#4. ポケモンの化石復元技術の原理とその開発者
@lkm_mm
【概要】
カントー地方・グレンタウンのグレンラボラトリー(ポケモンラボ;ポケモンけんきゅうじょ)というポケモンの研究所では、ポケモンの化石から絶滅したポケモンを復元してもらうことができる。しかしながら、具体的にどのような技術を使ってポケモンの復元を行っているか、また、そのような技術を誰が開発したかは不明である。本考察ではその技術の詳細について考えていく。また、そこから予想される化石復元技術の開発者についても考察する。
【背景】
ポケモンの化石は第1世代(初代;赤・緑、青、ピカチュウ)から登場している。カントー地方・おつきみやま(以降、「おつきみ山」と表記)ではこうらポケモン・カブトの化石であるこうらのカセキ、及びうずまきポケモン・オムナイトの化石であるかいのカセキが見つかる。赤・緑、青、ピカチュウ及びファイアレッド・リーフグリーン(第3世代)では、おつきみ山でのイベントの後にどちから一方を入手することができる。また、ニビシティの博物館(ニビかがくはくぶつかん)ではかせきポケモン・プテラのDNAが封じ込められているひみつのコハクを貰うことができる。これらの化石類はグレンタウンのグレンラボラトリーにいる研究員(エラーイはかせ;図1 A)に渡すことでポケモンに復元してもらえる。後の世代でも多くの化石由来のポケモンが登場しており、第3世代ではウミユリポケモン・リリーラ(ねっこのカセキ)とむかしエビポケモン・アノプス(ツメのカセキ)、第4世代ではずつきポケモン・ズガイドス(ずがいのカセキ)とシールドポケモン・タテトプス(たてのカセキ)、第5世代ではさいこどりポケモン・アーケン(はねのカセキ)とこだいがめポケモン・プロトーガ(ふたのカセキ)、第6世代ではようくんポケモン・チゴラス(アゴのカセキ)とツンドラポケモン・アマルス(ヒレのカセキ)が登場した。第3世代以降にも化石からポケモンを復元してもらえる施設は登場しており、前述した化石を持ち込むことで古代のポケモンを入手できる。しかし、化石復元技術がどのような原理に基づく技術なのかは明らかでない(ただし、ハートゴールド・ソウルシルバーのニビかがくはくぶつかんでは原理について記述した書籍の存在が確認できる;図1 B)。本考察では、主にグレンラボラトリーに着目することでこの技術について言及していく。
【知見と考察】
かつてグレンタウンに住んでいたポケモンの研究者
グレンタウンに研究所(グレンラボラトリー)があるのは前述の通りであるが、この町には昔フジはかせ(以降、「フジ博士」と表記)という研究者が住んでいたという。フジ博士は自分の屋敷を持ち、研究を行っていたらしい。グレンラボラトリーにはその創設者として写真が飾られている (図1 C) ほか、グレンジムジムリーダーであるカツラとも親交があったことが示唆されている (図1 D, ※ 1)。グレンラボラトリーが化石復元技術を有するということは、研究所の創設者であるフジ博士はその技術開発に関与した可能性が高いと考えられる。
ポケモン屋敷の日記とポケモン図鑑から読み解くフジ博士の専門分野
フジ博士が化石復元技術の開発に関与したことを示唆する根拠は他にあるだろうか。この点について言及するために、本考察ではポケモンやしき(以降、「ポケモン屋敷」と記述)に着目する。ポケモン屋敷は、グレンタウンに存在する廃墟と化した屋敷である。そこはかつてフジ博士の住居だったと言われており、フジ博士が去ってからは野生ポケモンの住処と化したらしい。ポケモン屋敷ではフジ博士がしんしゅポケモン・ミュウについて記述した日記が残されており、いでんしポケモン・ミュウツー誕生の記録を見ることができる (文1 A)。また、ポケモン図鑑にはミュウツーは1人の科学者が遺伝子(※ 2)組換え技術を使うことで生み出したポケモンであると記述されている (文1 B)。この記述とポケモン屋敷の日記より、フジ博士はポケモンの遺伝子研究の結果ミュウツーを生み出したことが示唆される(※ 1)。また、フジ博士は遺伝子組換え(ゲノム編集(※ 3))技術に長けていたことも伺える。
また、グレンラボラトリーには遺伝子に変異が起こりやすいことで知られるしんかポケモン・イーブイについて発現する研究員や、技 ”ゆびをふる” が記録されたわざマシン(以降、「技マシン」と表記)をくれる研究員が存在する (図1 E, F)。フジ博士がポケモンの遺伝子について研究していたならば、グレンラボラトリーでイーブイについての話題が出てくることは自然とも言える。”ゆびをふる” の技マシンについては、ポケモンの潜在能力を最大限に発揮させようと考えた(高い戦闘能力を持つポケモンであるミュウツーを創り出したことからこのことが言える)フジ博士の研究産物の1つとして考えることもできる。
※ 1. カントー地方・シオンタウンでは「フジろうじん」(以降、「フジ老人」と表記)と呼ばれる老人が登場する。2013年の特別アニメ「ポケットモンスター THE ORIGIN」ではこの老人がミュウツーを創り出した人物であることが明言されており、「フジろうじん」と「フジはかせ」はゲーム中でも同一人物である可能性が極めて高い。
※ 2. 遺伝子:DNA(後述)中の、タンパク質の情報を保持する領域のこと(過去記事も参照)。
※ 3. ゲノム編集:簡単に記述すると、遺伝子を破壊したり導入したりすること。
図1. 化石復元技術とグレンラボラトリーを取り巻く人物
A. グレンラボラトリーで、ポケモンのカセキを復元してくれる研究員(エラーイはかせ)。初代では「こうらのカセキ」をカブトに、「かいのカセキ」をオムナイトに、「ひみつのコハク」をプテラに復元してもらえる。
B. ハートゴールド・ソウルシルバーにおける、ニビかがくはくぶつかんが保有する書籍。「カセキふくげんのげんり」という書籍の存在が確認できるが、著者及び内容については不明である。他にも、古代のポケモンやポケモンの生物としての進化についての記載があると思われる書籍が散見される(いずれも著者及び内容は不明)。
C. グレンラボラトリーの創設者であるフジ博士の写真。
D. グレンジムに飾られているグレンジムジムリーダー・カツラとフジ老人の写真(ファイアレッド・リーフグリーンのみ)。ここでは「フジ博士」ではなく「フジ老人」の写真が登場している。グレンタウンの女性は「カツラは研究所ができる前からグレンタウンに住んでいる」という旨の発言をするが、「フジ」という名前やこの発言を根拠としてシオンタウンのフジ老人とグレンラボラトリーのフジ博士が同一人物であるという見解がなされてきた(※ 1も参照)。
E. グレンラボラトリーの研究員の発言。ポケモン図鑑等で遺伝子について言及されるポケモンであるイーブイが、グレンラボラトリーでも研究対象とされている可能性が示唆される。
F. “ゆびをふる” が記録された技マシン(わざマシン35)をくれる研究員。
A
にっき 7がつ5か ここは みなみアメリカの ギアナ ジャングルの おくちで しんしゅの ポケモンを はっけん
にっき 7がつ10か しんはっけんの ポケモンを わたしは ミュウと なづけた
にっき 2がつ6か ミュウが こどもを うむ うまれた ばかりの ジュニアを ミュウツーと よぶことに……
にっき 9がつ1にち ポケモン ミュウツーは つよすぎる ダメだ…… わたしの てには おえない!
B
赤・緑、ファイアレッド
けんきゅうの ために いでんしを どんどん くみかえていった けっか きょうぼうな ポケモンに なった。
青、リーフグリーン、X
ひとりの かがくしゃが なんねんも おそろしい いでんし けんきゅうを つづけた けっか たんじょうした。
ミュウの いでんしと ほとんど おなじ。だが おおきさも せいかくも おそろしいほど ちがっている。
ルビー・サファイア・エメラルド、オメガルビー・アルファサファイア
いでんしそうさに よって つくられた ポケモン。にんげんの かがくりょくで からだは つくれても やさしい こころを つくることは できなかった。
ダイヤモンド・パール・プラチナ、ブラック・ホワイト、ブラック2・ホワイト2、Y
ミュウの いでんしを くみかえて うみだされた。ポケモンで いちばん きょうぼうな こころを もつという。
文1. フジ博士は遺伝子操作によってミュウツーを創り出した
A. ポケモン屋敷に残されたフジ博士の日記。
DNA (deoxyribonucleic acid;デオキシリボ核酸) はアデニン (A)、チミン (T)、グアニン (G)、シトシン (C)(まとめて「塩基」と呼ぶ;図2 B)のいずれか1つとデオキシリボース、及びリン酸と呼ばれる物質が結合した「ヌクレオチド」(図2 A, C) を基本単位とする物質で、生命体の情報を記録するために使用されている。このヌクレオチドがリン酸とデオキシリボースのOHの部分(OH基;ヒドロキシ基)を介して結合(ホスホジエステル結合)し、巨大な分子(DNA)を形成する (図2 A)。DNAは遺伝子の本体でもあり、生命活動に必要なタンパク質の情報を保持している。ATGCの並び順は塩基配列と呼ばれ、その順番がタンパク質の情報となっている。塩基配列は生物種によって異なる場合があり、同様の機能を持つタンパク質でも種間で違いがあることも多い。塩基配列の変化は突然変異の原因であり、例えば体色の変化等を引き起こすことがある。生物はそのような変異を蓄積することで種が分岐したと考えられている(いわゆる「生物の進化」)(※ 4)。
化石は古代の生物の死骸であり、これを生き返らせることはできない。しかし、化石中にはその生物の遺伝情報(生物の設計図)を持つDNAが遺されている可能性がある。絶滅したポケモンの全DNA配列を化石を用いた解析から明らかにすることができれば、復元への足がかりが得られるはずである。マイケル・クライトンの小説、及びそれを原作としたスティーブン・スピルバーグの監督作品である『ジュラシック・パーク』では、琥珀に閉じ込められた、恐竜の血を吸った蚊から血液を採取することで恐竜のDNA配列解析が行われている。同作品内では解析できなかった配列をカエルのDNA配列で代用し、これをワニの未受精卵のDNAと置き換えることで恐竜が作り出されている (図3)。ポケモンの化石復元においても一部同様の操作が行われていると予想できる。少なくとも、ポケモンの化石からDNA情報を得る試みは行われ、成功したと考えられる。そしてその配列情報が絶滅したポケモンの復元に大きく貢献したと考えられる。
* 近年の研究ではDNAは521年の半減期(※ 5)を持つことが明らかとなってきたらしい(文献3)。この知見より、現在では数億年前の化石や琥珀中にはDNAは殆ど遺されていないと考えられているようだ。従来のものよりDNAの検出感度が高いツールが開発されれば、『ジュラシック・パーク』で行われたような解析も可能となるかもしれない。
※ 4. DNAに関して、より詳細(専門的)な説明を補図1に示した。
※ 5. 半減期:ある物質の存在量(100 %とする)が半分(50 %)になるまでにかかる時間のこと。例えば1 mgのDNAが存在したとすると、その半分が分解されて0.5 mgになるまでにかかる時間が521年、という意味になる。さらに521年経つと0.5 mgの半分が分解され、0.25 mgとなる(521年毎に半分になる、という意味なので、1042年で0になるということではない点に注意;補図2)。
A
B
C
図2. DNAの分子構造
A. DNAの構成単位(ヌクレオチド)の構造。ヌクレオチドはリン酸、デオキシリボース、塩基(A, T, G, Cのいずれかを1つ持つ)から構成される物質である。このヌクレオチドが連結することでDNAは巨大な分子となる。ATGCが並ぶ順番によって情報が記録されているため、ヌクレオチドの連結する順番は生命体にとって非常に重要である。Hは水素原子、Oは酸素原子、Pはリン原子を表す。
B. DNAを構成する塩基(A, T, G, C)の構造。Nは窒素原子を表す。
C. デオキシアデニル酸、デオキシチミジル酸、デオキシグアニル酸、デオキシシチジル酸(A, T, G, Cのいずれかを持つヌクレオチド)の構造。
A
B
補図1. 連結したヌクレオチドは二重らせん構造を形成し、染色体を構成する
A. 2本の連結したヌクレオチド間の結合を表した図。多量のヌクレオチドが結合(連結)したものをポリヌクレオチドという。ポリヌクレオチド同士は図のように、塩基を介して弱く結合する。この結合は水素原子(H)を介することから水素結合と呼ばれ、アデニン(A)とチミン(T)の間では2本、グアニン(G)とシトシン(C)の間では3本の水素結合が形成される。各塩基が水素結合を形成する相手は決まっており、AはT、GはCと水素結合を形成して塩基対をつくる。また、2本のポリヌクレオチドは反対向きに結合する。
B. 二本鎖ポリヌクレオチドは、二重らせん構造と呼ばれる右巻き(時計回り)のらせん構造を形成する(一部例外あり)。これがヒストンと呼ばれるタンパク質に巻きつき、共に凝縮されることで染色体となる。多くの生命体は複数本の染色体を持つが、その本数は生物毎に決まっている。ヒトの場合、男性は24種、女性は23種の計46本の染色体を持つ(22種は常染色体と呼ばれる染色体で、一種につき2本ずつ持つ。残り2種は性染色体と呼ばれる性別決定に関わる染色体であり、男性はX染色体とY染色体の2種類をそれぞれ1本ずつ、女性はX染色体を2本持つ)。
図3. 「ジュラシック・パーク」で登場した恐竜の復元技術の概要
「ジュラシック・パーク」では、琥珀中に閉じ込められた蚊から恐竜の血液を採取し、そのDNAを解析することで恐竜の全ゲノムを解読している(具体的な解析手法は、本図では省略している)。DNA配列は解析手法上の問題から解読不能な場合もある。そのため、「ジュラシック・パーク」においては恐竜とDNAの類似性が高い(と作中で考えられているものと思われる)カエルのDNA配列を元に復元が行われている。復元された全ゲノムはワニ(受精卵)のゲノムと置換され、作中ではそれが恐竜へと成長している。
補図2. DNAは521年毎に半量が分解される
DNAの半減期を表したグラフ。文献3によれば、DNAは521年で元の量の半分が分解され、残りのDNAのうちさらに半分が次の521年で分解される(521年の半減期を持つ)という。
ポケモンの化石復元技術の開発者
前項では、絶滅したポケモンの復元にはDNA配列決定が必要だったと予想した。配列決定のためにはDNAや遺伝子についての知識やその操作技術が必要である。これまで述べてきた点を総合すると、化石復元技術の開発にはフジ博士が関与した可能性が示唆される。前述の通り、フジ博士はミュウの子供の遺伝子を操作してミュウツーを創り出した研究者である。ミュウ(ミュウツー)の研究と化石復元技術の開発が関連していたかについては明らかでないが、(i) フジ博士がグレンタウンに住んでいたこと、(ii) 化石復元技術をグレンラボラトリーが有すること、(iii) 予想されるフジ博士の専門分野と化石復元に必要な技術が一致していること、の3点を考慮すると、この2つの研究テーマが同時に進められていた可能性が考えられる。前項では「ジュラシック・パーク」でカエルのDNAを恐竜のDNA配列を補うために使用した点を紹介したが、フジ博士はミュウのDNAを古代のポケモンのDNA配列を補うために使ったかもしれない。ミュウは自身が持つ遺伝子のDNA配列から、全てのポケモンの祖先であると考えられているポケモンである。その事実を発見したのがフジ博士である可能性も十分に考えられ、古代のポケモンの復元技術や人工ポケモン開発の根幹を担う理論を提唱したとも考えられる (図4)。
図4. ポケモンの化石復元技術の原理(予想)
ポケモンの化石復元技術においても、「ジュラシック・パーク」における恐竜復元と同様の操作が行われたと考えられる。カセキやコハクといった古代のポケモンのゲノム情報を持つものからDNAを採取して配列を解読し、解読不能な部分は現代のポケモン(近縁種と考えられる)のDNA配列を補填したのだろう。仮にこの操作にフジ博士が関与していたとするならば、「現代のポケモン」に該当するポケモンはミュウだったのかもしれない(初代のポケモン図鑑ではミュウは「絶滅したはずのポケモン」とされているため、「現代のポケモン」という表記は必ずしも正しくないかもしれない。映画「ミュウツーの逆襲」(1998年) ではミュウの睫毛の化石が登場したが、ゲーム本編におけるフジ博士はその点についても研究をしていたのだろうか)。解読された配列情報を元に、古代のポケモンの肉体が再現されたと考えられる。ただし、この点については大きな疑問が残る(【メタの壁】を参照)。
【メタの壁】
ここでは、科学的または論理的に議論することが難しいと思われる事柄について記述する。創作物においては、現実的にありえない(考えられない)設定が数多く登場する場合がある。そのため、本編中で明らかになっていない点に関して考察を行う場合は解釈不能な疑問が生じることが少なくない(ポケモンにおいては、「タマゴから生まれたポケモンは成体と同じサイズなのか」といった疑問や「カラカラのホネは本当に母親のものなのか」など)。本項ではこのような点について言及していく。
化石復元技術に関する残された疑問
化石復元技術の原理とその開発者については前述した通りだが、古代のポケモン復元に関してはまだ謎が残されている。古代のポケモンを復元する際、毎回カセキが必要な理由はなんだろうか。「ジュラシック・パーク」で描かれた方法を用いるならば、DNAの配列が決定されれば化石や琥珀を用いた解析は必要でなくなる。しかしポケモンの化石復元においては、毎度カセキを持ち込む必要がある。そして「ジュラシック・パーク」の恐竜たちとは異なり、復元されたポケモンはタマゴを介さずに生きた姿となる。何故だろうか。メタ的なことを言えば、これはゲーム上の都合である。野生ポケモンを入手する場合は「遭遇→戦闘→捕獲」というプロセスを経ることになるわけだが、化石復元においてはこのプロセスが適用されない。その代わりがカセキの持ち込みであり、「カセキの入手→施設への持ち込み→復元」というプロセスを経るようになっている。故に、カセキ(コハク)と復元されたポケモンの1:1交換が行われる。ただし次項では前述の点を敢えて考慮せず、ある疑問について仮説を提唱する。
化石から復元されたポケモンは全て岩タイプを有する
化石から復元可能なポケモンは、全て岩タイプを有している。この点は第7世代現在まで一切の例外が存在せず、復元された古代のポケモンの共通項となっている。これらのポケモンは、太古に彼らが繁栄していた頃から岩タイプを有していたのだろうか。あるいは、科学技術による復元の副産物として付加されたものなのだろうか。後者の場合は、復元が完全でないということになる。本考察で記述した原理に基づくならば、解析結果から決定したDNA配列が誤っている可能性が示唆される(当然、本考察で言及していない生命現象によるものであるとも考えられる)。ウルトラサンのポケモン図鑑には、チゴラスとその進化系であるぼうくんポケモン・ガチゴラスの頁に注目すべき記述が存在する。これら2種のポケモンは復元が完全でないとも考えられており、特に古代のガチゴラスには全身に羽毛が生えていたという仮説が存在する。また、プテラについてはメガプテラの姿が本来の姿だという主張もある。これらの知見は第7世代時点でのポケモンの化石復元技術が完全ではない可能性を示唆している。
* チゴラス及びガチゴラスのモデルと思われるティラノサウルスには、全身が羽毛で覆われていたという仮説が提唱されている。それが事実かを示す証拠は見つかっておらず、未だ議論となっているようだ。羽毛説を否定する報告もあるらしい(文献4)。チゴラスとガチゴラスの図鑑説明に前述のような記述がされたのは、このような研究の背景を考慮したためだろう。また、ウルトラサンのポケモン図鑑にはうずまきポケモン・オムスターがふんしゃポケモン・オクタンの遠い祖先であることも記述されているが、オムスターのモデルと思われるアンモナイトはタコの祖先であると考えられている。アーケンのモデルと思われる始祖鳥についても、近年では全ての鳥類の祖先ではないとする説も存在する。ウルトラサンのポケモン図鑑におけるアーケンの頁にも同様のことが記述されている。ウルトラサンのポケモン図鑑には、現実の古代生物研究における最新知見・学説を意識した記述が掲載されているようだ。
乾燥状態の卵に塩水を戻すことで孵化・成長するシーモンキー(アルテミアと呼ばれる属に分類されるプランクトンの改良種)や約2000年の時を経て発芽・開花した大賀ハスのように、長い期間休眠状態にあった古代のポケモンを目覚めさせることが叶うならば、化石復元の完全性に関する答えが出るかもしれない。
A
おおアゴは すさまじい はかいりょく。 ふくげんさせても とうじと おなじ すがたでは ないという せつもある。
B
かんぜんな ふくげんは ふかのうで じつは ぜんしんに うもうの ような けが あるのではという せつがある。
古代のポケモンの復元に化石が必要な理由
これまでの記述を踏まえて、古代のポケモンの復元に化石が必要な理由を考察する。ポケモンのカセキの説明を参照すると、それぞれのカセキは古代のポケモンの一部であることがわかる。また、ウルトラムーンのポケモン図鑑のタテトプスの頁には、タテトプスは顔面の化石以外が発見されないことが記述されている。これらの点と復元されたポケモンがタマゴを介さずに生きた姿となることを合わせると、カセキは復元されたポケモンの体の一部になっている可能性が考えられる。化石は長い年月を経て石のようになったものであるため、この要素が化石ポケモンが共通して持つ岩タイプの要因となっているのかもしれない。「化石から古代のポケモンを復元する」という考え方にも一致する。例えばタテトプスの場合、体は解析した遺伝子情報を用いて人工的に作られたものであり、顔は地中から掘り出された化石が使われているということになる。この仮説であれば、プテラ以外の化石ポケモンについては毎回の復元にカセキが必要な理由が説明できる。古代ポケモンの復元が完全ではなさそうなことも推測はできるだろう。
* 前述の通り、この仮説はメタ的な観点を排除して考えている。ヘドロや古代の泥人形からポケモンが生まれるポケモンの世界であればあり得ない話ではないかもしれないが、何億年も地中に埋まっていた化石をそのまま使用するのは合理的でないようにも思われる。さらに言えば、何故復元したポケモンから見つかるタマゴからも同じ姿・タイプのポケモンが生まれるのか、という疑問が生じる。しかし、ウルトラサンにおけるポケモン図鑑のさいこどりポケモン・アーケオスの頁には「うもうが こまかいので じゅくれんの しょくにん でなければ ふくげんに しっぱいするという こだいのポケモン。」という記述が存在する。アーケオスの進化前であるアーケンのカセキは「はねのカセキ」であるが、ポケモンの化石復元には実際の化石を用いた手作業の工程が存在するということなのだろうか。
【方法】
画像
本考察のゲーム画像は、全て筆者のROMを用いたプレイ画面を使用した。プレイ画面はiPhone 7のカメラを用いて撮影し、MacBook Airに取り込んだものを必要に応じて編集した。画像編集及び図の作成は、Keynote (バージョン6.5.2) を使用して行った。DNAの半減期のグラフ(補図2)はExcel(Microsoft Excel for Mac 2011, バージョン14.7.2)を用いて作成し、Keynote上で編集を行った。
使用ROMと本体
ファイアレッド、ピカチュウ(VC)及びハートゴールドを使用した。各ROMの起動には、ファイアレッドはニンテンドーDS Liteを、ピカチュウ(VC)及びハートゴールドはニンテンドー3DS LLを使用した。
ゲーム中の記述(ポケモン屋敷の日記、ポケモン図鑑の説明文、カセキの説明文)
ポケモン屋敷の日記は、VC版ピカチュウを用いて記述を確認した。ポケモン図鑑の記述は、【参考・引用文献】に示す1を参照した。
「世代」の区分
本考察では、バージョン(赤・緑など)を「世代」で区分した。赤・緑、青、ピカチュウを第1世代(初代)、金・銀、クリスタルを第2世代、ルビー・サファイア、ファイアレッド・リーフグリーン、エメラルドを第3世代、ダイヤモンド・パール、プラチナ、ハートゴールド・ソウルシルバーを第4世代、ブラック・ホワイト、ブラック2・ホワイト2を第5世代、X・Y、オメガルビー・アルファサファイアを第6世代、サン・ムーン、ウルトラサン・ウルトラムーンを第7世代とした。
【謝辞】
本考察に関して、情報提供や貴重なご意見を賜った方々に感謝の意を示します。
【参考・引用文献】
- ポケモンwiki:https://wiki.ポケモン.com/wiki/
- Wikipedia(ジュラシック・パーク及びアルテミア):https://ja.wikipedia.org/wiki/
- Kaplan Matt. "DNA has a 521-year half-life." Nat. News (2012).:
http://www.nature.com/news/dna-has-a-521-year-half-life-1.11555 - 朝日新聞DIGITAL:https://www.asahi.com/articles/ASK6V321HK6VULBJ002.html
- ヴォート基礎生化学(第3版):東京化学同人
番外編1:技 ”へんしん” から広がる妄想
@lkm_mm
【注意:はじめに】
本記事は、筆者の妄想を文章化したものです。筆者の見解は「ゲーム(システム)上の都合(=考えても仕方がない問い)」に抵触する可能性が通常より高いと考えられます。また、「ゲーム本編に散りばめられた謎を解き明かそう」という試みとは趣旨が少し異なります。
【概要】
へんしんポケモン・メタモンは技 ”へんしん” を使うことで特定のポケモンの姿や技、能力を模倣することができる。メタモンは ”へんしん” を覚える数少ないポケモンであるが、同様の技はしんしゅポケモン・ミュウも自力で習得することができる。本記事では、この共通点に着目することで両者に関係がある可能性について考える。
【背景】
技 “へんしん” は第1世代(赤・緑、青、ピカチュウ)にて登場した技である。メタモンは ”へんしん” を習得する代表的なポケモンであり、この技はメタモンを想起させる技とも言える。しかしながら、”へんしん” はメタモンのみが覚える固有技というわけではなく、幻のポケモンの1種であるミュウも習得することができる。これは第1世代から第7世代現在まで続いており、技 “ゆびをふる” か、第2世代で登場したえかきポケモン・ドーブルの固有技である “スケッチ” を使わない限りメタモンとミュウ以外のポケモンは使うことができない。
【知見に基づく可能性の提唱】
ポケモン図鑑を参考にした “へんしん” の特徴についての記述
ポケモン図鑑によれば、メタモンは変身する際には細胞レベルの変化を起こすという (文1)。これは ”へんしん” の使用時、及びメタモンの特性の1つである「かわりもの」の発動時に起こる現象であると予想される。”へんしん” が細胞レベルの変化を起こす技であるならば、ミュウが ”へんしん” を使用した場合にも同様の変化が起こることが示唆される。
赤・緑、ファイアレッド、Y
からだの さいぼうの つくりを じぶんで くみかえて ほかの せいめいたいに へんしんする。
青、リーフグリーン
さいぼうそしきを いっしゅんで コピーして あいて そっくりに へんしんする のうりょくがある。
あいてをみた しゅんかん からだが とけるように へんかを はじめる。ほぼ おなじかたちに へんしんする。
ルビー・サファイア・エメラルド、オメガルビー・アルファサファイア
からだの さいぼうを くみかえて へんしんする。おもいだしながら いぜん みた ものに かわると ちょっと ちがう かたちに なってしまうのだ。
ダイヤモンド・パール・プラチナ、ブラック・ホワイト、X
ぜんしんの さいぼうを くみかえて みたものの かたち そっくりに へんしんする のうりょくを もつ。
ブラック2・ホワイト2
ぜんしんの さいぼうを くみかえて みたもの そっくりに へんしんするが ちからが ぬけると もとにもどる。
サン
さいぼうを くみかえ みた あいて そっくりに すがたを へんかさせる。 さいげんどは こたいに よる。
文1. 各バージョンのポケモン図鑑におけるメタモンの説明(一部バージョン)
ポケモン図鑑におけるメタモンの頁。これらの記述より、”へんしん” を使うと細胞レベルで変化が起こることが予想される。
ミュウの知見から考える “へんしん”
ミュウは「全てのポケモンの遺伝子を持つ」と記述されるポケモンである (文2)。この知見と前項で記述した ”へんしん” の特徴を踏まえて考えると、ミュウとメタモンの間には遺伝的な関係があるとも考えられる。ミュウやメタモンが ”へんしん” を使用する場合、遺伝子発現パターンに変化が起こることではじめて能力が発揮されるのかもしれない(遺伝子については過去記事も参照)。
銀、ソウルシルバー、Y
いでんしには すべての ポケモンの じょうほうが ふくまれているので あらゆる わざが つかえるという。
ルビー・サファイア、エメラルド、オメガルビー・アルファサファイア
すべての ポケモンの いでんしを もつと いう。じゆうじざいに すがたを けすことが できるので ひとに ちかづいても まったく きづかれない。
文2. ポケモン図鑑に記載されているミュウの説明(一部バージョン)
ポケモン図鑑におけるミュウの頁。フジ博士が研究対象としていたポケモンであり、ポケモン屋敷にはそれに関する日記が一部残されている。遺伝的に全てのポケモンと共通点を持つとされることから、ポケモンの生物学的な進化を研究する上で重要なポケモンであると考えられる。
ミュウとメタモンに存在しうる共通点
カントー地方・グレンタウンには「ポケモンやしき(以降、「ポケモン屋敷」と記述)」という廃墟が登場する。この屋敷はかつてグレンタウンに住んでいた研究者であるフジ博士の元住居であり、屋敷内には博士の研究に関する日記が残されている。フジ博士はミュウについて研究しており、その結果いでんしポケモン・ミュウツーを創り出した (文3 A, B)。ミュウツーの誕生は、フジ博士によるミュウの子供への遺伝子操作の産物であると考えられている。
ピカチュウ版において、メタモンはポケモン屋敷に出現する。”へんしん” が遺伝子発現パターンに影響を及ぼす技であると仮定するならば、ポケモンの遺伝子を研究していたであろうフジ博士はメタモンも研究対象にしていた可能性が考えられる。ミュウを研究する上で、変身能力を持つメタモンの解析は必要なことだったのかもしれない。ポケモン屋敷にメタモンが住み着くに至った経緯は不明であるが、”へんしん” という共通点を持つ2種が同一の場所と関連を持つことには一考の余地がある。赤・緑、青ではポケモン屋敷にメタモンは出現せず、これはピカチュウ版で変更された点である。しかしながら、興味深いことに、赤・緑のリメイク版であるファイアレッド・リーフグリーン(第3世代)ではポケモン屋敷にてメタモンが出現する。また、ミュウツーが出現する「ハナダのどうくつ(以降、「ハナダの洞窟」と表記)」にもメタモンが出現する(赤・緑、青、ピカチュウ、ファイアレッド・リーフグリーン、ハートゴールド・ソウルシルバー)ほか、ハナダの洞窟と同様にミュウツーが出現する「ポケモンのむら(以降、「ポケモンの村」と表記;X・Y(第6世代)で登場するポケモンの居住区)」にもメタモンが出現する(厳密には、ミュウツーはポケモンの村にある「ななしのどうくつ」に潜伏している)。ミュウツーと関連する場所にメタモンが出現することは、ミュウとの関係を示唆する根拠足りうるのだろうか。
A
にっき 7がつ5か ここは みなみアメリカの ギアナ ジャングルの おくちで しんしゅの ポケモンを はっけん
にっき 7がつ10か しんはっけんの ポケモンを わたしは ミュウと なづけた
にっき 2がつ6か ミュウが こどもを うむ うまれた ばかりの ジュニアを ミュウツーと よぶことに……
にっき 9がつ1にち ポケモン ミュウツーは つよすぎる ダメだ…… わたしの てには おえない!
B
赤・緑、ファイアレッド
けんきゅうの ために いでんしを どんどん くみかえていった けっか きょうぼうな ポケモンに なった。
青、リーフグリーン、X
ひとりの かがくしゃが なんねんも おそろしい いでんし けんきゅうを つづけた けっか たんじょうした。
ミュウの いでんしと ほとんど おなじ。だが おおきさも せいかくも おそろしいほど ちがっている。
金、ハートゴールド
きょくげんまで せんとうのうりょくを たかめられたため めのまえの てきを たおすことしか かんがえなくなった。
クリスタル
たたかいの ためだけに うみだされ いまは どこかの どうくつふかくで ねむっていると いわれる。
ルビー・サファイア・エメラルド、オメガルビー・アルファサファイア
いでんしそうさに よって つくられた ポケモン。にんげんの かがくりょくで からだは つくれても やさしい こころを つくることは できなかった。
ダイヤモンド・パール・プラチナ、ブラック・ホワイト、ブラック2・ホワイト2、Y
ミュウの いでんしを くみかえて うみだされた。ポケモンで いちばん きょうぼうな こころを もつという。
文3. フジ博士は遺伝子操作によってミュウツーを創り出した
A. ポケモン屋敷に残されたフジ博士の日記。
B. ポケモン図鑑におけるミュウツーの頁(一部バージョン)。
【最後に】
今回の記述では、ドーブル、及び ”ゆびをふる” を使って ”へんしん” したポケモンについては考慮していない。また、この技はポケモンにおいてしばしば見受けられる不思議な能力を多く含んだ技であるため、現実世界の科学的な知見に基づいた記述がおそらく不可能と思われる。
ファイアレッド・リーフグリーンにおけるメタモンの生息地に関しては、ピカチュウ版の要素が一部残された可能性が高い。しかし、ピカチュウ版はアニメの影響を強く受けた作品であり、発売は1998年9月12日である。この時期はアニメ映画(劇場版)の第1作である「ミュウツーの逆襲」が放映された時期と重なる (1998年7月18日公開)。その影響を受けてか、ピカチュウ版におけるポケモン図鑑のミュウの頁には「けんびきょうで のぞいてみたら ひじょうに みじかくて ほそい こまやかな たいもうが はえていた。」と記述されている。この記述はミュウに体毛が存在することを示す記述であり、「ミュウツーの逆襲」中で言及された「ミュウの睫毛」を支持する知見であるとも解釈できる。ピカチュウ版は、「ミュウツーの逆襲」の影響も受けているのだろうか。真実は不明であるが、妄想をするには十分な情報である。
【方法】
【参考・引用文献】に示す1を参照した。ポケモン屋敷の日記は、VC版ピカチュウを用いて記述を確認した。
「世代」の区分
本考察では、バージョン(赤・緑など)を「世代」で区分した。赤・緑、青、ピカチュウを第1世代(初代)、金・銀、クリスタルを第2世代、ルビー・サファイア、ファイアレッド・リーフグリーン、エメラルドを第3世代、ダイヤモンド・パール、プラチナ、ハートゴールド・ソウルシルバーを第4世代、ブラック・ホワイト、ブラック2・ホワイト2を第5世代、X・Y、オメガルビー・アルファサファイアを第6世代、サン・ムーン、ウルトラサン・ウルトラムーンを第7世代とした。
【参考・引用文献】
#3. “マルウェア” ポリゴンの脅威
@lkm_mm
【概要】
バーチャルポケモン(旧・シージーポケモン)・ポリゴンは、人間の科学力によって創り出された人工のポケモンである。ポケモングッズのメーカーとして有名な企業であるシルフカンパニーによって開発されたポケモンで、第1世代(初代)においてはタマムシシティのゲームコーナー(ロケットゲームコーナー)の景品として入手できる。しかし、第1世代のゲームコーナーは悪の組織・ロケット団が運営していたことから、ポリゴンがシルフカンパニーからロケット団へと流れていた可能性が示唆されていた。本考察ではロケット団とシルフカンパニーの関係性について記述し、ロケット団がポリゴンの技術を完全掌握していた場合の脅威について考察する。
【背景】
ポリゴンは、シルフカンパニーで開発された人工のポケモンである。サン・ムーン(第7世代)の時代から20年前に開発されたポケモンで、電脳空間での活動が可能とされる (文1 B, G, H, I, K)。カントー地方・タマムシシティのゲームコーナーではコインと交換できる景品の1つである(必要な枚数はバージョンによって異なる)が、いくつかのバージョンでは野生で出現する場合もある。
ロケット団は赤・緑、青、ピカチュウ版(第1世代)、金・銀、クリスタル(第2世代)、ハートゴールド・ソウルシルバー(第4世代)で登場する悪の組織である。第1世代においては数多くの悪事を働いており、盗掘や窃盗、ポケモンの乱獲や殺害まで行っている。第1世代ではタマムシシティのゲームコーナーの地下にアジトを持ち、ゲームコーナーのポスターの裏に存在するスイッチを押すことで地下への階段が現れる。本編では、アジトの地下4階で組織のボスであるサカキとの戦闘になる。戦闘に勝利するとシルフスコープという道具が手に入るが、この道具は第1世代時点では発売日未定の新製品(シルフカンパニー製)である。ポリゴンとシルフスコープの件はロケット団とシルフカンパニー(カントー地方・ヤマブキシティに本社を持つポケモングッズのメーカー)の関係を示唆するものであり、シルフの製品がロケット団側に流れていることが予想されるものとなっている。本編ではその後、ロケット団はシルフ本社を占拠する。その狙いはポケモンを必ず捕獲できるモンスターボールであるマスターボールと考えられているが、真相は明らかではない。社長室ではサカキとシルフカンパニーの社長が「仕事の話」をしていたようだが、その内容も不明である。
本考察では、ロケット団がシルフカンパニーを完全に乗っ取り、ポリゴンの技術を完全掌握した場合に考えられる脅威について考察する。
A
赤・緑、ファイアレッド
さいこうの かがくりょくを つかい ついに じんこうの ポケモンを つくることに せいこうした。
B
青、リーフグリーン
からだが プログラムで できている。でんしくうかんを じゆうじざいに いどうできる のうりょくをもつ。
C
ゆいいつ うちゅうまで とんでいける ポケモンと きたい されているが いまだに せいこうれいは ない。
D
金、ハートゴールド
こきゅうを していないので どんなところでも かつやく できると きたいされる じんこうの ポケモン。
E
銀、ソウルシルバー
けんきゅうのすえ うみだされた じんこうの ポケモン。きほんてきな どうさしか プログラムされていない。
F
クリスタル、X・Y
ポケモンけんきゅう のため うみだされた じんこうの ポケモン。プログラムにない うごきはできない。
G
ルビー・サファイア、エメラルド、オメガルビー・アルファサファイア
ぜんしんを プログラム データに もどして でんし くうかんに はいる ことが できる。コピーガードされて いるので コピー できない。
H
せかいで はじめて じんこうてきに つくりだされた ポケモン。でんしくうかんを いどうできる。
I
プラチナ、ブラック・ホワイト、ブラック2・ホワイト2
さいこうの かがくりょくで うみだされた じんこうの ポケモン。でんしくうかんを いどうできる。
J
サン
およそ 20ねんまえに とうじの かがくりょくを けっしゅうし うみだされた じんこうの ポケモン。
K
ムーン
からだを デジタルデータか することが できるので でんのう くうかんに はいりこむことが できるのだ。
L
ウルトラサン
やく20ねんまえの かがくりょくで うみだされた ポケモンなので いまや じだいおくれな ぶぶんも おおい。
M
ウルトラムーン
20ねんまえ うちゅうを ゆめみた かがくしゃたちに よって つくられた。 いまだ そのゆめは かなっていない。
文1. 各バージョンにおけるポリゴンの図鑑説明
A-M. ポケモン図鑑におけるポリゴンの説明文。ポリゴンは、近年のプログラミング技術を用いて創り出されたと思われる。自身を自在に実体化、及び電子データ化することが可能なようで、電脳空間での活動を行うことができる。第7世代では、サン・ムーン及びウルトラサン・ウルトラムーンの時系列より20年前に開発されたことが記載されており、使われている技術は古いものとなってきていることが明らかとなった。また、ポリゴンは宇宙空間での活動を目的に開発されたことも示唆されている(ピカチュウ版及びサン・ムーン、ウルトラサン・ウルトラムーン)。また、第1世代から3年後の世界である第2世代ではポリゴンの進化系であるバーチャルポケモン・ポリゴン2が登場したが、ポケモン図鑑にはポリゴン2は惑星開発を目的としてアップデート(バージョンアップ)された旨が記載されている(ポリゴン2の図鑑説明)。
【知見と考察】
ポリゴンはポケモンあずかりシステムに対する脅威となった可能性がある
ポケモンあずかりシステムはポケモンマニアとして知られるマサキという男によって開発されたシステムである。所有しているポケモンをパソコン通信で預けることが可能で、多くのポケモントレーナーが利用するシステムとなっている。マサキはカントー地方及びジョウト地方のあずかりシステムの管理人でもある。
ロケット団がシルフカンパニーを制圧した場合、ポリゴンを使ったサイバーテロが起こる可能性が懸念される。ポケモン図鑑によれば、ポリゴンは電子空間内を自在に動き回ることができる (文1 B, G, H, I, K)。また、電子空間以外にも人間の活動が難しい空間(大気が存在しない宇宙空間等)での活躍も見込まれている (文1 C, D, M)。宇宙空間での活躍は難しいようだが (文1 C, M)、電子空間においてはどうだろうか。ポリゴンはプログラムされた動作しかできない (文1 D-F) と記述されているが、逆に言えばプログラムされた動作ならば何でもできるということである。仮に「あずかりシステムを攻撃する」という命令が組み込まれた場合、ポリゴンはポケモンあずかりシステムを制圧できる可能性がある。そのようなことが起こった場合、あずかりシステムに預けられているポケモンはロケット団の手に落ち、元のトレーナーはポケモンを引き出すことができない(ロケット団に奪われる)という事態に陥る危険性がある。また、モンスターボールの電子制御機構が失われる可能性も考えられる。その場合、ポケモントレーナーは自身の手持ちをボールから出す、あるいはボールに戻すことが行えなくなり、戦うための手段を失うことになる。
余談だが、ブラック・ホワイト(イッシュ地方)における悪の組織であるプラズマ団(※)はポケモンあずかりシステムに不正アクセスを試み、これに成功している(その目的である「人間に所有されているポケモンの解放」は未遂に終わった)。このようなハッカーの手による不正アクセスは出処を押さえられるかもしれないが、電子化と実体化を自在に行えるポリゴンの場合、被害はハッカーの比ではないと予想される。ポリゴンにはコピーガードがかけられている (文1 G) というが、電子空間内での複製によって自己増殖できるようになったとすれば、ポリゴンのマルウェア(コンピューターウイルス)としての脅威はさらに増すだろう。AIを搭載したポリゴン2 (文2 D, I) が使われたとすれば、何が起こるかは使用者(ロケット団)にすら予想できないかもしれない。
※ プラズマ団における真の悪は、プラズマ団七賢人の1人であるゲーチスの抱く野望(全てのポケモンの独占)に集約される。プラズマ団が掲げる「人間からのポケモンの解放」はゲーチスにとっては独占のための手段であるが、多くのプラズマ団員にとっては「ポケモンを人間の支配から解き放つ」という正義である。ブラック・ホワイト本編から2年後のブラック2・ホワイト2ではプラズマ団がN派とアクロマ派に分裂したことを踏まえると、プラズマ団を「悪の組織」と断言することには語弊があるとも言える。
A
わくせい かいはつが できるよう ポリゴンを バージョンアップしたが まだ そらも とべない。
B
さらに けんきゅうが すすめられ のうりょくが たかまった。ときどき プログラムにない しぐさを みせる。
C
クリスタル
さいしんかがくで しんかした じんこうの ポケモン。ときどき プログラムにない はんのうをみせる。
D
にんげんが かがくの ちからで つくりだした。じんこう ちのうを もたせたので あたらしい しぐさや かんじょうを ひとりで おぼえていく。
E
わくせいかいはつようの プログラムが インストールされている。 しんくうの うちゅうでも かつどうできるのだ。
F
プラチナ、ブラック・ホワイト、ブラック2・ホワイト2
わくせい かいはつが できるように バージョンアップ されたのだが まだまだ むずかしかった ようだ。
G
サン
わくせい かいはつを しやに いれ とうじの さいしん ぎじゅつで ポリゴンを アップデートしたのだ。
H
ムーン
わくせい かいはつを もくひょうに ポリゴンを バージョンアップしたが まだまだ ゆめには とどかない。
I
ウルトラサン
AIを とうさい。 じりきで さまざまなことを まなんでいくが よけいなことまで おぼえだす。
J
ウルトラムーン
うちゅうくうかん でも しなないが むじゅうりょく では うまく みうごきを とることが できない。
文2. 各バージョンにおけるポリゴン2の図鑑説明
A-J. ポケモン図鑑におけるポリゴン2の説明文。ポリゴン開発時に目的とされていた宇宙空間での活動のためのアップデートが施されていることが伺える。AIが搭載されたことで自己学習能力を得たようだが、余計なことを覚えるなどまだまだ問題が多いようである。さらに、空を飛べないことや重力制御を行えないことが惑星開発に向けた課題として残されているらしい。
【余談】
ここでは、ロケット団がシルフカンパニーを乗っ取ることで起こり得ること、及びポリゴン2の進化系であるバーチャルポケモン・ポリゴンZについて記述する。
物資供給の途絶と「独占」が起こる可能性
前述のように、シルフカンパニーはポケモングッズのメーカーである。ロケット団がその本社を乗っ取った場合、ポケモントレーナーにとって重要な道具が供給されなくなる可能性が高い。シルフカンパニー以外のポケモングッズのメーカーにどのような企業があるかは定かでないが、市場操作や「独占」(文字通り道具を独り占めするということ、および市場を支配することの2通りの意味)が懸念される。そして、ロケット団への製品及び技術の流出は加速していったと考えられる。第1世代本編ではシルフスコープ(製品)がロケット団の手に渡っていた。また、第2世代のロケット団アジト(ジョウト地方・チョウジタウン)にはワープパネルが設置されていた。ワープパネルはシルフカンパニー本社で使われている技術であり、チョウジタウンのアジトのワープパネルは流出したシルフの技術が使われたものと予測される。例えば、シルフカンパニーが製作技術を持つと思われるマスターボールがロケット団の手に渡ってしまえば、ポケモンの乱獲はさらに加速していっただろう。
「あやしいパッチ」の開発者
あやしいパッチは、ポリゴン2をポリゴンZに進化させるために必要なアイテムである。道具の説明によれば、あやしいパッチには情報(製作者不明)が組み込まれているという (文3)。その情報はポリゴン(ポリゴン2)を異次元空間で活動させられるようにするためのもののようだが (文4 B, C, E)、進化形のポリゴンZはおかしな挙動を示すようになってしまったらしい (文4 A, D, E, F, G)。さらにはプログラムにミスがあることや技術者の腕が未熟であった旨まで記述されている (文4 C, D, F, G)。これらの記述やあやしいパッチの説明文 (文3) を踏まえると、ポリゴンZはシルフカンパニーによって開発されたポケモンではなく、別の技術者が生み出した存在である可能性が示唆される。シルフカンパニーが実験失敗とまで言われるポケモン (文4 G) を世に出すとは考えづらい。あやしいパッチを作製し、ポリゴンZを生み出したのは誰なのだろうか。この道具は第4世代で初登場した道具であり、ダイヤモンド・パールでは225番道路で入手できる。注目すべきはプラチナでの入手場所であり、225番道路からギンガ団アジトに変更されている。さらに、プラチナではトバリシティのギンガ団アジトの近くにある民家でポリゴンをもらうことができる。この際、ギンガ団アジト周辺にいたところを保護したという話を聞くことができるが、これは保護されたポリゴンがギンガ団アジトから逃げ出した可能性を示唆するものである。ポリゴンとギンガ団は関係があるのだろうか。ここで、ポリゴンZの図鑑説明 (文4) に注目する。ポリゴンZは異次元空間での活動を目的として創られたこと (文4 B, C, E) は前述の通りだが、ギンガ団(ボスのアカギ)が求めたじかんポケモン・ディアルガ、くうかんポケモン・パルキアは異次元空間から呼び出されたポケモンである。また、プラチナではプルートという科学者の老人がギンガ団団員として登場するが、彼は「自称」天才科学者でありギンガ団内での人望も薄いように思われる。これらの点を踏まえて考えると、ポリゴンZはギンガ団のプルートが創り出した存在である可能性が示唆される。彼はディアルガ及びパルキアの世界へ干渉しようとして失敗したのかもしれない。または、はんこつポケモン・ギラティナが潜む「やぶれたせかい」やアルセウスが眠る「はじまりのま」への干渉も視野に入れていた可能性も考えられる。
文3. あやしいパッチの道具説明
なかに あやしい じょうほうが つまった とうめいな きかい。せいさくしゃは ふめい。
A
より すぐれた ポケモンに するため プログラムを ついかしたが なぜか おかしな こうどうを はじめた。
B
プラチナ、ブラック・ホワイト、ブラック2・ホワイト2
いじげんでも かつやく できるよう プログラムを しゅうせい したが ねらいどおりには いかなかった。
C
いじげん くうかんを じゆうに いどうできるように プログラムを しゅうせいしたが ミスした らしい。
D
サン
さらに すぐれた ポケモンを めざし ついかした プログラムに ふぐあいが あったらしく うごきが おかしい。
E
ムーン
いじげんくうかんでの かつどうを めざし プログラムを こうしんしたが おかしな きょどうが めだつ。
F
ウルトラサン
ふあんていな きょどうが めだつ。 プログラムを アップデートした ぎじゅつしゃの うでの せいらしい。
G
ウルトラムーン
ついかした プログラムが まずかった。 おかしな きょどうが めだつので じっけんしっぱい なのかも しれない。
文4. 各バージョンにおけるポリゴンZの図鑑説明
A-G. ポケモン図鑑におけるポリゴンZの説明文。進化したポケモンの挙動やあやしいパッチの説明を踏まえて考えると、シルフカンパニーによるアップデートではない可能性が考えられる。
【方法】
ゲーム中の記述(ポケモン図鑑の説明文)
【参考・引用文献】に示す1を参照した。
「世代」の区分
本考察では、バージョン(赤・緑など)を「世代」で区分した。赤・緑、青、ピカチュウを第1世代(初代)、金・銀、クリスタルを第2世代、ルビー・サファイア、ファイアレッド・リーフグリーン、エメラルドを第3世代、ダイヤモンド・パール、プラチナ、ハートゴールド・ソウルシルバーを第4世代、ブラック・ホワイト、ブラック2・ホワイト2を第5世代、X・Y、オメガルビー・アルファサファイアを第6世代、サン・ムーン、ウルトラサン・ウルトラムーンを第7世代とした。
【参考・引用文献】
#2. ポケモンと遺伝子に関する考察
@lkm_mm
【概要】
しんかポケモン・イーブイやいでんしポケモン・ミュウツーなど、ポケモンの中には遺伝子と深い関係を持つと考えられているポケモンがいる。これらの知見は主にポケモン図鑑の記述から明らかとなってきた知見だが、それらの記述が示す「ポケモンの遺伝子」や「不安定な遺伝子」の真意については曖昧な点が多い。本考察では生命科学的な視点からポケモンと遺伝子の関係についてを検証し、遺伝子が持つと思われる機能について記述する。
【背景】
遺伝子とはDNA (deoxyribonucleic acid) 中に含まれる「タンパク質の情報を持つ領域」のことで、ヒトの場合はおよそ20,000種類の遺伝子がゲノム(生命体1個体が持つDNAの全てを指す言葉;ヒトの場合は22種の常染色体と性染色体(X染色体及びY染色体)を構成するDNAをまとめた呼び名)中に存在すると考えられている。これらの遺伝子が持つ情報は全身の細胞で必要に応じて取り出され、その結果合成されたタンパク質が様々な機能を発揮することで生命活動が行われる(遺伝子が「発現」する)。DNAはアデニン (A)、チミン (T)、グアニン (G)、シトシン (C)(まとめて「塩基」と呼ぶ)のいずれか1つとデオキシリボース、及びリン酸と呼ばれる物質が結合した「ヌクレオチド」から成る (図1)。ヌクレオチド同士が結合していくことでDNAは巨大な分子となるが、ATGCの4種類の並び順(塩基配列)がタンパク質合成をはじめとした生命活動に重要な役割を果たす。そのため、DNA中のATGCの順番変動や抜け落ち等があると生命活動に支障を来す場合がある。また、全DNAの配列中にはタンパク質の情報を持たない領域も存在する。そのような領域は役割が分からないことから「ジャンクDNA」と呼ばれ、意味がないものとされてきたが、近年の研究から生物の進化(注:ポケモンの「進化」ではなく生物種の進化のこと)や遺伝子発現に重要な役割を担うことが示唆されてきている。
多細胞生物には表皮細胞や神経細胞、免疫細胞など様々な種類の細胞が存在し、それぞれが異なる役割を担うことで個体を支えている。元々は1つだった細胞(受精卵)から種々の細胞は生み出されるが、その違いは細胞種毎に異なる遺伝子が発現するために生じる。基本的に同一個体中の細胞はゲノムDNAの全てを持つが、使わない遺伝子は発現しないように、使う遺伝子は発現するように調整がされている。
特定のポケモンは、遺伝子がポケモン自身に大きな影響を及ぼすと考えられている。初代(第1世代;赤・緑、青、ピカチュウ)で登場したポケモンにおいてはイーブイ、ミュウツー、しんしゅポケモン・ミュウがこれに該当する。第7世代(サン・ムーン、ウルトラサン・ウルトラムーン)現在に至るまで、これらのポケモンのように遺伝子について言及されているポケモンは新たに追加されてきており、特に第3世代で登場したDNAポケモン・デオキシスは有名である。他にも、第5世代で登場したこせいだいポケモン・ゲノセクトは名前の由来の1つが「ゲノム」と考えられていることや、同じく第5世代で登場したきょうかいポケモン・キュレムをフォルムチェンジ(はくようポケモン・レシラムまたはこくいんポケモン・ゼクロムと合体)させるために必要なアイテムの名称が「いでんしのくさび」であることもポケモンと遺伝子の関係を示唆するものである。本考察では、ポケモンの説明に度々登場する「遺伝子」という言葉の真意について考察していく。
図1. ヌクレオチドの構造
DNAの構成単位であるヌクレオチドの模式図。リン酸、デオキシリボース、塩基(base)から構成される。Oは酸素原子、Hは水素原子、Pはリン原子を表す。DNAを構成するヌクレオチドの塩基はA, T, G, Cであり、4種のうちいずれか1種を持つ。ヌクレオチド同士はリン酸とOHを介して結合していく。その際にA, T, G, Cのうちどの塩基を持つヌクレオチドがどの順番で結合するかが生命活動を行う上で重要となる。
【知見と考察】
ミュウが持つという「全てのポケモンの遺伝子」の意味
まず、ミュウについて考える。銀、ソウルシルバー、Y、ルビー・サファイア、エメラルド、オメガルビー・アルファサファイアのポケモン図鑑ではミュウの遺伝子には全てのポケモンの情報が含まれているという旨の記述を見ることができる (文1 A, B)。まず銀、ソウルシルバー、Yの図鑑説明にある「いでんしには すべての ポケモンの じょうほうが ふくまれている」(文1 A) について考える。「すべての ポケモンの じょうほう」とはどういう意味だろうか。この記述は、必ずしも「ミュウは全てのポケモンのゲノム情報を持つ」という意味にはならない。おそらく、この記述の真意は「ミュウは『各ポケモンが持つ、各ポケモンに特異的な遺伝子』を全て持つ」ということだろう。そのような遺伝子は全ゲノム情報中のほんの一部に過ぎないと考えられ、近縁種のポケモン間では共通した遺伝子を持つ(「保存」された遺伝子を持つ)可能性も考えられる。このように考えると、前述したような解釈をすることができる。次にルビー・サファイア、エメラルド、オメガルビー・アルファサファイアの図鑑説明にある「すべての ポケモンの いでんしを もつ」(文1 B) について考える。この文が「『すべての ポケモン』の いでんしを もつ」なのか「すべての 『ポケモンの いでんし』を もつ」なのかは議論の余地がある。前者であれば「どのポケモンも、(遺伝子の種類は問わず)少なくとも1つはミュウと同じ遺伝子を持つ」と解釈でき、後者であれば「生物学的に『ポケモン』と定義するための目印(マーカー)となる複数種類の遺伝子(全て持たなくても『ポケモン』の定義を満たす)を、ミュウは全て持っている」と解釈できる。
A
いでんしには すべての ポケモンの じょうほうが ふくまれているので あらゆる わざが つかえるという。
B
すべての ポケモンの いでんしを もつと いう。じゆうじざいに すがたを けすことが できるので ひとに ちかづいても まったく きづかれない。
文1. ポケモン図鑑に記載されているミュウの説明
A. 銀、ソウルシルバー、Yにおけるミュウの図鑑説明。
B. ルビー・サファイア、エメラルド、オメガルビー・アルファサファイアにおけるミュウの図鑑説明。
イーブイの「不規則 / 不安定 / アンバランスな遺伝子」について
イーブイは第7世代現在、8通りの進化の可能性を持つポケモンである (文2 A)。ポケモン図鑑の記述によれば、イーブイの遺伝子は周りの環境や石(主に進化の石のことを示していると思われる)から出る放射線の影響によって変異を起こすという。ポケモン図鑑の記述の多くで言及されている、外部の要因がイーブイの遺伝子に与える影響というのは「イーブイの遺伝子『発現』に影響を及ぼす」という解釈が最も合理的だと考えられる。遺伝子自身の突然変異とは、遺伝子の塩基配列が壊れることを意味する。これは放射線被ばく以外にもウイルスの感染や化学物質への曝露等で引き起こされることがあるが、そのような場合は遺伝子が機能を失う(合成されるタンパク質が正しく機能しなくなる、またはタンパク質が合成されなくなる)ことが度々起こる。イーブイの遺伝子配列が変異してしまった場合、イーブイの体には異常が生じる可能性がある。ピカチュウ版のポケモン図鑑には「せいぞんすうが すくない」と記述されているが、その原因の1つは遺伝子配列の変異かもしれない。ルビー・サファイア・エメラルド、オメガルビー・アルファサファイアのポケモン図鑑には「とつぜんへんい する ふあんていな いでんし」とあることからも、イーブイの遺伝子自身が変異しやすいことは確実だろう。しかし、石の放射線や月の光によって特定のポケモンに進化する (文2 A, B) ということは、ある種の刺激は遺伝子配列への変異誘導というよりむしろ遺伝子発現に影響する考える方が自然である。これらの見解をまとめると、イーブイの遺伝子は「配列に変異が起こりやすく、かつ発現自体も変化しやすい」ものだと言える。
A
赤・緑、ファイアレッド
3しゅるいの ポケモンに しんかする かのうせいを もつ めずらしい ポケモンだ。
青、リーフグリーン
ふきそくな いでんしを もつ。いしからでる ほうしゃせんによって からだが とつぜんへんいを おこす。
アンバランスな いでんしによって しんかの かのうせいに あふれる。 ただ せいぞんすうが すくない。
金、ハートゴールド
まわりの かんきょうに あわせて からだの つくりを かえていく のうりょくの もちぬし。
銀、ソウルシルバー
ふきそくな かたちの いでんしは まわりの えいきょうを うけやすい。かんきょうが かわると しんかする。
クリスタル
かんきょうの へんかに すぐさま あわせられるよう いくつもの しんかの かのうせいを ひめている。
ルビー・サファイア・エメラルド、オメガルビー・アルファサファイア
くらしている かんきょうで とつぜんへんい する ふあんていな いでんしを もつ ポケモン。いしの ほうしゃせんが しんかを ひきおこす。
しんかのとき すがたと のうりょくが かわることで きびしい かんきょうに たいおうする めずらしい ポケモン。
プラチナ、ブラック・ホワイト
いでんしが ふきそくなため さまざまな りゆうに よって すぐに すがたかたちが かわってしまう。
ブラック2・ホワイト2、Y
ふあんていな いでんしの おかげで さまざまな しんかの かのうせいを ひめている とくしゅな ポケモン。
サン
アンバランス かつ ふあんていな いでんしを もっており さまざまな しんかの かのうせいを ひめている。
ムーン
いま げんざいの ちょうさでは なんと 8しゅるいもの ポケモンへ しんかする かのうせいを もつ。
ウルトラサン
イーブイだけが とても ふあんていな いでんしを もっている りゆうは いまだ かいめい されて いない。
ウルトラムーン
まわりの えいきょうを うけやすい いでんしを もつ。 おやに なった トレーナーの かおにも にてくるよ。
B
ルビー・サファイア・エメラルド、オメガルビー・アルファサファイア
つきの はどうを うけて しんかした ポケモン。くらやみに じっと ひそみ あいてを うかがう。おそいかかる とき からだの わっかが ひかる。
つきの ひかりが イーブイの いでんしを へんかさせた。 やみに ひそみ えものを まつ。
文2. イーブイは環境の影響を受けやすい遺伝子を持つポケモンである
B. ルビー・サファイア、エメラルド・オメガルビー、アルファサファイア及びダイヤモンド・パール、Xのポケモン図鑑におけるブラッキーの説明。
デオキシスの元となった宇宙ウイルスのDNAはレーザーの影響で配列が変化した
最後に、デオキシスについて考える。ダイヤモンド・パール・プラチナ、ブラック・ホワイト、ブラック2・ホワイト2、Xのポケモン図鑑には「うちゅうウイルスの DNAが へんいして」という記述がある(ルビー、オメガルビーの図鑑説明でも同じ内容が言及されている)(文3)。このことから、デオキシスは「宇宙ウイルスのDNA配列が変わった」ことが原因で誕生したポケモンであることが分かる。
ルビー、オメガルビー
レーザーを あびた うちゅうウィルスの DNAが とつぜんへんいを おこして うまれた ポケモン。 むねの すいしょうたいが のうみそ らしい。
うちゅうウィルスから たんじょうした ポケモン。 ちのうが たかく ちょうのうりょくを あやつる。 むねの すいしょうたいから レーザーを だす。
エメラルド
うちゅうウィルスが レーザーを あびたとき とつぜんへんいを おこして ポケモンに なった。 すばやい うごきに すぐれた からだの かたち。
こうげきてきな かたちに へんかした デオキシス。 べつの すがたを みせて てきを まどわせる ちからを もつ。
すがたが かわるとき オーロラが あらわれる。 さいぼうを へんかさせて こうげきを きゅうしゅうしてしまう。
ダイヤモンド・パール・プラチナ、ブラック・ホワイト、ブラック2・ホワイト2、X
いんせきに ふちゃくしていた うちゅうウイルスの DNAが へんいして うまれた ポケモン。
うちゅうウィルスが とつぜんへんいを おこして ポケモンに なった。 オーロラの ちかくに あらわれる。
ポケモン図鑑のデオキシスの説明。隕石に付着していた宇宙ウイルスのDNAがレーザーの影響で変異し、それが原因でウイルスがポケモンになったという。
【まとめ】
最後に、今回着目したミュウ、イーブイの遺伝子が持つ機能とはどのようなものであるかを簡単に推測する。デオキシスについては、デオキシスに関する疑問について記述する。
前述のように、ミュウはどのポケモンとも、共通した遺伝子を1つ以上持つことが予想される。この知見より、ミュウはあらゆる技を使うことができると考えられている (文1 A)。遺伝子を持つということと使える技についてを関連付けて考えられているということは、ミュウが持つ全てのポケモンの遺伝子はポケモンに特異的な遺伝子であると予想される。また、その機能はポケモンの技に関与するものであると考えられる。ポケモンには特定の技を使うために必要な遺伝子が存在し、それがポケモンが習得できる技を規定しているのかもしれない。
イーブイの遺伝子は、外部の刺激によって発現や配列自身も変化することが示唆された。ここでは、発現が変動すると考えられる遺伝子について考える。前述したように、イーブイは石から放たれる放射線の影響を受けることによって進化する (文2 A)。これが遺伝子の発現変動によるものであるという仮説を本考察で提唱した。この仮説を踏まえて考えると、発現変動する遺伝子はポケモンの進化に関係する遺伝子であると予想される。石の影響を受けて進化するポケモンはイーブイ以外にも存在する(例:「かみなりのいし」で進化するピカチュウ、「たいようのいし」で進化するエリキテル)。これらの点から、石で進化するポケモンは進化の石の放射線によって発現が増強される、進化に関係する遺伝子を持つことが示唆される。おそらく、イーブイは「ほのおのいし」、「みずのいし」、「かみなりのいし」の放射線によって発現する遺伝子を持つのだろう。進化の石以外の方法で進化する場合には何が遺伝子に影響を及ぼすかは不明瞭な部分も多いが、少なくともしんりょくポケモン・リーフィア(コケが生えた岩の周りでレベルアップすることで進化)、しんせつポケモン・グレイシア(凍った岩の周りでレベルアップすることで進化)へと姿を変える場合はそれぞれの岩から何らかの影響を受けていると予想される。また、げっこうポケモン・ブラッキーへの進化には月の光が関与している (文2 B) ことから、月の光もイーブイを進化させる遺伝子の発現に部分的な影響を及ぼすと考えられる(ブラッキーへの進化には、飼育下であればトレーナーに懐いていることが必要なため、月の光は要因の「1つ」である)。
最後にデオキシスであるが、こちらについては予想が困難である。それ以前の根本的な疑問として、レーザーを浴びた元の宇宙ウイルスがポケモンの定義をゲノム情報的に満たしているかどうかがある。仮に元の宇宙ウイルスのゲノム中に「ポケモンであること」を定義するのに必要十分な遺伝子を持たないのであれば、デオキシスは天文学的な確率の偶然によって生まれたことになる(どのような変異が起こるか分からない中で機能を持った遺伝子が出来る可能性は極めて低いと考えられる)。反対に、元の宇宙ウイルスのゲノム中に「ポケモンであること」を定義するのに必要十分な遺伝子を持つのであれば、それは宇宙にもポケモンが存在することを示す重要な証拠となる。
地球上で「ウイルス」と定義される生命体は主に遺伝情報とタンパク質の空から構成されており、細胞(二重の脂質から成る膜によって外界と隔てられた構造)とは異なるものである。「生物」の定義満たす条件の中には「細胞を構成単位とすること」があり、ウイルスは生物とは定義されていない。デオキシスは生物足り得るのだろうか。仮にデオキシスが細胞を持つのだとすれば、それは大きな謎である。レーザーを浴びたウイルスが何らかの細胞に感染して(細胞内にウイルスのDNAを送り込んで)からポケモンになったのだろうか。この点に関しては記述が存在しないため、第7世代現在ではこれ以上言及することができない。
【方法】
画像
図の作成は、Keynote (バージョン6.5.2) を使用して行った。
ゲーム中の記述(ポケモン図鑑の説明文)
【参考・引用文献】に示す1を参照した。
「世代」の区分
本考察では、バージョン(赤・緑など)を「世代」で区分した。赤・緑、青、ピカチュウを第1世代(初代)、金・銀、クリスタルを第2世代、ルビー・サファイア、ファイアレッド・リーフグリーン、エメラルドを第3世代、ダイヤモンド・パール、プラチナ、ハートゴールド・ソウルシルバーを第4世代、ブラック・ホワイト、ブラック2・ホワイト2を第5世代、X・Y、オメガルビー・アルファサファイアを第6世代、サン・ムーン、ウルトラサン・ウルトラムーンを第7世代とした。
【参考・引用文献】
#1. カントー地方・ナナシマを中心としたポケモン世界の古代文明に関する考察
IgA (@lkm_mm)
【注意:はじめに】
全て妄想です。ポケモン世界に存在したと思われる古代文明について、それぞれの関係性について考えてみましたが、無理やり関連付けた部分も多いです。「そのロジックは破綻しているのでは…」という箇所、分かりにくい箇所もあると思います。それでも構わない、ということであれば(長いですが)読んでいただけると幸いです。正直自分でもやりすぎたと思っています…。(20180331)
【概要】
第2世代のシリーズである金・銀以降、冒険の舞台となる各地方には遺跡が登場する。それらの遺跡からはシンボルポケモン・アンノーンと関係がある文明(「アンノーン文明」と定義した)や点字を使用する文明(「点字文明」と定義した)といった古代文明の存在や、それぞれの文明とポケモンとの関係性を知ることができる。しかし、その詳細やそれぞれの文明同士の関係については断片的な情報しか明らかになっていない。本考察では、かつてカントー地方・ナナシマに存在したと思われるアンノーン文明と点字文明を出発点としてポケモン世界における古代文明について検証を行い、そこから導き出されたカントー地方・ナナシマ、ジョウト地方、ホウエン地方、シンオウ地方の古代文明の相関関係についての仮説を提唱した。
【背景】
アンノーンと関係がある文明(アンノーン文明)は、金・銀でその存在が明らかとなった古代文明である。金・銀(リメイク版のハートゴールド・ソウルシルバー;第4世代)及びそのマイナーチェンジ版クリスタルの舞台であるジョウト地方 (図1 A) には「アルフのいせき」(以降、「アルフの遺跡」と表記)という遺跡が登場し、古代人が遺したパズルを解くことでアンノーン(アルファベットのAからZに似た26種類の姿を持つ)と遭遇できるようになる。アンノーン文明の古代人は「アンノーン文字」と呼ばれる、アンノーンの姿と形がよく似た文字を使用していた。クリスタル、ハートゴールド・ソウルシルバーのアルフの遺跡においては遺跡の部屋にアンノーン文字でメッセージが記されており、その指示に従うことで隠された部屋に入ることができる。また、アンノーン文明のものと思われる古代遺跡はジョウト地方以外にも存在し、ファイアレッド・リーフグリーン(赤・緑(第1世代)のリメイク版)に登場する地域であるカントー地方・ナナシマ(第3世代)(図1 B) の「7のしま」(以降、「7の島」と表記)には「アスカナいせき」(以降、「アスカナ遺跡」と表記)及び「アスカナのかぎ」(以降、「アスカナの鍵」と表記)、ダイヤモンド・パール及びマイナーチェンジ版プラチナの舞台であるシンオウ地方(第4世代)(図1 C) のズイタウンには「ズイのいせき」(以降、「ズイの遺跡」と表記)が存在する。さらに、第3世代以降は「!」と「?」の記号に似た姿を持つ2種類のアンノーンが追加され、アンノーンの姿は全28種類となった。前述の通り、現在明らかになっているアンノーン文明の遺跡はカントー(ナナシマ)、ジョウト、シンオウの3地方に存在するが、これらの遺跡に関連があるのかについては不明である。
点字を使用する文明(点字文明)は、第3世代のシリーズであるルビー・サファイア(冒険の舞台はホウエン地方 (図1 D))でその存在が明らかとなった古代文明である。ルビー・サファイア(リメイク版のオメガルビー、アルファサファイア;第6世代)、そのマイナーチェンジ版エメラルドでは「おふれのせきしつ」(以降、「おふれの石室」と表記)でその存在を初めて知ることができる。この文明の古代人は点字を使用して文章を書いていたようで、点字文明の遺跡に遺された文章は全て点字で書かれている。おふれの石室では、点字で記された文章の指示に従うことで111番道路の「さばくいせき」(以降、「砂漠遺跡」と表記)、105番水道の「こじまのよこあな」(以降、「小島の横穴」と表記)、121番道路の「こだいづか」(以降、「古代塚」と表記)の入り口を開けることができる。その後、それぞれの遺跡に記された指示に従うことでいわやまポケモン・レジロック(砂漠遺跡)、ひょうざんポケモン・レジアイス(小島の横穴)、くろがねポケモン・レジスチル(古代塚)と遭遇できるようになる。点字文明はナナシマにも存在していたようで、「1のしま」(以降、「1の島」と表記)の「ともしびやま」(以降、「ともしび山」と表記)、「6のしま」(以降、「6の島」と表記)の「てんのあな」(以降、「点の穴」と表記)に点字で書かれた文章が存在する。しかし、アンノーン文明と同様に、ホウエン地方とナナシマの点字文明に関連があるかについては不明である。さらに不可解なのはおふれの石室が134番水道から秘伝技 “ダイビング” を使わなければ到達できない洞窟であることで、なぜ海の底に存在する洞窟に文明が存在したのかも分かっていない。
このように、ポケモン世界では同一の文字文化を持つ文明の遺跡が複数の地方から見つかっている。これらの遺跡が、同一の文化を持つにも関わらずそれぞれ独立に繁栄したとは考えづらく、一箇所から伝播していったという見解を持つ方が合理的である。本考察では、まず古代文明の伝播について検証を行い、その結果導き出される仮説についてを記述する。
図1. カントー地方・ナナシマ、ジョウト地方、ホウエン地方、シンオウ地方のマップ
A. ジョウト地方のマップ。図示したように、マップの中央付近にアルフの遺跡が位置する。また、表示されていないが、主人公がシント遺跡(後述)にいる場合は矢印で示した付近に表示される。
B. カントー地方・ナナシマのマップ。1から7までの7つの島から構成される。アスカナ遺跡は 7の島の南側の海上に存在する。また、6の島の南側にはデオキシスが現れる「たんじょうのしま (誕生の島)」が存在するほか、表示されていないが4の島と5の島の間(矢印で示した付近)にはへその岩が存在する。
C. シンオウ地方のマップ。地方の陸地を縦断するようにテンガン山がそびえ、その頂上にやりのはしら(後述)が存在する。ズイの遺跡はズイタウンの中に存在し、キッサキ神殿(後述)はシンオウ地方最北端の町であるキッサキシティの中に存在する。
D. ホウエン地方のマップ。134番水道から”ダイビング”した先におふれの石室が存在するほか、 レジの名を持つポケモンが封印されている遺跡が図示したように点在している。海上の町であるキナギタウンには、レジの名を持つポケモンの存在をほのめかす話をする NPCが登場する(後述)。
【ゲーム本編からの情報と考察】
アンノーン文明の古代人はホウオウの存在を知っていた
にじいろポケモン・ホウオウは、金及びハートゴールドのパッケージを飾る伝説のポケモンである。ジョウト地方・エンジュシティにはホウオウの伝説が残されており、飛来したホウオウが身を休めるための場所である「スズのとう」(以降、「スズの塔」と表記)が存在する。アルフの遺跡のパズルにはホウオウのパズルが存在するほか、ホウオウが手持ちにいることで開く部屋が存在する。これらは、アルフの遺跡の古代人はホウオウの存在を知っていたということを意味している。また、ホウオウがトリガーとなって開く部屋の存在は、アルフの遺跡の古代人がホウオウと交流を持っていた可能性を示唆するものでもある。
また、ファイアレッド・リーフグリーンでは、ホウオウは配信アイテムであるしんぴのチケットを使用することで行ける「へそのいわ」(以降、「へその岩」と表記)の最上階に出現する。へその岩はナナシマの中心に位置する島である。アスカナ遺跡からは距離があるものの、島の位置関係からアスカナ遺跡の古代人がホウオウの存在を知る可能性が十分にあったと考えられる。
以上より、アルフの遺跡の古代人とアスカナ遺跡の古代人には、アンノーン以外にも「ホウオウを認識していた」という共通点が存在する可能性が示唆される。
アルフの遺跡はアスカナ遺跡よりも文化レベルが高い
次に、アルフの遺跡とアスカナ遺跡の古代人の間に接点があったかについて検証する。アルフの遺跡とアスカナ遺跡の古代人にはアンノーン以外にもホウオウの認識という共通点が存在するという可能性があることは前述の通りだが、ここではもう1つの共通点に着目する。アルフの遺跡には4つのパズルが存在し、アスカナ遺跡には秘伝技 “かいりき” を用いたパズルが存在する(厳密には、このパズルは「しっぽうけいこく」内のアスカナの鍵という洞窟に存在する)。これらのパズルはどちらも、アンノーンを出現させることに関係している。これらのパズルからアルフの遺跡とアスカナ遺跡の文化レベルを比較してみる。パズルに壁画(ポケモンの絵)が描かれているという点、パズルのピースを秘伝技なしで動かせる(アスカナの鍵のパズルと比べて小規模である)点、パズルが小部屋に存在する点から、アルフの遺跡のパズルの方が文化的に高度なように思われる。さらに、アスカナ遺跡にはアルフの遺跡と異なりアンノーン文字を用いた文章が存在しない。以上の点から、文化レベルは 「アルフ > アスカナ」 であると考えられる。
前述したように、ある同一の文化を持つ複数の文明がそれぞれ独立に繁栄するとは考えづらい。前項ではアルフの遺跡の文化レベルはアスカナ遺跡よりも高いとしたが、それが正しいとするならアスカナ遺跡はアルフの遺跡よりも古い時代の遺跡であると考えられる。このことから、アンノーン文明はアスカナ遺跡(ナナシマ)で最初に繁栄し、その後アルフの遺跡(ジョウト)へ伝播した可能性が考えられる。海に囲まれたナナシマでは、人間は食料や新天地を求めて移動を行うことが十分に考えられる。アスカナのアンノーン文明が繁栄して人口が増えたと仮定した場合、古代人がカントー地方等と比べて陸の面積が小さいナナシマに定住し続けるとは考えにくく、新天地を求めて移住や侵略を始めることが予想される。本考察では、その行き先がジョウト地方であるという仮説を立てる。ジョウト地方には、32番道路と33番道路、及びアルフの遺跡をつなぐ「つながりのどうくつ」(以降、「つながりの洞窟」と表記)という洞窟が存在する。ジョウト地方のマップを参照すると、つながりの洞窟の東側は海 (図2) になっている。さらに、つながりの洞窟はアルフの遺跡に直結しているため、アスカナ遺跡から海を渡ってジョウトに渡来したアンノーン文明の古代人は、つながりの洞窟を通ってアルフの遺跡に至ったと考えられる (図2)。
ナナシマ(アスカナ遺跡)からジョウト地方(アルフの遺跡)への、アンノーン文明の渡来経路を予想した図。
アルフの遺跡における絵画の発達とアスカナの痕跡
アルフの遺跡にはえかきポケモン・ドーブルが生息することから、アンノーン文明で絵を描く文化が発達したのはアンノーン文明の古代人がドーブルと接触したことに起因する可能性が考えられる。また、ホウオウ以外のパズルに描かれているポケモンはこうらポケモン・カブト、うずまきポケモン・オムナイト、かせきポケモン・プテラである。このうちカブトとオムナイトは海に生息していたポケモンであり、内陸に存在するアルフの遺跡でこれらのポケモンと馴染みがあった可能性は低い。しかし、海に囲まれたアスカナ遺跡では馴染みがあった可能性が高く、アルフの遺跡に遺された壁画のパズルにはアスカナ時代に関わりがあったポケモンが描かれたとも考えられる。ハートゴールド・ソウルシルバーではアルフの遺跡で “いわくだき” をするとカブトの化石であるこうらのかせき(ハートゴールドのみ)、オムナイトの化石であるかいのかせき(ソウルシルバーのみ)が見つかることがあるが、これらはつながりの洞窟の地下2階の水域から古代人によって捕獲されたカブト・オムナイトの化石であると推測できる。現代のジョウト地方では、毎週金曜日になるとつながりの洞窟地下2階の水域にのりものポケモン・ラプラスが出現することから、この水域が海と繋がっていると言われている点に一致する。しかし、つながりの洞窟から地下に降りて漁をすることが効率的とは考え難く、そこまで頻繁に行われた漁ではないと考えられる。
クリスタル、ハートゴールド・ソウルシルバーでは、アルフの遺跡の古代人が旅に出たことが明らかとなる (文1)。旅に出た古代人はどこへ向かったのだろうか。その詳細を明らかにするための根拠は第7世代(ウルトラサン・ウルトラムーン)現在見つかっていないが、旅に出た古代人の少なくとも一部はアルフの遺跡から北上していったと考えられる。ハートゴールド・ソウルシルバーのみで行くことができる「シントいせき」(以降、「シント遺跡」と表記する)では、遺跡にいるNPCトレーナーの「やまおとこ」からジョウトの文化とシンオウの文化が交わったことでアルフの遺跡と「やりのはしら(シンオウ地方の「テンガンざん」(以降、「テンガン山」と表記)の頂上に作られた古代遺跡)」の特徴を兼ね備えた建造物が作られたという話を聞ける。このことから、アルフの遺跡の古代人は北上したと分かる。
わたしたち にんげん かれらと ともに あゆむ こと ひつよう
かれらの ために わたしたち たびだつ
文1. アンノーン文字で書かれたアルフの遺跡の文章(訳, 左下の小部屋)
アルフの遺跡(左下の小部屋)にアンノーン文字で書かれた文章の現代語訳(日本語)。
アルフの遺跡の古代人とシンオウ(やりのはしら)の古代人の交流が双方に与えた影響
シント遺跡ではさらに、シンオウ地方のポケモンリーグチャンピオンであるシロナが登場する。シロナによると、シント遺跡の「みつぶたい」はシンオウ地方の神話で世界の創造主とされているそうぞうポケモン・アルセウスを祀るためのステージで、アルセウスの力を音楽と踊りで表現するためのものだという。また、この表現技法を受け継ぐ人々がジョウト地方にはいるという。ジョウト地方における「踊り」はエンジュシティの まいこはん(以降、「舞妓はん」と表記)のものが有名であり、舞妓はん達による舞踊(このときゲーム中で使用される曲の名前を借り、「縁寿の舞(えんじゅのまい)」と呼称する)は伝説のポケモンを呼ぶためのものである(ハートゴールドではスズの塔でホウオウを光臨させるため、ソウルシルバーではうずまきじま(41番水道に存在する4つの島)でルギアを出現させるため;リメイク後のみ)。このことから、「縁寿の舞」はシンオウ地方の古代人(以降、「やりのはしら文明の古代人」とする)から伝えられた「踊り」を起源とする可能性が示唆される。
また、シンオウ地方のズイの遺跡にはアンノーン文字で書かれた文章が存在する (文2)。その記述からは「友好」や「交流」といった内容を読み取ることができるが、この記述はアルフの遺跡の古代人と交流したやりのはしら文明の古代人による記述なのかもしれない。
FRIEND すべて の いのち は
べつ の いのち と であい なにか を うみだす
文2. アンノーン文字で書かれたズイの遺跡の文章
ズイの遺跡最奥にアンノーン文字で書かれた文章の現代語訳(日本語と英語)。
点字文明の古代人によって「とじこめ」られた「1匹の」ポケモン
ナナシマにアンノーン文明が存在したことは前述の通りだが、ナナシマにはもう1つ古代文明が存在した。1の島のともしび山、及び6の島の遺跡である点の穴では点字で書かれた文章が見つかることから、ナナシマには点字を使用する文明(点字文明)が存在したことが明らかとなる (文3 A, B)。
ポケモン世界における点字文明の存在は、ファイアレッド・リーフグリーンの1つ前の作品であるルビー・サファイアで初めて明らかとなった。ホウエン地方に遺された点字文明の遺跡(おふれの石室、砂漠遺跡、小島の横穴、古代塚)からは、点字文明の古代人と「レジ」の名を持つポケモン(レジロック、レジアイス、レジスチル)の関係が示唆されていた。おふれの石室には文章 (文3 C) が遺されていたが、その文中には不可解な点が存在する。それは「だが わたしたちわ あの ぽけもんを とじこめた」という文中にある。ホウエン地方にはレジロック、レジアイス、レジスチルの3匹のポケモンが「とじこめ」られていたが、「あの ぽけもん」という表現は3匹のポケモンを示すというよりは1匹のポケモンを示す表現のように思われる。複数のポケモンを示す表現をするならば、「あの ぽけもん『たち』」と記述するのが自然である。この点については、おふれの石室の文章の英語版 (文3 D, E) から答えを得ることができる。英語版における「だが わたしたちわ あの ぽけもんを とじこめた」に該当する文章は、ルビー・サファイア、エメラルド(リメイク前)では ”BUT, WE SEALED THE POKEMON AWAY.” と英訳され、オメガルビー・アルファサファイア(リメイク後)では “YET, WE SEALED THAT POKEMON AWAY, ALONE IN THE DARK.” と英訳されている。これらの文で「あの ぽけもん」に該当する箇所はそれぞれ “THE POKEMON” と “THAT POKEMON” である。さらに最後の文である「とびらを あけよ そこに えいえんの ぽけもんが いる」は、リメイク前は “OPEN A DOOR. AN ETERNAL POKEMON WAITS.” と英訳され、リメイク後は “OPEN THE DOOR. FOR BEYOND IT THE ETERNAL POKEMON WAITS.” と英訳されている。最後の文の英訳には着目すべき箇所が2箇所存在し、1箇所目はリメイク前の英文の “AN ETERNAL POKEMON” である。ここでは “AN” という冠詞が使用されていることから、直後の “ETERNAL POKEMON” は単数形、つまり1匹のポケモンを示しているということが分かる。2箇所目は “WAITS”(リメイク前後共通)である。“WAITS” は動詞 “wait” に三人称のsが付加されたもの(三人称単数現在形)であることが文脈から分かるため、この文の主語である “AN ETERNAL POKEMON”(リメイク前)及び “THE ETERNAL POKEMON”(リメイク後)は共に単数形であると分かる。以上のことから、点字文明の古代人が「とじこめた」ポケモンは1匹であることが明らかとなる。これは、おふれの石室で言及されているポケモンがレジロック、レジアイス、レジスチルの3匹のことではないということを示唆している。
A
ものごと にわ いみが ある そんざい にわ いみが ある
いきる ことにわ いみが ある ゆめを もて ちからを つかえ
B
ひかり かがやく ふたつの いし ひとつわ あかく ひとつわ あおく
ふたつの ちからで かこが つながり ふたりの ちからで ひかり かがやく
そして あたらしい せかいが みえてくる
つぎの せかいを つくるのわ あなただ もー はじまっている
C
わたしたちわ この あなで くらし せいかつ し そして いきて きた
すべてわ ぽけもんの おかげだ
だが わたしたちわ あの ぽけもんを とじこめた こわかったのだ
ゆーき ある ものよ きぼーに みちた ものよ
とびらを あけよ そこに えいえんの ぽけもんが いる
D
IN THIS CAVE WE HAVE LIVED.
WE OWE ALL TO THE POKEMON.
BUT, WE SEALED THE POKEMON AWAY. WE FEARED IT.
THOSE WITH COURAGE, THOSE WITH HOPE.
OPEN A DOOR. AN ETERNAL POKEMON WAITS.
E
LONG DID WE LIVE HERE IN THIS CAVE.
ALL THANKS TO THE POWERFUL POKEMON LIVING ALONGSIDE US.
YET, WE SEALED THAT POKEMON AWAY, ALONE IN THE DARK.
WE FEARED IT.
IF YOU HAVE THE COURAGE, IF YOU STILL HOLD TO HOPE,
OPEN THE DOOR. FOR BEYOND IT THE ETERNAL POKEMON WAITS.
文3. 点字文明の古代人が遺跡に遺した文章(訳)
A. 1の島(ナナシマ)、ともしび山に遺された文章の現代語訳(日本語)。
B. 6の島(ナナシマ)、点の穴に遺された文章の現代語訳(日本語)。
C. おふれの石室(ホウエン)に遺された文章の現代語訳(日本語)。
C. おふれの石室(ホウエン)に遺された文章の現代語訳(英語, ルビー・サファイア、エメラルド)。
E. おふれの石室(ホウエン)に遺された文章の現代語訳(英語, オメガルビー・アルファサファイア)。
4種目の「レジ」;レジギガス
ダイヤモンド・パールが発売されて第4世代に移ると、「レジ」の名を持つ新たなポケモンが登場した。それがきょだいポケモン・レジギガスである。ポケモン図鑑の説明によれば、レジギガスには「レジロック、レジアイス、レジスチルの3匹を作った」という伝説や「縄で縛った大陸を引っ張って動かした」という伝説が存在するという (文4 A-C)。実際、第3世代で登場した3匹のレジとは関係があり、シンオウ地方においてレジギガスと戦闘を行うためには「キッサキしんでん」(以降、「キッサキ神殿」と表記)の最奥部に佇むレジギガスのところへレジロック、レジアイス、レジスチル(3匹のレジ)を連れて行かなければならない。3匹のレジを連れて行かなければならない点はその後のシリーズでも引き継がれている。3匹のレジと関連が深いことからも、レジギガスと点字文明にも何らかの関係があることが疑われるが、その詳細については不明である。
A
なわで しばった たいりくを ひっぱって
うごかしたという でんせつが のこされている。
B
とくしゅな ひょうざんや がんせき マグマから
じぶんの すがたに にた ポケモンを つくったと いわれる。
C
ねんど こおり マグマを つかって レジロック レジアイス レジスチルの
3ひきを つくったと いわれている。
A. ダイヤモンド、パール、Y、アルファサファイアでの図鑑説明。
B.プラチナ、ブラック、ホワイト、ブラック2、ホワイト2、X、オメガルビーでの図鑑説明。
おふれの石室で言及されたポケモンはレジギガスである可能性がある
では、おふれの石室の文章が示す「ぽけもん」とは、一体何であるのか。前述した通り、文章が示すのは1匹のポケモンである。
おふれの石室の文に示された指示の1つ目は、ポケモンの技 “あなをほる” を使用することである (文5 A)。これによって、おふれの石室の奥へと進めるようになる。2つ目の指示は、手持ちの最初をちょうじゅポケモン・ジーランス、最後をうきくじらポケモン・ホエルオーにすることであり、これによって砂漠遺跡、小島の横穴、古代塚の扉が開く(エメラルドではジーランスとホエルオーの順番が逆になっている)(文5 B, C)。レジロック、レジアイス、レジスチルのいるところへ辿り着くためには、さらにそれぞれの遺跡に示されている指示に従う必要がある (文5 D-I)。そして、レジロック、レジアイス、レジスチルの3匹が揃うと、初めてレジギガスと戦えるようになる。ここから分かることは、点字で書かれた文に従って遺跡の扉を開けることで遭遇できる3匹を揃えることで、レジギガスにかけられた何らかの封印が解かれるということである。この点から、おふれの石室の文章で言及されたポケモンがレジギガスである可能性が示唆される。また、オメガルビー・アルファサファイアにおける「すべてわ ぽけもんの おかげだ」の英訳は “ALL THANKS TO THE POWERFUL POKEMON LIVING ALONGSIDE US.”となっており、文章で言及されているポケモンが ”POWERFUL” であることが明らかとなっている (文3 E)。縄で縛った大陸を引っ張って動かしたという伝説 (文4 A) からもレジギガスが ”POWERFUL” であることは明白であり、この点もおふれの石室で言及されたポケモンがレジギガスである可能性を示唆する根拠の1つだろう。
A
ここで あなを ほれ
B
はじめに じーらんす おわりに ほえるおー そして すべてが ひらかれる
C
さいしょに ほえるおー さいごに じーらんす そして すべてが ひらかれる
D
みぎ みぎ した した そこで かいりきを つかえ
E
ひだり ひだり した した そこで いわくだきを つかえ
F
このまま うごかず ふたつの ときを まて
G
かべから はなれず ここを ひとまわりせよ
H
あらたなる ときと きぼーと あいを もち まんなかで そらを めざせ
I
われわれの いしを つぎし ものよ まんなかで ひかりかがやけ
A. おふれの石室の奥に進むための指示。
B. おふれの石室(奥の部屋)に書かれた、砂漠遺跡、小島の横穴、古代塚の入り口を開けるための指示(ルビー・サファイア、オメガルビー・アルファサファイア)。
C. おふれの石室(奥の部屋)に書かれた、砂漠遺跡、小島の横穴、古代塚の入り口を開けるための指示(エメラルド)。
D. 砂漠遺跡に書かれた、レジロックがいる部屋を開けるための指示(ルビー・サファイア、オメガルビー・アルファサファイア)。
E. 砂漠遺跡に書かれた、レジロックがいる部屋を開けるための指示(エメラルド)。
F. 小島の横穴に書かれた、レジアイスがいる部屋を開けるための指示(ルビー・サファイア、オメガルビー・ アルファサファイア)。
G. 小島の横穴に書かれた、レジアイスがいる部屋を開けるための指示(エメラルド)。
H. 古代塚に書かれた、レジスチルがいる部屋を開けるための指示(ルビー・サファイア、オメガルビー・アルファサファイア)。
I. 古代塚に書かれた、レジスチルがいる部屋を開けるための指示(エメラルド)。
ナナシマ誕生の言い伝えと創造神
ここで一度、話をナナシマに戻す。ナナシマの1つである7の島では、NPCの老婆から「ナナシマ」という名称の由来を聞くことができる。その話によれば、「ナナシマ」とは「7日で出来た島」という言い伝えから名付けられた名前であるという (図3)。老婆からは名前の由来しか聞くことができないが、このような言い伝えがあるという点からナナシマには神話のような物語が存在することが推測される。
ここで一旦、ポケモンの話題から離れる。我々の世界においても「7日で出来た」という言い伝えは存在する。それは『天地創造』と呼ばれる、ユダヤ教及びキリスト教の聖典である『創世記』に記された神による天地の創造である。
話をポケモンに戻す。『天地創造』の知見より、ナナシマ誕生の言い伝えにも島を創造した、神にも等しい力を持つ者の存在が示唆される。ポケモン世界においてそのような力を持つ者として最初に導き出されるのが、そうぞうポケモン・アルセウスである。
図3. 「ナナシマ」の名前の由来
7の島にいる、NPCの老婆の証言。
ダイヤモンド・パールから登場した道具である「プレート」は全部で17種類(第5世代までは16種類)存在し、ポケモンに持たせることで特定のタイプ(プレート毎に決まっている)の技の威力を上げることができる。ダイヤモンド・パール、プラチナでは、プレートを手に入れたときのみプレートに書かれた神話を読むことができる (文6 A-H)。その中には「プレート にぎりしもの さまざまに へんげし ちからふるう」、「プレートに あたえた ちから たおした きょじんたちの ちから」という文が存在する。アルセウスは「マルチタイプ」という特性を持ち、プレートによって姿とタイプが変わる。よって、「プレート にぎりしもの」はアルセウスのことだと考えられる。では、「たおした きょじんたち」とは何だろうか。プレートに書かれた話が本当だとすると、アルセウスはかつて巨人達と戦いを繰り広げ、倒していったことになる。倒した巨人の力をプレートに与えたということから、プレートが持つ効果(特定のタイプの技の威力を上げる)は元々巨人が持っていた力であると考えられる。この点から、巨人は18種類のタイプのいずれかに該当するタイプ(あるいはタイプに関係する、特性等の能力)を持っていたことが予想される。しかし、プレートは全タイプのものが存在するというわけではなく、唯一ノーマルタイプのプレートだけが存在しない。これらの点から「巨人」の正体を推測すると、レジギガス(ノーマルタイプ)を候補として上げることができる。レジギガスをアルセウスと戦っていた巨人の1匹と仮定すると、少なくともシンオウ神話の世界にはレジギガス以外にも「きょだいポケモン」と呼ぶに相応しいポケモンが存在した可能性が示唆される。
A
うちゅう うまれるまえ そのもの ひとり こきゅうする
B
そのもの じかん くうかんの 2ひき ぶんしんとして よに はなつ
C
そのもの じかん くうかんを つなぐ 3ひきの ポケモンをも うみだす
D
うちゅう うまれしとき その かけら プレートとする
E
うまれてくる ポケモン プレートの ちから わけあたえられる
F
2ひきに もの 3びきに こころ いのり うませ せかい かたちづくる
G
プレート にぎりしもの さまざまに へんげし ちからふるう
H
プレートに あたえた ちから たおした きょじんたちの ちから
文6. プレートに書かれた、アルセウスの神話と思われる記述
A-H. ダイヤモンド・パール、プラチナにてプレートを旅路で入手した際に読めるアルセウスの神話と思われる記述。
アルセウスと巨人の戦いがナナシマで行われた可能性
さて、前項までで「点字文明の古代人が封印したポケモンがレジギガスである可能性」、「ナナシマとアルセウス」、「アルセウスと巨人の戦い」について記述してきた。ここからは、これらの3点を結びつける。
まずおふれの石室の記述より、点字文明の古代人はレジギガスと共存していたと仮定する。アルセウスと巨人の戦いについては前述の通りだが、点字文明のレジギガスがアルセウスと戦っていたとするならば、その戦いの場所はナナシマであるという推測ができる。ナナシマには点字文明が存在し、かつナナシマ誕生にアルセウスが関与している可能性が考えられるためである。
ところで、アルセウスと巨人は何故戦う必要があったのだろうか。レジギガスもアルセウスと対立する側に属していたのだとすれば、点字文明の古代人もアルセウスと対立していた可能性が高い。この点に関しては、点の穴に着目することで考察する。点の穴の最奥には「サファイア」が存在するが、この部屋には点字で書かれた文章が存在する。その記述には、「つぎの せかいを つくるのわ あなただ」という一文が存在する (文3 B)。「せかいを つくる」という表現はアルセウスによる天地創造を連想させることから、点字文明の古代人は「つぎの せかいを つく」ろうとした結果アルセウスの怒りを買ったのかもしれない。
あるいは、レジギガスがレジロック、レジアイス、レジスチルの3匹を作り出せるという点が問題だった可能性も考えられる。前述のように、ポケモン図鑑にはレジギガスがレジロック、レジアイス、レジスチルの3匹を創り出したという伝説が記載されている (文4 B, C)。アルセウス以外が生命を創造してしまうということは、神の禁忌を犯す所業だったのかもしれない。点字文明の古代人の目的は、レジギガスの力を使って巨人の眷属たりうる巨人を創り出し、その力で「せかいをつくる」ことだったのかもしれない。
戦いの結果と点字文明のその後
アルセウスと巨人達の対立の原因は確定できないが、プレートの記述から戦いの結末はアルセウスの勝利ということが伺える (文6 H)。多くの巨人がアルセウスに倒されてしまったものの、ノーマルタイプの巨人であるレジギガスは生き残った。しかし、残った巨人や古代人も、いずれはアルセウスに滅ぼされてしまうことは想像に難くない。そのような状況で残った巨人と古代人の取った選択は、逃走だったのではないだろうか。アルセウスの攻撃から逃れるためにナナシマを離れるのである。ここで、レジギガスの図鑑説明に着目する。図鑑説明より、レジギガスには「縄で縛った大陸を引っ張って動かした」という伝説が存在することが明らかとなる (文4 A)。点字文明の古代人は、かつてナナシマに存在した大陸ごと自分達をレジギガスに引っ張らせることで逃走を図ったのではないだろうか。本考察では、この結果行き着いたのがホウエン地方であるという仮説を提唱する。これが、ナナシマとホウエンの両方に点字文明が存在する理由ではないだろうか。
おふれの石室は134番水道から秘伝技 “ダイビング” を使わなければ到達できない海底の洞窟である。さらに、134番水道は激しい海流が存在する海域である (図4)。点字文明の古代人がそのような海域に辿り着けたのはレジギガスの力を借りたためだと考えられる。おふれの石室が海底に存在するのもレジギガスの力を借りたためかどうかは定かではないが、少なくとも、海底に石室が存在する理由はアルセウスの追撃を避けるためであったという推測はできる。
しかし点字文明の古代人は、「すべては ぽけもんの おかげ」としながらも、「あの ぽけもんを とじこめた」と記述している (文3 C, D, E)。その理由として「(『あの ぽけもん』が)こわかったのだ」(英語版:” WE FEARED IT.”より括弧内のことが分かる)ということを記しているが、これは「『レジロック、レジアイス、レジスチルを創り出せる能力を持つためにアルセウスから攻撃されてしまうため、あのポケモン(レジギガス)が』怖かったのだ」という意味かもしれない。そうでもなければ、自分達の生活を支えているポケモンをわざわざ閉じ込める必要はないだろう。
図4. 134番水道のダイビングポイント
ホウエン地方・134番水道の海流の中に存在する”ダイビング”可能なポイント。
海中に潜って道なりに進んだ先で浮上すると、おふれの石室に到達する。
それぞれの文明の古代人達の子孫
ここまでアンノーン文明と点字文明に関する考察を行ってきたが、最後に、これらの文明の古代人達がその後どうなったかについて考察する。まずはアンノーン文明の古代人だが、前述したように彼らはやりのはしら文明の古代人から「踊り」を学び、それを「縁寿の舞」に発展させていった可能性が高い。つまり、アルフの遺跡の古代人達はエンジュシティの人々の祖先である可能性が示唆される。
次に点字文明の古代人だが、彼らはレジギガスを封印した後に海上での生活を始めたと考えられる。そして、現在のキナギタウンの住民達の祖先となった可能性がある。海上の町であるキナギタウンでは、ポケモンセンターにいるNPCの老人からキナギタウンの人々の祖先が船の上で生活し、何かを探し求めていたという話を聞くことができる (図5 A)。また、ある民家の住人(NPC)からはレジロック、レジアイス、レジスチルと思われるポケモンについてを (図5 B)、そして「6つの点が3つの扉を開ける」という話を聞くことができる (図5 C)。この話からは、海底のおふれの石室から海上へ出た点字文明の古代人の子孫達が、再びおふれの石室に戻ってレジギガスの封印を解くために船で石室を探していたということが推測できる。「6つの点が3つの扉を開ける」という言葉が点字で記された方法で遺跡の扉を開けるということを意味しているのは言うまでもないが、この発言をするNPCの少女がその意味を理解していないことを考えると、海の上で生活を続けてきた本当の理由はとうの昔に失われてしまっていると推測できる (図5 C)。
図5. キナギタウンの住人達の証言
A. ポケモンセンターの、NPCの老人から聞けるキナギの住人の祖先に関する証言。
B. ポケモンセンターの右上に位置する民家の住人の、レジロック、レジアイス、レジスチルの存在を示唆する証言。
C. ポケモンセンターの右上に位置する民家の住人の、レジロック、レジアイス、レジスチルの存在を示唆する証言。
【さらなる疑問と残された問題点及び可能性】
今回、ゲーム内の断片的な情報からポケモン世界における古代文明について考察し、アンノーン文明と点字文明はナナシマから別の地方へと伝播していったという仮説を提唱した。しかし、当然ながら今回記述した内容は想像によるところが多く、新たな情報が明らかにならない限り確実な回答とすることはできない。以降は、本考察に関して残された疑問点及び問題点、それらに対して考えられる可能性について言及していく。
アンノーン文明におけるホウオウについて
前述の通り、縁寿の舞はやりのはしら文明の古代人から伝わった表現技法を取り入れて作られた舞踊である可能性が示唆される。このことから、やりのはしら文明の古代人と交流を持ったアルフの遺跡の古代人はエンジュシティと大きな関係があると考えられる。エンジュシティの舞妓はんや僧侶(NPCトレーナー「ぼうず」)の中には、アルフの遺跡の古代人を祖先に持つ人々がいることも予想される。エンジュシティにおけるホウオウの信仰は、アンノーン文明におけるホウオウの信仰が発展した形なのかもしれない。そうだとすれば、ハートゴールド・ソウルシルバーでスズの塔へ入った際に見られるホウオウの像 (図6) も、「わたしたち そとの ポケモン ぞう つくる」とアルフの遺跡に記されている技術と文化を受け継いで作られたものだと考えられるだろう。
本考察ではアスカナ遺跡の古代人とアルフの遺跡の古代人が共にホウオウを認識していたという仮説を立てたが、アスカナ遺跡の古代人に関してはその根拠が一切存在しない。また、へその岩にはルギアも現れるが、アルフの遺跡の壁画にルギアは描かれていない。アスカナ遺跡の古代人がへその岩の存在を知り、かつそこに現れるホウオウの存在を知っていたのであれば、同じくへその岩に現れるルギアの存在を知らなかったということには疑問が残る。ホウオウのみが信仰の対象となり、ルギアは対象とならなかったのだとしても、その理由を明らかにするためには第7世代現在では情報が足りない状況である。ただし、ルギアは通常海の底に身を潜めているため、アンノーン文明の古代人がルギアの存在を知り得なかった可能性も十分考えられる(ホウオウは空を飛んでいるため、地上からの視認が可能であると思われる)。このような疑問が残る現状ではあるが、エンジュシティにかつて「カネのとう(以降、「カネの塔」と表記)」というルギアを祀るための、スズの塔と対を成す塔が存在した点は非常に興味深い。このことは、スズの塔が建立された時代にルギアを信仰する文化がエンジュシティに存在したことを意味している。この塔は150年前に火事で消失し、現在は「やけたとう(以降、「焼けた塔」と表記)」と呼ばれる廃墟と化してしまった。火事の原因は不明であるが、この火事によって人々の信仰や多くの情報は失われてしまったものと考えられる。もしカネの塔にルギアの像が存在していたのであれば、それはアンノーン文明の文化を継承して作られたものであった可能性もあるだろう。ただし、アルフの遺跡とエンジュシティは距離的に近い位置にあるものの、アルフの遺跡の古代人が現在のエンジュシティに当たる場所(ホウオウが飛来していたと考えられる場所)を活動範囲としていたかは定かではない。さらに言えば、この遺跡が作られたとされる約1500年前にホウオウが現在のエンジュシティに当たる場所に飛来していたかすら不明である。少なくとも、アルフの遺跡の文明(アンノーン文明)との文化レベルの明らかな違いから、スズの塔はまだ建立されていなかった可能性が高い。スズの塔の建立は、縁寿の舞が現代に伝わる形になったのと同じ時代かもしれない。
図6. スズの塔に置かれるホウオウの像
スズの塔入り口に配置さていれる、ホウオウをモチーフにしたと思われる像。
わたしたち そとの ポケモン ぞう つくる
文7. アンノーン文字で書かれたアルフの遺跡の文章(訳, 右下の小部屋)
アルフの遺跡(右下の小部屋)にアンノーン文字で書かれた文章の現代語訳(日本語)。
アルフの遺跡の壁画に描かれたポケモンはほとんどが絶滅種である
アルフの遺跡の壁画に描かれているホウオウ以外のポケモンは、カブト、オムナイト、プテラである。こららのポケモンが壁画に描かれているということは、アンノーン文明の古代人がこれらのポケモンを認識していたということを意味する。つまり、現代から約1500年前の世界にはカブト、オムナイト、プテラ(及びカブトの進化系であるこうらポケモン・カブトプスとオムナイトの進化系であるうずまきポケモン・オムスター)が生息していた可能性があるということになる。しかし、これら3種は現代においては絶滅種とされており(ただし、ポケモン図鑑の説明によれば、カブトについてはごく一部の地域に生き残りがいることが明らかとなってきた)、化石を用いた復元を行わなければ入手が不可能である (文8 A-C)。これらのポケモンがいつ絶滅したのかは定かではないが、アンノーン文明の新たな情報が明らかになればこれらのポケモンについて、これらのポケモンの新たな情報が明らかになればアンノーン文明についての新たな知見を得ることができるかもしれない。特に、プテラついては興味深い。プテラはメガシンカすることが確認されているほか、巨大隕石の落下が絶滅の原因という説が根強いポケモンである (文8 C)。この巨大隕石がいつどこに落ちたかについては明らかとなっていないが、メガシンカの存在を考慮するならば、オメガルビー・アルファサファイアのエピソードデルタで語られたレックウザと隕石に関する話が古代のプテラに関係している可能性がある。ジョウト地方では隕石が落ちたという言い伝えは確認されていないが、ナナシマにはDNAポケモン・デオキシスが現れる「たんじょうのしま」が存在することから、アスカナ遺跡の古代人(及びその周辺に生息していたプテラ)が隕石の落下による何らかの影響を受けた可能性もある。また、犠牲者が出るほど凶暴なプテラが古代人と絆を結べたかについても議論の余地がある。
アンノーン文明の古代人がホウオウの力を借りていた場合は違う可能性も出てくる。エンジュシティに伝わる伝説によれば、150年前のカネの塔の火災では「名もなき3匹のポケモン」が命を落としたという。そして、その3匹をホウオウが蘇生させることでいかずちポケモン・ライコウ、かざんポケモン・エンテイ、オーロラポケモン・スイクンが誕生したと語られている。アンノーン文明の古代人が、何らかの理由でこの伝説で語られるようなホウオウの力の恩恵を受けることで絶滅したポケモンと共存したという見方もできるだろう。
A
赤・緑、ファイアレッド、Y
こだい せいぶつの かせきから さいせいしたポケモン。
かたい カラで みを まもっている。
青、リーフグリーン
とおい むかしに うみだった ちそうから
かせきが はっけんされ ふっかつ させた ポケモンである。
かせきから さいせいした ポケモン
かいていに かくれては せなかの めで あたりを みていたようだ。
金、ハートゴールド
かいていに みを ひそめたままの すがたで
かせきに なったものが たまに はっけん される。
銀、ソウルシルバー
おおむかしの ポケモン。ごくまれに
いきた かせきとして はっけん される ことがある。
クリスタル
3おくねんまえの かいていに みをひそめ
せなかにも ついていた めを ひからせていた ポケモン。
ルビー・サファイア・エメラルド
かせきから ふっかつした ポケモンだが まれに いきつづけている
カブトを はっけん できる。その すがたは 3おくねん かわっていない。
ダイヤモンド・パール・プラチナ、ブラック・ホワイト、ブラック2・ホワイト2
3おくねんまえの すなはまで くらしていたと かんがえられている。
かたい カラが みを まもる。
ウルトラサン
3おくねんまえに さかえた ポケモン。 とある ちほうでは
いまでも まれに いきた すがたが みられると いう。
ウルトラムーン
ごく いちぶの ちいきを のぞいて ぜつめつ してしまった ポケモン。
かたい カラで みを まもる。
B
赤・緑、ファイアレッド
おおむかし うみに すんでいた こだい ポケモン。
10ぽんの あしを くねらせて およぐ。
青、リーフグリーン
ぜつめつした ポケモンだが まれに かせきが はっけんされ
そこから いきかえらせることが できる。
10ぽんのあしを うまく くねらせて こだいの うみを
ただよっていた ポケモンの かせきを ふくげんした。
金、ハートゴールド
こだいの かせきから ふっかつ。
カラのなかに ためた くうきで すいちゅうを うきしずみ していた。
銀、ソウルシルバー
10ぽんの あしを じょうずに くねらせ
うみを およいでいたという おおむかしの ポケモン。
クリスタル
おおむかし かいていを およいで プランクトン などを たべていた。
ときどき かせきが みつかる。
ルビー・サファイア・エメラルド
おおむかしに ぜつめつしたが にんげんの てで かせきから ふっかつさせた
ポケモンの ひとつ。てきに おそわれると かたい カラに かくれる。
ダイヤモンド・パール・プラチナ、ブラック・ホワイト、ブラック2・ホワイト2
げんだいの すぐれた かがくりょくで かせきから ふっかつした ポケモン。
こだいの うみを およいでいた。
ウルトラサン
こだいのうみに いきていた ポケモン。 アーケオスの エサだったようで
はがたのついた かせきが みつかる。
ウルトラムーン
こだいの かせきから ふくげんされた。
おおむかし うみだった ばしょから かいのカセキが はっくつ される。
C
赤・緑、ファイアレッド、X
こはくに のこされた きょうりゅうの いでんしから ふっかつさせた。
たかいこえで なきながら とぶ。
青、リーフグリーン
のこぎりのような かたちの キバで あいての のどを かみきってしまう。
きょうぼうな こだいの ポケモンだ。
コハクから とりだされた いでんしを けんきゅうして
ふっかつさせた おおむかしの どうもうな ポケモン。
金、ハートゴールド
おおむかしの どうもうな ポケモン。
つばさを ひろげ そらを すべるように とんでいたらしい。
銀、ソウルシルバー、Y
かんだかい こえで さけびながら こだいの おおぞらを
とんでいたと される どうもうな ポケモン。
クリスタル
おおむかしの そらを じゆうきままに
とびまわっていた こわいものしらずの ポケモンだ。
ルビー・サファイア・エメラルド、オメガルビー・アルファサファイア
コハクから とりだした いでんしを さいせいして ふっかつした
きょうりゅう じだいの ポケモン。そらの おうじゃだったと そうぞうされている。
ダイヤモンド・パール・プラチナ、ブラック・ホワイト、ブラック2・ホワイト2
きょうりゅうじだいの おおぞらを とびまわっていた ポケモン。
のこぎりのような キバを もつ。
サン
きょうりゅう じだいの ポケモン。
のこぎりのような キバで えものを ひきさいて くっていた。
ムーン
こだいの おおぞらの おうじゃ。
きょだい いんせきの らっかで ぜつめつした せつが ねづよい。
ウルトラサン
こはくに のこされた いでんしから ふくげんさせた。
よそういじょうに きょうぼうで ぎせいしゃも でた。
ウルトラムーン
こだいの おおぞらを わがものがおで とびまわっていた。
じめんに おりると あるくのも おそく よわかったらしい。
D
サン
からだの いちぶが いしに なった。
このすがたが しんの プテラであると しゅちょうする がくしゃも いる。
ムーン
メガシンカし いぜんに わを かけて きょうぼうに。
かじょうな パワーに くるしんでいるためと いわれる。
ウルトラサン
うごくもの すべてに おそいかかる。
メガシンカが からだに ふたんで とても いらだって いるからだ。
文8. ポケモン図鑑に記載されているカブト、オムナイト、プテラ、メガプテラの説明
A. カブトの図鑑説明。
B. オムナイトの図鑑説明。
C. プテラの図鑑説明。
D. メガプテラの図鑑説明。
アンノーン文字とその他の文字の発達について
前述した点であるが、アンノーン文字を用いた文章はアスカナ遺跡には存在せず、アルフの遺跡とズイの遺跡で確認できるものである。しかしながら、アンノーン文字及びアンノーン文字を用いた文章がいつ発達したかは未だ明らかとなっていない。本考察でも言及したように、ズイの遺跡に見られるアンノーン文字を用いた文章はアルフの遺跡の古代人によって伝わった文字文化の影響を受けたものである可能性がある。この点を踏まえると、アンノーン文字及びアンノーン文字を用いた文章が発達したのはナナシマからジョウトに古代人が渡来した頃と推測される。
また、ズイの遺跡の文章には “FRIEND” という単語が使用されている (文2)。これはやりのはしら文明の古代人がアンノーン文字以外の言語・文字文化を持つ人々とも交流があった可能性を示唆するものである。X・Y殿堂入り後の、国際警察のハンサムが登場するエピソードでは英語を話す女性が登場することを考えると、ズイの遺跡が作られた時代にはポケモン世界において現代に伝わる英語が登場していたことが示唆される。26種類のアンノーンの姿がアルファベットに類似していることとポケモン世界の英語の発達にも何らかの関係があるかもしれない。今後何らかの情報が明らかとなれば、イッシュ地方やアローラ地方(地方のモデルがアメリカであることから英語圏である可能性がある)との関係も見えてくるかもしれない。
各遺跡のアンノーンについて
クリスタル、ハートゴールド・ソウルシルバーでは、アルフの遺跡にて「わたしたち にんげん かれらと ともに あゆむ こと ひつよう かれらの ために わたしたち たびだつ」、「かれら いしき さっちする ちからあり そと こばむ」という記述を確認できる (文1, 文9)。この文における「かれら」が何の代名詞であるかは不明であるが、ここではアンノーンのことを示すものと考える。「かれら」は「そと こばむ(外 拒む)」という。つまりアルフの遺跡の古代人はアンノーンのために旅に出たが、アンノーンを連れて行くことはしなかったと考えられる。このことは、アスカナ遺跡、アルフの遺跡、ズイの遺跡に出現するアンノーンはヒトによって各地方に広がったわけではないという可能性を示唆するものである。アンノーン文明の古代人は、アンノーンの代わりに彼らの仲間(アンノーン)を探すために旅に出たのだろうか。アスカナ遺跡とアルフの遺跡ではパズルを解かなければアンノーンと遭遇できないが、これは「そと こばむ」アンノーンへのアンノーン文明の古代人の施しだったのかもしれない。旅に出ることでヒトが遺跡からいなくなってしまうのであれば、他者に見つからないようにアンノーンを隠しておく必要があったということかもしれない。そうであれば、アンノーン文明の古代人の手が加わっていないであろうズイの遺跡にパズルが存在しない理由が説明できる。同じくヒトの手が加わっていないであろうマボロシ洞窟(オメガルビー・アルファサファイア)のアンノーンについても同様である。
かれら いしき さっちする ちからあり そと こばむ
文9. アンノーン文字で書かれたアルフの遺跡の文章(訳, 左上の小部屋)
アルフの遺跡(左上の小部屋)にアンノーン文字で書かれた文章の現代語訳(日本語)。
アンノーン文明とホウオウの関係については前述した通りであるが、ポケモン・アンノーンとホウオウは何か関係があるだろうか。ホウオウ自身とアンノーンの関連は現在のところ明らかとなっていないが、ホウオウによって蘇ったポケモンの1匹であるスイクンとは何らかの関係があると考えられる。クリスタルのオープニングにはアンノーンが登場し、スイクンと共に登場する場面も存在する (図7)。スイクンが誕生したとされる150年前にはアンノーン文明が存在しなかったであろうことを考えると、ホウオウはアンノーンとスイクンの関係を繋ぐポケモンなのかもしれない。ただし、第7世代現在において明らかとなっている情報のみでは彼らの関係性を予想するのは困難である。
シント遺跡においては、アンノーンはアルセウスに反応する。直後にディアルガ、パルキア、ギラティナのいずれかの創生が行われることになるが、アンノーンがこれに重要な役割を果たしているかについても未だ謎のままである。
図7. クリスタルバージョンのオープニングにはスイクンと共にアンノーンが登場する
クリスタルバージョンのオープニングムービーの一場面。
レジギガスの封印に関する謎
前述の通り、レジギガスは生き残ったノーマルタイプの巨人で、唯一アルセウスによって倒されなかった巨人である可能性を持つポケモンである。倒された巨人の力はプレートに与えられたということであるが、プレートの記述には「うちゅう うまれしとき その かけら プレートとする」というものがある (文6 D)。そして、「プレートに あたえた ちから たおした きょじんたちの ちから」という記述 (文6 H) は「元々存在していたプレートに(アルセウスが)倒した巨人の力を与えた」ことを意味している。これらの記述は、ノーマルタイプのプレートに該当するプレートが元々存在しなかった可能性を示唆するものである。また、プレートは複数枚の存在が確認されており、例えばダイヤモンド・パール、プラチナでは旅路で入手できるもの以外にも道具「たんけんセット」で行くことができる「ちかつうろ」で化石掘りをすることでも入手できる。倒された巨人は何匹いたのだろうか。プレートに書かれている話(そもそも、なぜプレートにまつわる話がプレートの裏に記述されているかも大きな謎である)が正しいとするならば、(i) 倒した巨人(同一種)は1匹で、その力を複数枚存在したプレートに与えた可能性、(ii) 倒した巨人(同一種)は複数で、複数枚存在したプレートの1枚ずつに対して倒した巨人1匹の力を与えた可能性、(iii) 倒した巨人(同一種)は1匹でプレートも1枚だったが、プレートに巨人の力を与えた後にプレートが複数枚に分けられた可能性、(iv) 倒した巨人(同一種)は複数でプレートは1枚だったが、複数の巨人(同一種)の力を与えられた後にプレートが複数枚に分けられた可能性、が考えられる。
本考察では、レジギガスがナナシマからホウエンに大陸を引っ張ったという仮説を立てた。ではその後、レジギガスはどこに封印されたのだろうか。オメガルビー・アルファサファイアでは小島の横穴にレジギガスが現れることから、レジギガスは小島の横穴に封印されたものと考えられる。小島の横穴にはレジアイスも封印されているため、オメガルビー・アルファサファイアにおけるレジギガスは自身にかけられた封印を解く鍵の1つと同じ場所に封印されていたことになる。オメガルビー・アルファサファイアにおいてレジギガスと遭遇するためには「レジロック、レジアイス、レジスチルの3匹を手持ちに揃える」こと以外にも「レジアイスに氷系のアイテムを持たせる」こと、「レジアイスにニックネームをつける」ことが必要となっている。レジアイスのみにこのような追加条件があるのは、レジアイスがレジギガスと同じ場所に封印されたためかもしれない。別のプロテクトをかけなければ、小島の横穴にて3匹が揃った時点でレジギガスの封印が解けてしまうことを考えての措置だろう。
しかし、レジギガスの封印に関してはまだまだ疑問が残る。点字文明の古代人は、自分達の生活を支えたポケモンを「とじこめた」ことをおふれの石室に記している。この記述は、点字文明の古代人がレジギガス(とレジアイス)を小島の横穴に封印して以降に書かれた記述であると考えるのが自然である。つまり、点字文明の古代人は一度石室から海上に出て小島の横穴に封印を施した後、おふれの石室に戻ったということになる。おふれの石室に行くための海中には、「ここで あがれ」と書かれた点字の文章が存在する (図8)。この記述からは、おふれの石室が最初から海中に存在していたことが示唆される。前述したように、点字文明の古代人の子孫と考えられる、キナギタウンの住人の祖先がおふれの石室を探していたのだとしたら、本来存在したはずの石室への戻り方がどこかで失われてしまったということになる。失われた「戻り方」の1つとして考えられるのが秘伝技であり、特に ”ダイビング” の伝承がどこかで途絶えてしまったためにおふれの石室へ戻れなくなった可能性が考えられる。点の穴の入り口を開けるために ”いあいぎり” が、古代塚のレジスチルに至るために “そらをとぶ”(エメラルドでは “フラッシュ”)が必要であること (文5 H, I) などを踏まえると、かつての点字文明は秘伝技を使いこなせる(ただし、第3世代の秘伝技においては ”たきのぼり” のみ確認されていない)文明だった可能性が示唆される。
点字文明の古代人は、自分達が施した封印を解く前提だったと考えられる。エメラルドの古代塚には、「われわれの いしを つぎし ものよ まんなかで ひかりかがやけ(英語版:” THOSE WHO INHERIT OUR WILL, SHINE IN THE MIDDLE.”)」という記述がある (文5 I)。この文章が存在する部屋の中央で “フラッシュ” を使えばレジスチルに至ることができるが、この文章に従って「ひかりかがや」いた場合、レジスチルの封印が解けるということになる。「ひかりかがや」くのが「われわれの いしを つぎし もの」であるということは、レジスチルの封印を施した古代人の意志は「レジスチルの封印を解くこと」となるはずである。その先に見えてくる目的は、「レジロック、レジアイス、レジスチルの3匹を揃えてレジギガスの封印を解く」ことだと考えられないだろうか。
最大の謎は、キッサキ神殿とレジギガスの関係である。ダイヤモンド・パール、プラチナにおいてはキッサキ神殿にレジギガスが現れるが、その理由については不明である。第7世代現在でもキッサキ神殿に関する情報はほぼ存在せず、点字文明はおろかやりのはしら文明との関連性すらも見出すことができない。
図8. 134番水道の海中で見つかる点字の文章
134番水道から”ダイビング”して道なりに進んだ先の海中で見つかる点字の文章。「ここであがれ」と書かれており、浮上するとおふれの石室に至る。
レジギガスが「引っ張った」大陸の行方
本考察で立てた仮説のように「ナナシマからホウエンにレジギガスが大陸を引っ張った」のだとすると、その大陸は現在のホウエン地方のどこに存在するのだろうか。この点についても、その根拠となりうる知見や物証は確認されていない。レジギガスが大陸を引っ張ったとき、その経路は海であったのか、あるいは陸であったのか。「引っ張った大陸」と「砂漠遺跡」、「小島の横穴」、「古代塚」に関係があるのかについても、今後新しい情報が解禁されれば関連付けて考えることができるかもしれない。
ともしび山、「ルビー」、「サファイア」について
ナナシマの点字文明については、点の穴については本考察で言及してきた。しかし、1の島のともしび山に記された点字については不明である。ナナシマにおいては1の島(ともしび山)と6の島(点の穴)に点字文明が存在した後が確認できるが、ともしび山と点の穴を関連付ける証拠は見つかっていない。強いて記述するならば「ルビー」と「サファイア」の2つの石であるが、これらの石が点字文明においてどのような位置付けのものであったのかは不明瞭である。点の穴に記されている、「ひかり かがやく ふたつの いし ひとつわ あかく ひとつわ あおく ふたつ ちからで かこがつながり ふたつのちからで ひかり かがやく そして あたらしい せかいが みえてくる つぎの せかいを つくるのは あなただ もー はじまっている」(文3 B) とはどういう意味だろうか。ファイアレッド、リーフグリーンの登場人物であるマサキとニシキはルビーとサファイア(「ひかり かがやく ふたつの いし」)を他の地方との通信のために利用したが、2つの石の、点字文明の古代人の利用法とはどのようなものだったのだろうか。ホウエン地方にはたいりくポケモン・グラードンとかいていポケモン・カイオーガに関与する「べにいろのたま」と「あいいろのたま」が存在する。ルビーとサファイアと関係があるかもしれない。
レジギガスの能力に関する謎
レジギガスにはレジロック、レジアイス、レジスチルを創り出したという伝説が残されている (文4 B, C)。前述したように、これは「レジギガスはアルセウス以外の生命を創り出す力を持った存在」であることを意味している。しかし、世界の万物を創造したのがアルセウスだとするならば、アルセウスは自身以外に生命を創り出す能力を持った存在を生み出すだろうか。本考察で仮定したように、レジギガスのこの能力がアルセウスとの対立要因であるのだとすれば、レジギガスを始めとした巨人達はアルセウスの天地創造によって誕生した存在ではない可能性が考えられる。
「レジ」の名を持つ巨人が宇宙から飛来した可能性
ポケモン図鑑の記述によれば、レジスチルの体を構成する金属は地球上には存在しない正体不明の物質であるという (文10 C)。地球上に存在しない物質が、一体どこから現れたのだろうか。1つの可能性は、レジスチル(もしくは、伝説でその材料とされたマグマ)が宇宙から飛来した可能性である。特にホウエン地方は隕石にまつわる話が多いため、太古に飛来した隕石に由来する可能性は十分に考えられる。また、同じくポケモン図鑑の記述によれば、レジロックの体は世界中のあらゆる地層から見つかる岩石で構成されているという (文10 A)。この記述は一見不可解に思えるが、「レジロックがあらゆる時代に世界を巡った」ということではなく「元々1つだったものが世界中に散っていった」と考えれば説明がつく。大気圏で砕け散った(破壊された)レジロックの体を構成する岩石(隕石、あるいはレジロック自身)が世界中に降り注いだとすれば、世界中のあらゆる地層からレジロックの体を構成する岩石が見つかったとしても不思議ではない。一方で、レジアイスが宇宙から飛来した可能性を示唆する知見は見つかっていない。レジアイスの体は南極と同じ氷で構成されており、氷河時代に作られたものであるという (文10 B)。この氷が地球外に由来するものなのか、あるいは地球に元々存在した水分子が結晶化したものなのかは不明である。しかし、レジアイスの体を構成する氷は炎やマグマでも溶かすことができないという知見も存在する (文10 B)。地球上にはそのような氷は存在しないと考えられるため(道具「とけないこおり」については詳細な性質が不明なため考慮しない)、レジアイスもまた宇宙から飛来した可能性があると考えられなくはない。また、レジギガスに関しても、レジギガスと宇宙を関連付ける知見は現在のところ見つかっていない。
A
ルビー、オメガルビー
むかし ひとに ふういんされた ポケモン。たたかいで からだが くずれると
じぶんで あたらしい いわを さがして なおすと いう。
からだを つくっている がんせきは すべて ちがう とちから
ほりだされた ものであると さいきんの けんきゅうで はんめいした。
ぜんしんが いわ。のうや しんぞうが みあたらない。
げんだいの さいしん かがくでも かいめい できないのだ。
エメラルド
ぜんしんが いわと いしで できた ポケモン。たたかいで
からだの いちぶが けずれてしまうが じぶんで あたらしい いわを つけて なおす。
ダイヤモンド、パール、プラチナ、ブラック、ホワイト、ブラック2、ホワイト2、X
ぜんしんが いわで できている。 たたかいで からだが かけても
いわを くっつけて なおしてしまう。
からだを つくっている がんせきと おなじ ものが
せかいじゅうの あらゆる ちそうで みつかっている。
B
ルビー、オメガルビー
ひょうがじだいに つくられた こおりの からだは
ほのおでも とかす ことが できない。マイナス 200どの れいきを あやつる。
マイナス200どの れいきが からだを つつむ。ちかづいた だけでも
こおりついて しまうぞ。マグマでも とけない こおりの からだを もつ。
からだを ちょうさした ところ なんきょくと
おなじ こおりで できている ことが はんめいした。
エメラルド
ぜんしんが なんきょくの こおりで できている。
けんきゅうしゃが ちょうさした けっか ひょうがきに つくられた こおり らしい。
ダイヤモンド、パール、プラチナ、ブラック、ホワイト、ブラック2、ホワイト2、Y
ひょうがきに できた こおりで からだが つくられている。
マイナス200どの れいきを あやつる。
ひょうがの なかで すうせんねん ねむっていたと いわれている。
マグマでも からだは とけない。
C
ルビー、オメガルビー
どんな きんぞくよりも かたい からだを もつ。からだの なかは
くうどうに なっているらしく たべている ものも わからない ポケモンだ。
むかし ひとによって ふういんされた ポケモン。からだを つくる きんぞくは
ちきゅうじょうに そんざいしない ぶっしつと かんがえられている。
どんな きんぞくよりも がんじょうな からだは
なんまんねんも ちていの あつりょくで かためられて できた。
エメラルド
あらゆる きんぞく よりも かたい からだ。からだの きんぞくは
かたい だけでは なく のびちぢみする しょうたい ふめいの ぶっしつ。
ダイヤモンド、パール、プラチナ、ブラック、ホワイト、ブラック2、ホワイト2、X
なんまんねんも ちかの あつりょくで きたえられた
きんぞくの ボディは きずひとつ つかない。
どんな きんぞく よりも かたいと いわれる からだ。
ちょうさの けっか からだの なかは くうどう だった。
文10. ポケモン図鑑に記載されているレジロック、レジアイス、レジスチルの説明
A. レジロックの図鑑説明。
B. レジアイスの図鑑説明。
C. レジスチルの図鑑説明。
点字文明が繁栄した時代は現代から何年昔の時代なのか
アンノーン文明が繁栄した時代については、アルフの遺跡が作られたのが1500年前とされていることからある程度予想がつく。一方で、点字文明が繁栄した時代についての詳細は明らかになっていない。ポケモン図鑑における、レジアイスの「ひょうがじだいに つくられた こおりの からだ」、「ひょうがの なかで すうせんねん ねむっていたと いわれている」や、レジスチルの「なんまんねんも ちかの あつりょくで きたえられた きんぞくの ボディ」という記述 (文10 B, C) はアンノーン文明よりも昔の時代を思わせる。しかし、これは「レジ」の名を持つポケモン達についての記述であり、ヒトの文明が繁栄した時代を推測するために使用できる情報ではない。「レジ」の名を持つポケモンについてはレジギガスに関する伝説と歴史上の事実の書き分けをしなければ、点字文明の正体は見えてこないだろう。あるいは、点字文明とその他の古代文明の関係が明らかになれば、新しい見解を示せるかもしれない。オメガルビー・アルファサファイアでは、ホウエン地方には「流星の民」と呼ばれる一族が存在することと、かつて古代カロス王朝の王であったAZによってルネシティに大木が贈られたことが明らかとなった。何らかの形で点字文明に関する知見が流星の民やカロス地方から見つかれば、点字文明の背景について新たに分かることがあるかもしれない。かつてホウエン地方を襲ったグラードンとカイオーガによる天変地異や、古代カロス王朝の戦争と関連があるかについても何か分かるかもしれない。
図9. 本考察で提唱した仮説に基づくポケモン世界の古代文明の相関図
本考察で提唱した仮説のまとめ図。へその岩のホウオウとルギアが同一個体であると仮定すれば、アンノーン文明の古代人はホウオウ、ルギアを追ってジョウト地方に移住したという可能性も考えられる。ジョウトからシンオウにアンノーン文明が伝播する際に、レジギガスに関する伝説が一緒に伝わった可能性も考えられる。しかし古代文明に関して明らかとなっている情報はまだまだ少ない。特にアルセウスを始めとしたシンオウ神話で有名なポケモンに関しては史実と伝説が混同されていることが予想される。第8世代以降で新たな情報が解禁されれば、新たな検証や本考察で提唱した仮説の再検証が行えるだろう。
「さいしょのもの」:シンオウ神話にて、世界の創造主(アルセウス)を示す表現
はじまりのま:やりのはしらで「てんかいのふえ」というアイテムを用いることで到達できるとされている、アルセウスが存在する場所。「てんかいのふえ」は第4世代の頃に配信される予定だったと言われているが、実際には行われなかった。このため、はじまりのまに正規の手段で到達する方法は存在しない。本図では、この理由から「はじまりのま」の名称には括弧をつけた。
【方法】
画像
本考察のゲーム画像は、全て筆者のROMを用いたプレイ画面を使用した。プレイ画面はiPhone 7のカメラを用いて撮影し、MacBook Airに取り込んだものを必要に応じて編集した。全ての画像編集及び図の作成は、Keynote (バージョン6.5.2) を使用して行った。
使用ROMと本体
カントー・ナナシマについてはファイアレッドを、ジョウトについてはクリスタル(VC)及びハートゴールドを、ホウエンについてはオメガルビーを、シンオウについてはダイヤモンドを使用した。各ROMの起動には、ファイアレッド及びダイヤモンドはニンテンドーDS Liteを、クリスタル及びハートゴールド、オメガルビーはニンテンドー3DS LLを使用した。
ゲーム中の記述(遺跡の文章、ポケモン図鑑の説明文)
【参考・引用文献】に示す1から3を参照した。英語版の文章については、4を参照した。
「世代」の区分
本考察では、バージョン(赤・緑など)を「世代」で区分した。赤・緑、青、ピカチュウを第1世代(初代)、金・銀、クリスタルを第2世代、ルビー・サファイア、ファイアレッド・リーフグリーン、エメラルドを第3世代、ダイヤモンド・パール、プラチナ、ハートゴールド・ソウルシルバーを第4世代、ブラック・ホワイト、ブラック2・ホワイト2を第5世代、X・Y、オメガルビー・アルファサファイアを第6世代、サン・ムーン、ウルトラサン・ウルトラムーンを第7世代とした。
【謝辞】
本考察に関して、情報提供や貴重なご意見を賜った方に感謝の意を示します。
【参考・引用文献】
- ポケモンwiki:https://wiki.ポケモン.com/wiki/
- ポケモンだいすきクラブ・ポケモンずかん:http://www.pokemon.jp/zukan/
- ピクシブ百科事典:https://dic.pixiv.net/a/
- BULBAPEDIA:https://bulbapedia.bulbagarden.net/wiki/