博士が化石復元技術の開発に関与したことを示唆する根拠は他にあるだろうか。この点について言及するために、本考察ではポケモンやしき(以降、「ポケモン屋敷」と記述)に着目する。ポケモン屋敷は、グレンタウンに存在する廃墟と化した屋敷である。そこはかつてフジ博士の住居だったと言われており、フジ博士が去ってからは野生ポケモンの住処と化したらしい。ポケモン屋敷ではフジ博士がしんしゅポケモン・ミュウについて記述した日記が残されており、いでんしポケモンミュウツー誕生の記録を見ることができる (文1 A)。また、ポケモン図鑑にはミュウツーは1人の科学者が遺伝子(※ 2)組換え技術を使うことで生み出したポケモンであると記述されている (文1 B)。この記述とポケモン屋敷の日記より、フジ博士はポケモンの遺伝子研究の結果ミュウツーを生み出したことが示唆される(※ 1)。また、フジ博士は遺伝子組換え(ゲノム編集(※ 3))技術に長けていたことも伺える。

 また、グレンラボラトリーには遺伝子に変異が起こりやすいことで知られるしんかポケモンイーブイについて発現する研究員や、技 ”ゆびをふる” が記録されたわざマシン(以降、「技マシン」と表記)をくれる研究員が存在する (図1 E, F)。フジ博士がポケモンの遺伝子について研究していたならば、グレンラボラトリーでイーブイについての話題が出てくることは自然とも言える。”ゆびをふる” の技マシンについては、ポケモンの潜在能力を最大限に発揮させようと考えた(高い戦闘能力を持つポケモンであるミュウツーを創り出したことからこのことが言える)フジ博士の研究産物の1つとして考えることもできる。

 

※ 1. カントー地方・シオンタウンでは「フジろうじん」(以降、「フジ老人」と表記)と呼ばれる老人が登場する。2013年の特別アニメ「ポケットモンスター THE ORIGIN」ではこの老人がミュウツーを創り出した人物であることが明言されており、「フジろうじん」と「フジはかせ」はゲーム中でも同一人物である可能性が極めて高い。

※ 2. 遺伝子:DNA(後述)中の、タンパク質の情報を保持する領域のこと(過去記事も参照)。

※ 3. ゲノム編集:簡単に記述すると、遺伝子を破壊したり導入したりすること。


lkmmmigapkmn.hatenablog.com

lkmmmigapkmn.hatenablog.com

 

f:id:lkm_mm_iga_pkmn:20180428233317j:plain

1. 化石復元技術とグレンラボラトリーを取り巻く人物

A. グレンラボラトリーで、ポケモンのカセキを復元してくれる研究員(エラーイはかせ)。初代では「こうらのカセキ」をカブトに、「かいのカセキ」をオムナイトに、「ひみつのコハク」をプテラに復元してもらえる。

B. ハートゴールドソウルシルバーにおける、ニビかがくはくぶつかんが保有する書籍。「カセキふくげんのげんり」という書籍の存在が確認できるが、著者及び内容については不明である。他にも、古代のポケモンポケモンの生物としての進化についての記載があると思われる書籍が散見される(いずれも著者及び内容は不明)。

C. グレンラボラトリーの創設者であるフジ博士の写真。

D. グレンジムに飾られているグレンジムジムリーダー・カツラとフジ老人の写真(ファイアレッドリーフグリーンのみ)。ここでは「フジ博士」ではなく「フジ老人」の写真が登場している。グレンタウンの女性は「カツラは研究所ができる前からグレンタウンに住んでいる」という旨の発言をするが、「フジ」という名前やこの発言を根拠としてシオンタウンのフジ老人とグレンラボラトリーのフジ博士が同一人物であるという見解がなされてきた(※ 1も参照)。

E. グレンラボラトリーの研究員の発言。ポケモン図鑑等で遺伝子について言及されるポケモンであるイーブイが、グレンラボラトリーでも研究対象とされている可能性が示唆される。

F. “ゆびをふる” が記録された技マシン(わざマシン35)をくれる研究員。

 

 

A

 

にっき 7がつ5か ここは みなみアメリカの ギアナ ジャングルの おくちで しんしゅの ポケモン はっけん

にっき 7がつ10か しんはっけんの ポケモン わたしは ミュウと なづけた

にっき 2がつ6か ミュウが こどもを うむ うまれた ばかりの ジュニアを ミュウツー よぶことに……

にっき 9がつ1にち ポケモン ミュウツー つよすぎる ダメだ…… わたしの てには おえない!

 

B

 

赤・緑、ファイアレッド

けんきゅうの ために いでんしを どんどん くみかえていった けっか きょうぼうな ポケモン なった。

 

青、リーフグリーンX

ひとりの かがくしゃが なんねんも おそろしい いでんし けんきゅうを つづけた けっか たんじょうした。

 

ピカチュウ

ミュウの いでんしと ほとんど おなじ。だが おおきさも せいかくも おそろしいほど ちがっている。

 

ルビー・サファイア・エメラルド、オメガルビーアルファサファイア

いでんしそうさに よって つくられた ポケモン。にんげんの かがくりょくで からだは つくれても やさしい こころを つくることは できなかった。

 

ダイヤモンド・パール・プラチナ、ブラック・ホワイト、ブラック2・ホワイト2Y

ミュウの いでんしを くみかえて うみだされた。ポケモン いちばん きょうぼうな こころを もつという。

 

1. フジ博士は遺伝子操作によってミュウツーを創り出した

A. ポケモン屋敷に残されたフジ博士の日記。

B. ポケモン図鑑におけるミュウツーの頁。

  

遺伝子工学を用いた古代のポケモンDNA配列解析

 DNA (deoxyribonucleic acid;デオキシリボ核酸) はアデニン (A)、チミン (T)、グアニン (G)、シトシン (C)(まとめて「塩基」と呼ぶ;図2 B)のいずれか1つとデオキシリボース、及びリン酸と呼ばれる物質が結合した「ヌクレオチド」(図2 A, C) を基本単位とする物質で、生命体の情報を記録するために使用されている。このヌクレオチドがリン酸とデオキシリボースのOHの部分(OH基;ヒドロキシ基)を介して結合(ホスホジエステル結合)し、巨大な分子(DNA)を形成する (図2 A)。DNAは遺伝子の本体でもあり、生命活動に必要なタンパク質の情報を保持している。ATGCの並び順は塩基配列と呼ばれ、その順番がタンパク質の情報となっている。塩基配列は生物種によって異なる場合があり、同様の機能を持つタンパク質でも種間で違いがあることも多い。塩基配列の変化は突然変異の原因であり、例えば体色の変化等を引き起こすことがある。生物はそのような変異を蓄積することで種が分岐したと考えられている(いわゆる「生物の進化」)(※ 4)。

 化石は古代の生物の死骸であり、これを生き返らせることはできない。しかし、化石中にはその生物の遺伝情報(生物の設計図)を持つDNAが遺されている可能性がある。絶滅したポケモンの全DNA配列を化石を用いた解析から明らかにすることができれば、復元への足がかりが得られるはずである。マイケル・クライトンの小説、及びそれを原作としたスティーブン・スピルバーグの監督作品である『ジュラシック・パーク』では、琥珀に閉じ込められた、恐竜の血を吸った蚊から血液を採取することで恐竜のDNA配列解析が行われている。同作品内では解析できなかった配列をカエルのDNA配列で代用し、これをワニの未受精卵のDNAと置き換えることで恐竜が作り出されている (図3)。ポケモンの化石復元においても一部同様の操作が行われていると予想できる。少なくとも、ポケモンの化石からDNA情報を得る試みは行われ、成功したと考えられる。そしてその配列情報が絶滅したポケモンの復元に大きく貢献したと考えられる。

 

* 近年の研究ではDNA521年の半減期(※ 5)を持つことが明らかとなってきたらしい(文献3)。この知見より、現在では数億年前の化石や琥珀中にはDNAは殆ど遺されていないと考えられているようだ。従来のものよりDNAの検出感度が高いツールが開発されれば、『ジュラシック・パーク』で行われたような解析も可能となるかもしれない。

 

※ 4. DNAに関して、より詳細(専門的)な説明を補図1に示した。

※ 5. 半減期:ある物質の存在量(100 %とする)が半分(50 %)になるまでにかかる時間のこと。例えば1 mgのDNAが存在したとすると、その半分が分解されて0.5 mgになるまでにかかる時間が521年、という意味になる。さらに521年経つと0.5 mgの半分が分解され、0.25 mgとなる(521年毎に半分になる、という意味なので、1042年で0になるということではない点に注意;補図2)。

 

A

f:id:lkm_mm_iga_pkmn:20180428233544j:plain

B

f:id:lkm_mm_iga_pkmn:20180428233630j:plain

C

f:id:lkm_mm_iga_pkmn:20180428233702j:plain

2. DNAの分子構造

A. DNAの構成単位(ヌクレオチド)の構造。ヌクレオチドはリン酸、デオキシリボース、塩基(A, T, G, Cのいずれかを1つ持つ)から構成される物質である。このヌクレオチドが連結することでDNAは巨大な分子となる。ATGCが並ぶ順番によって情報が記録されているため、ヌクレオチドの連結する順番は生命体にとって非常に重要である。Hは水素原子、Oは酸素原子、Pはリン原子を表す。

B. DNAを構成する塩基(A, T, G, C)の構造。Nは窒素原子を表す。

C. デオキシアデニル酸、デオキシチミジル酸、デオキシグアニル酸、デオキシシチジル酸(A, T, G, Cのいずれかを持つヌクレオチド)の構造。

 

A

f:id:lkm_mm_iga_pkmn:20180428233910j:plain

B

f:id:lkm_mm_iga_pkmn:20180428233932j:plain

補図1. 連結したヌクレオチドは二重らせん構造を形成し、染色体を構成する

A. 2本の連結したヌクレオチド間の結合を表した図。多量のヌクレオチドが結合(連結)したものをポリヌクレオチドという。ポリヌクレオチド同士は図のように、塩基を介して弱く結合する。この結合は水素原子(H)を介することから水素結合と呼ばれ、アデニン(A)とチミン(T)の間では2本、グアニン(G)とシトシン(C)の間では3本の水素結合が形成される。各塩基が水素結合を形成する相手は決まっており、AはT、GはCと水素結合を形成して塩基対をつくる。また、2本のポリヌクレオチドは反対向きに結合する。

B. 二本鎖ポリヌクレオチドは、二重らせん構造と呼ばれる右巻き(時計回り)のらせん構造を形成する(一部例外あり)。これがヒストンと呼ばれるタンパク質に巻きつき、共に凝縮されることで染色体となる。多くの生命体は複数本の染色体を持つが、その本数は生物毎に決まっている。ヒトの場合、男性は24種、女性は23種の計46本の染色体を持つ(22種は常染色体と呼ばれる染色体で、一種につき2本ずつ持つ。残り2種は性染色体と呼ばれる性別決定に関わる染色体であり、男性はX染色体とY染色体の2種類をそれぞれ1本ずつ、女性はX染色体を2本持つ)。

f:id:lkm_mm_iga_pkmn:20180428234114j:plain

3. ジュラシック・パーク」で登場した恐竜の復元技術の概要

ジュラシック・パーク」では、琥珀中に閉じ込められた蚊から恐竜の血液を採取し、そのDNAを解析することで恐竜の全ゲノムを解読している(具体的な解析手法は、本図では省略している)。DNA配列は解析手法上の問題から解読不能な場合もある。そのため、「ジュラシック・パーク」においては恐竜とDNAの類似性が高い(と作中で考えられているものと思われる)カエルのDNA配列を元に復元が行われている。復元された全ゲノムはワニ(受精卵)のゲノムと置換され、作中ではそれが恐竜へと成長している。

 

f:id:lkm_mm_iga_pkmn:20180428234209j:plain

補図2. DNA521年毎に半量が分解される

DNAの半減期を表したグラフ。文献3によれば、DNAは521年で元の量の半分が分解され、残りのDNAのうちさらに半分が次の521年で分解される(521年の半減期を持つ)という。

 

ポケモンの化石復元技術の開発者

 前項では、絶滅したポケモンの復元にはDNA配列決定が必要だったと予想した。配列決定のためにはDNAや遺伝子についての知識やその操作技術が必要である。これまで述べてきた点を総合すると、化石復元技術の開発にはフジ博士が関与した可能性が示唆される。前述の通り、フジ博士はミュウの子供の遺伝子を操作してミュウツーを創り出した研究者である。ミュウ(ミュウツー)の研究と化石復元技術の開発が関連していたかについては明らかでないが、(i) フジ博士がグレンタウンに住んでいたこと、(ii) 化石復元技術をグレンラボラトリーが有すること、(iii) 予想されるフジ博士の専門分野と化石復元に必要な技術が一致していること、の3点を考慮すると、この2つの研究テーマが同時に進められていた可能性が考えられる。前項では「ジュラシック・パーク」でカエルのDNAを恐竜のDNA配列を補うために使用した点を紹介したが、フジ博士はミュウのDNAを古代のポケモンのDNA配列を補うために使ったかもしれない。ミュウは自身が持つ遺伝子のDNA配列から、全てのポケモンの祖先であると考えられているポケモンである。その事実を発見したのがフジ博士である可能性も十分に考えられ、古代のポケモンの復元技術や人工ポケモン開発の根幹を担う理論を提唱したとも考えられる (図4)。

f:id:lkm_mm_iga_pkmn:20180428234325j:plain

4. ポケモンの化石復元技術の原理(予想)

ポケモンの化石復元技術においても、「ジュラシック・パーク」における恐竜復元と同様の操作が行われたと考えられる。カセキやコハクといった古代のポケモンのゲノム情報を持つものからDNAを採取して配列を解読し、解読不能な部分は現代のポケモン(近縁種と考えられる)のDNA配列を補填したのだろう。仮にこの操作にフジ博士が関与していたとするならば、「現代のポケモン」に該当するポケモンはミュウだったのかもしれない(初代のポケモン図鑑ではミュウは「絶滅したはずのポケモン」とされているため、「現代のポケモン」という表記は必ずしも正しくないかもしれない。映画「ミュウツーの逆襲」(1998年) ではミュウの睫毛の化石が登場したが、ゲーム本編におけるフジ博士はその点についても研究をしていたのだろうか)。解読された配列情報を元に、古代のポケモンの肉体が再現されたと考えられる。ただし、この点については大きな疑問が残る(【メタの壁】を参照)。

 

【メタの壁】

 ここでは、科学的または論理的に議論することが難しいと思われる事柄について記述する。創作物においては、現実的にありえない(考えられない)設定が数多く登場する場合がある。そのため、本編中で明らかになっていない点に関して考察を行う場合は解釈不能な疑問が生じることが少なくない(ポケモンにおいては、「タマゴから生まれたポケモンは成体と同じサイズなのか」といった疑問や「カラカラのホネは本当に母親のものなのか」など)。本項ではこのような点について言及していく。

 

化石復元技術に関する残された疑問

 化石復元技術の原理とその開発者については前述した通りだが、古代のポケモン復元に関してはまだ謎が残されている。古代のポケモンを復元する際、毎回カセキが必要な理由はなんだろうか。「ジュラシック・パーク」で描かれた方法を用いるならば、DNAの配列が決定されれば化石や琥珀を用いた解析は必要でなくなる。しかしポケモンの化石復元においては、毎度カセキを持ち込む必要がある。そして「ジュラシック・パーク」の恐竜たちとは異なり、復元されたポケモンはタマゴを介さずに生きた姿となる。何故だろうか。メタ的なことを言えば、これはゲーム上の都合である。野生ポケモンを入手する場合は「遭遇→戦闘→捕獲」というプロセスを経ることになるわけだが、化石復元においてはこのプロセスが適用されない。その代わりがカセキの持ち込みであり、「カセキの入手→施設への持ち込み→復元」というプロセスを経るようになっている。故に、カセキ(コハク)と復元されたポケモンの1:1交換が行われる。ただし次項では前述の点を敢えて考慮せず、ある疑問について仮説を提唱する。

 

化石から復元されたポケモンは全て岩タイプを有する

 化石から復元可能なポケモンは、全て岩タイプを有している。この点は第7世代現在まで一切の例外が存在せず、復元された古代のポケモンの共通項となっている。これらのポケモンは、太古に彼らが繁栄していた頃から岩タイプを有していたのだろうか。あるいは、科学技術による復元の副産物として付加されたものなのだろうか。後者の場合は、復元が完全でないということになる。本考察で記述した原理に基づくならば、解析結果から決定したDNA配列が誤っている可能性が示唆される(当然、本考察で言及していない生命現象によるものであるとも考えられる)。ウルトラサンのポケモン図鑑には、チゴラスとその進化系であるぼうくんポケモンガチゴラスの頁に注目すべき記述が存在する。これら2種のポケモンは復元が完全でないとも考えられており、特に古代のガチゴラスには全身に羽毛が生えていたという仮説が存在する。また、プテラについてはメガプテラの姿が本来の姿だという主張もある。これらの知見は第7世代時点でのポケモンの化石復元技術が完全ではない可能性を示唆している。

 

* チゴラス及びガチゴラスのモデルと思われるティラノサウルスには、全身が羽毛で覆われていたという仮説が提唱されている。それが事実かを示す証拠は見つかっておらず、未だ議論となっているようだ。羽毛説を否定する報告もあるらしい(文献4)。チゴラスガチゴラスの図鑑説明に前述のような記述がされたのは、このような研究の背景を考慮したためだろう。また、ウルトラサンのポケモン図鑑にはうずまきポケモンオムスターがふんしゃポケモン・オクタンの遠い祖先であることも記述されているが、オムスターのモデルと思われるアンモナイトはタコの祖先であると考えられている。アーケンのモデルと思われる始祖鳥についても、近年では全ての鳥類の祖先ではないとする説も存在する。ウルトラサンのポケモン図鑑におけるアーケンの頁にも同様のことが記述されている。ウルトラサンのポケモン図鑑には、現実の古代生物研究における最新知見・学説を意識した記述が掲載されているようだ。

 乾燥状態の卵に塩水を戻すことで孵化・成長するシーモンキーアルテミアと呼ばれる属に分類されるプランクトンの改良種)や約2000年の時を経て発芽・開花した大賀ハスのように、長い期間休眠状態にあった古代のポケモンを目覚めさせることが叶うならば、化石復元の完全性に関する答えが出るかもしれない。

 

 

A

 

おおアゴ すさまじい はかいりょく。 ふくげんさせても とうじと おなじ すがたでは ないという せつもある。

 

B

 

かんぜんな ふくげんは ふかのうで じつは ぜんしんに うもうの ような けが あるのではという せつがある。

 

2. チゴラスガチゴラスの復元は完全でない可能性がある

A. ウルトラサンのポケモン図鑑におけるチゴラスの頁。

B. ウルトラサンのポケモン図鑑におけるガチゴラスの頁。 

 

古代のポケモンの復元に化石が必要な理由

 これまでの記述を踏まえて、古代のポケモンの復元に化石が必要な理由を考察する。ポケモンのカセキの説明を参照すると、それぞれのカセキは古代のポケモンの一部であることがわかる。また、ウルトラムーンのポケモン図鑑タテトプスの頁には、タテトプスは顔面の化石以外が発見されないことが記述されている。これらの点と復元されたポケモンがタマゴを介さずに生きた姿となることを合わせると、カセキは復元されたポケモンの体の一部になっている可能性が考えられる。化石は長い年月を経て石のようになったものであるため、この要素が化石ポケモンが共通して持つ岩タイプの要因となっているのかもしれない。「化石から古代のポケモンを復元する」という考え方にも一致する。例えばタテトプスの場合、体は解析した遺伝子情報を用いて人工的に作られたものであり、顔は地中から掘り出された化石が使われているということになる。この仮説であれば、プテラ以外の化石ポケモンについては毎回の復元にカセキが必要な理由が説明できる。古代ポケモンの復元が完全ではなさそうなことも推測はできるだろう。

 

* 前述の通り、この仮説はメタ的な観点を排除して考えている。ヘドロや古代の泥人形からポケモンが生まれるポケモンの世界であればあり得ない話ではないかもしれないが、何億年も地中に埋まっていた化石をそのまま使用するのは合理的でないようにも思われる。さらに言えば、何故復元したポケモンから見つかるタマゴからも同じ姿・タイプのポケモンが生まれるのか、という疑問が生じる。しかし、ウルトラサンにおけるポケモン図鑑のさいこどりポケモンアーケオスの頁には「うもうが こまかいので じゅくれんの しょくにん でなければ ふくげんに しっぱいするという こだいのポケモン。」という記述が存在する。アーケオスの進化前であるアーケンのカセキは「はねのカセキ」であるが、ポケモンの化石復元には実際の化石を用いた手作業の工程が存在するということなのだろうか。

  

【方法】

 

画像

 本考察のゲーム画像は、全て筆者のROMを用いたプレイ画面を使用した。プレイ画面はiPhone 7のカメラを用いて撮影し、MacBook Airに取り込んだものを必要に応じて編集した。画像編集及び図の作成は、Keynote (バージョン6.5.2) を使用して行った。DNAの半減期のグラフ(補図2)はExcelMicrosoft Excel for Mac 2011, バージョン14.7.2)を用いて作成し、Keynote上で編集を行った。

 

使用ROMと本体

 ファイアレッドピカチュウ(VC)及びハートゴールドを使用した。各ROMの起動には、ファイアレッドニンテンドーDS Liteを、ピカチュウ(VC)及びハートゴールドニンテンドー3DS LLを使用した。

 

ゲーム中の記述(ポケモン屋敷の日記、ポケモン図鑑の説明文、カセキの説明文)

 ポケモン屋敷の日記は、VC版ピカチュウを用いて記述を確認した。ポケモン図鑑の記述は、【参考・引用文献】に示す1を参照した。

 

「世代」の区分

 本考察では、バージョン(赤・緑など)を「世代」で区分した。赤・緑、青、ピカチュウを第1世代(初代)、金・銀、クリスタルを第2世代、ルビー・サファイアファイアレッドリーフグリーン、エメラルドを第3世代、ダイヤモンド・パール、プラチナ、ハートゴールドソウルシルバーを第4世代、ブラック・ホワイト、ブラック2・ホワイト2を第5世代、X・Y、オメガルビーアルファサファイアを第6世代、サン・ムーン、ウルトラサン・ウルトラムーンを第7世代とした。

 

【謝辞】

 本考察に関して、情報提供や貴重なご意見を賜った方々に感謝の意を示します。

 

【参考・引用文献】

  1. ポケモンwikihttps://wiki.ポケモン.com/wiki/
  2. Wikipediaジュラシック・パーク及びアルテミア):https://ja.wikipedia.org/wiki/
  3. Kaplan Matt. "DNA has a 521-year half-life." Nat. News (2012).:
    http://www.nature.com/news/dna-has-a-521-year-half-life-1.11555
  4. 朝日新聞DIGITAL:https://www.asahi.com/articles/ASK6V321HK6VULBJ002.html
  5. ヴォート基礎生化学(第3版):東京化学同人