#3. “マルウェア” ポリゴンの脅威
@lkm_mm
【概要】
バーチャルポケモン(旧・シージーポケモン)・ポリゴンは、人間の科学力によって創り出された人工のポケモンである。ポケモングッズのメーカーとして有名な企業であるシルフカンパニーによって開発されたポケモンで、第1世代(初代)においてはタマムシシティのゲームコーナー(ロケットゲームコーナー)の景品として入手できる。しかし、第1世代のゲームコーナーは悪の組織・ロケット団が運営していたことから、ポリゴンがシルフカンパニーからロケット団へと流れていた可能性が示唆されていた。本考察ではロケット団とシルフカンパニーの関係性について記述し、ロケット団がポリゴンの技術を完全掌握していた場合の脅威について考察する。
【背景】
ポリゴンは、シルフカンパニーで開発された人工のポケモンである。サン・ムーン(第7世代)の時代から20年前に開発されたポケモンで、電脳空間での活動が可能とされる (文1 B, G, H, I, K)。カントー地方・タマムシシティのゲームコーナーではコインと交換できる景品の1つである(必要な枚数はバージョンによって異なる)が、いくつかのバージョンでは野生で出現する場合もある。
ロケット団は赤・緑、青、ピカチュウ版(第1世代)、金・銀、クリスタル(第2世代)、ハートゴールド・ソウルシルバー(第4世代)で登場する悪の組織である。第1世代においては数多くの悪事を働いており、盗掘や窃盗、ポケモンの乱獲や殺害まで行っている。第1世代ではタマムシシティのゲームコーナーの地下にアジトを持ち、ゲームコーナーのポスターの裏に存在するスイッチを押すことで地下への階段が現れる。本編では、アジトの地下4階で組織のボスであるサカキとの戦闘になる。戦闘に勝利するとシルフスコープという道具が手に入るが、この道具は第1世代時点では発売日未定の新製品(シルフカンパニー製)である。ポリゴンとシルフスコープの件はロケット団とシルフカンパニー(カントー地方・ヤマブキシティに本社を持つポケモングッズのメーカー)の関係を示唆するものであり、シルフの製品がロケット団側に流れていることが予想されるものとなっている。本編ではその後、ロケット団はシルフ本社を占拠する。その狙いはポケモンを必ず捕獲できるモンスターボールであるマスターボールと考えられているが、真相は明らかではない。社長室ではサカキとシルフカンパニーの社長が「仕事の話」をしていたようだが、その内容も不明である。
本考察では、ロケット団がシルフカンパニーを完全に乗っ取り、ポリゴンの技術を完全掌握した場合に考えられる脅威について考察する。
A
赤・緑、ファイアレッド
さいこうの かがくりょくを つかい ついに じんこうの ポケモンを つくることに せいこうした。
B
青、リーフグリーン
からだが プログラムで できている。でんしくうかんを じゆうじざいに いどうできる のうりょくをもつ。
C
ゆいいつ うちゅうまで とんでいける ポケモンと きたい されているが いまだに せいこうれいは ない。
D
金、ハートゴールド
こきゅうを していないので どんなところでも かつやく できると きたいされる じんこうの ポケモン。
E
銀、ソウルシルバー
けんきゅうのすえ うみだされた じんこうの ポケモン。きほんてきな どうさしか プログラムされていない。
F
クリスタル、X・Y
ポケモンけんきゅう のため うみだされた じんこうの ポケモン。プログラムにない うごきはできない。
G
ルビー・サファイア、エメラルド、オメガルビー・アルファサファイア
ぜんしんを プログラム データに もどして でんし くうかんに はいる ことが できる。コピーガードされて いるので コピー できない。
H
せかいで はじめて じんこうてきに つくりだされた ポケモン。でんしくうかんを いどうできる。
I
プラチナ、ブラック・ホワイト、ブラック2・ホワイト2
さいこうの かがくりょくで うみだされた じんこうの ポケモン。でんしくうかんを いどうできる。
J
サン
およそ 20ねんまえに とうじの かがくりょくを けっしゅうし うみだされた じんこうの ポケモン。
K
ムーン
からだを デジタルデータか することが できるので でんのう くうかんに はいりこむことが できるのだ。
L
ウルトラサン
やく20ねんまえの かがくりょくで うみだされた ポケモンなので いまや じだいおくれな ぶぶんも おおい。
M
ウルトラムーン
20ねんまえ うちゅうを ゆめみた かがくしゃたちに よって つくられた。 いまだ そのゆめは かなっていない。
文1. 各バージョンにおけるポリゴンの図鑑説明
A-M. ポケモン図鑑におけるポリゴンの説明文。ポリゴンは、近年のプログラミング技術を用いて創り出されたと思われる。自身を自在に実体化、及び電子データ化することが可能なようで、電脳空間での活動を行うことができる。第7世代では、サン・ムーン及びウルトラサン・ウルトラムーンの時系列より20年前に開発されたことが記載されており、使われている技術は古いものとなってきていることが明らかとなった。また、ポリゴンは宇宙空間での活動を目的に開発されたことも示唆されている(ピカチュウ版及びサン・ムーン、ウルトラサン・ウルトラムーン)。また、第1世代から3年後の世界である第2世代ではポリゴンの進化系であるバーチャルポケモン・ポリゴン2が登場したが、ポケモン図鑑にはポリゴン2は惑星開発を目的としてアップデート(バージョンアップ)された旨が記載されている(ポリゴン2の図鑑説明)。
【知見と考察】
ポリゴンはポケモンあずかりシステムに対する脅威となった可能性がある
ポケモンあずかりシステムはポケモンマニアとして知られるマサキという男によって開発されたシステムである。所有しているポケモンをパソコン通信で預けることが可能で、多くのポケモントレーナーが利用するシステムとなっている。マサキはカントー地方及びジョウト地方のあずかりシステムの管理人でもある。
ロケット団がシルフカンパニーを制圧した場合、ポリゴンを使ったサイバーテロが起こる可能性が懸念される。ポケモン図鑑によれば、ポリゴンは電子空間内を自在に動き回ることができる (文1 B, G, H, I, K)。また、電子空間以外にも人間の活動が難しい空間(大気が存在しない宇宙空間等)での活躍も見込まれている (文1 C, D, M)。宇宙空間での活躍は難しいようだが (文1 C, M)、電子空間においてはどうだろうか。ポリゴンはプログラムされた動作しかできない (文1 D-F) と記述されているが、逆に言えばプログラムされた動作ならば何でもできるということである。仮に「あずかりシステムを攻撃する」という命令が組み込まれた場合、ポリゴンはポケモンあずかりシステムを制圧できる可能性がある。そのようなことが起こった場合、あずかりシステムに預けられているポケモンはロケット団の手に落ち、元のトレーナーはポケモンを引き出すことができない(ロケット団に奪われる)という事態に陥る危険性がある。また、モンスターボールの電子制御機構が失われる可能性も考えられる。その場合、ポケモントレーナーは自身の手持ちをボールから出す、あるいはボールに戻すことが行えなくなり、戦うための手段を失うことになる。
余談だが、ブラック・ホワイト(イッシュ地方)における悪の組織であるプラズマ団(※)はポケモンあずかりシステムに不正アクセスを試み、これに成功している(その目的である「人間に所有されているポケモンの解放」は未遂に終わった)。このようなハッカーの手による不正アクセスは出処を押さえられるかもしれないが、電子化と実体化を自在に行えるポリゴンの場合、被害はハッカーの比ではないと予想される。ポリゴンにはコピーガードがかけられている (文1 G) というが、電子空間内での複製によって自己増殖できるようになったとすれば、ポリゴンのマルウェア(コンピューターウイルス)としての脅威はさらに増すだろう。AIを搭載したポリゴン2 (文2 D, I) が使われたとすれば、何が起こるかは使用者(ロケット団)にすら予想できないかもしれない。
※ プラズマ団における真の悪は、プラズマ団七賢人の1人であるゲーチスの抱く野望(全てのポケモンの独占)に集約される。プラズマ団が掲げる「人間からのポケモンの解放」はゲーチスにとっては独占のための手段であるが、多くのプラズマ団員にとっては「ポケモンを人間の支配から解き放つ」という正義である。ブラック・ホワイト本編から2年後のブラック2・ホワイト2ではプラズマ団がN派とアクロマ派に分裂したことを踏まえると、プラズマ団を「悪の組織」と断言することには語弊があるとも言える。
A
わくせい かいはつが できるよう ポリゴンを バージョンアップしたが まだ そらも とべない。
B
さらに けんきゅうが すすめられ のうりょくが たかまった。ときどき プログラムにない しぐさを みせる。
C
クリスタル
さいしんかがくで しんかした じんこうの ポケモン。ときどき プログラムにない はんのうをみせる。
D
にんげんが かがくの ちからで つくりだした。じんこう ちのうを もたせたので あたらしい しぐさや かんじょうを ひとりで おぼえていく。
E
わくせいかいはつようの プログラムが インストールされている。 しんくうの うちゅうでも かつどうできるのだ。
F
プラチナ、ブラック・ホワイト、ブラック2・ホワイト2
わくせい かいはつが できるように バージョンアップ されたのだが まだまだ むずかしかった ようだ。
G
サン
わくせい かいはつを しやに いれ とうじの さいしん ぎじゅつで ポリゴンを アップデートしたのだ。
H
ムーン
わくせい かいはつを もくひょうに ポリゴンを バージョンアップしたが まだまだ ゆめには とどかない。
I
ウルトラサン
AIを とうさい。 じりきで さまざまなことを まなんでいくが よけいなことまで おぼえだす。
J
ウルトラムーン
うちゅうくうかん でも しなないが むじゅうりょく では うまく みうごきを とることが できない。
文2. 各バージョンにおけるポリゴン2の図鑑説明
A-J. ポケモン図鑑におけるポリゴン2の説明文。ポリゴン開発時に目的とされていた宇宙空間での活動のためのアップデートが施されていることが伺える。AIが搭載されたことで自己学習能力を得たようだが、余計なことを覚えるなどまだまだ問題が多いようである。さらに、空を飛べないことや重力制御を行えないことが惑星開発に向けた課題として残されているらしい。
【余談】
ここでは、ロケット団がシルフカンパニーを乗っ取ることで起こり得ること、及びポリゴン2の進化系であるバーチャルポケモン・ポリゴンZについて記述する。
物資供給の途絶と「独占」が起こる可能性
前述のように、シルフカンパニーはポケモングッズのメーカーである。ロケット団がその本社を乗っ取った場合、ポケモントレーナーにとって重要な道具が供給されなくなる可能性が高い。シルフカンパニー以外のポケモングッズのメーカーにどのような企業があるかは定かでないが、市場操作や「独占」(文字通り道具を独り占めするということ、および市場を支配することの2通りの意味)が懸念される。そして、ロケット団への製品及び技術の流出は加速していったと考えられる。第1世代本編ではシルフスコープ(製品)がロケット団の手に渡っていた。また、第2世代のロケット団アジト(ジョウト地方・チョウジタウン)にはワープパネルが設置されていた。ワープパネルはシルフカンパニー本社で使われている技術であり、チョウジタウンのアジトのワープパネルは流出したシルフの技術が使われたものと予測される。例えば、シルフカンパニーが製作技術を持つと思われるマスターボールがロケット団の手に渡ってしまえば、ポケモンの乱獲はさらに加速していっただろう。
「あやしいパッチ」の開発者
あやしいパッチは、ポリゴン2をポリゴンZに進化させるために必要なアイテムである。道具の説明によれば、あやしいパッチには情報(製作者不明)が組み込まれているという (文3)。その情報はポリゴン(ポリゴン2)を異次元空間で活動させられるようにするためのもののようだが (文4 B, C, E)、進化形のポリゴンZはおかしな挙動を示すようになってしまったらしい (文4 A, D, E, F, G)。さらにはプログラムにミスがあることや技術者の腕が未熟であった旨まで記述されている (文4 C, D, F, G)。これらの記述やあやしいパッチの説明文 (文3) を踏まえると、ポリゴンZはシルフカンパニーによって開発されたポケモンではなく、別の技術者が生み出した存在である可能性が示唆される。シルフカンパニーが実験失敗とまで言われるポケモン (文4 G) を世に出すとは考えづらい。あやしいパッチを作製し、ポリゴンZを生み出したのは誰なのだろうか。この道具は第4世代で初登場した道具であり、ダイヤモンド・パールでは225番道路で入手できる。注目すべきはプラチナでの入手場所であり、225番道路からギンガ団アジトに変更されている。さらに、プラチナではトバリシティのギンガ団アジトの近くにある民家でポリゴンをもらうことができる。この際、ギンガ団アジト周辺にいたところを保護したという話を聞くことができるが、これは保護されたポリゴンがギンガ団アジトから逃げ出した可能性を示唆するものである。ポリゴンとギンガ団は関係があるのだろうか。ここで、ポリゴンZの図鑑説明 (文4) に注目する。ポリゴンZは異次元空間での活動を目的として創られたこと (文4 B, C, E) は前述の通りだが、ギンガ団(ボスのアカギ)が求めたじかんポケモン・ディアルガ、くうかんポケモン・パルキアは異次元空間から呼び出されたポケモンである。また、プラチナではプルートという科学者の老人がギンガ団団員として登場するが、彼は「自称」天才科学者でありギンガ団内での人望も薄いように思われる。これらの点を踏まえて考えると、ポリゴンZはギンガ団のプルートが創り出した存在である可能性が示唆される。彼はディアルガ及びパルキアの世界へ干渉しようとして失敗したのかもしれない。または、はんこつポケモン・ギラティナが潜む「やぶれたせかい」やアルセウスが眠る「はじまりのま」への干渉も視野に入れていた可能性も考えられる。
文3. あやしいパッチの道具説明
なかに あやしい じょうほうが つまった とうめいな きかい。せいさくしゃは ふめい。
A
より すぐれた ポケモンに するため プログラムを ついかしたが なぜか おかしな こうどうを はじめた。
B
プラチナ、ブラック・ホワイト、ブラック2・ホワイト2
いじげんでも かつやく できるよう プログラムを しゅうせい したが ねらいどおりには いかなかった。
C
いじげん くうかんを じゆうに いどうできるように プログラムを しゅうせいしたが ミスした らしい。
D
サン
さらに すぐれた ポケモンを めざし ついかした プログラムに ふぐあいが あったらしく うごきが おかしい。
E
ムーン
いじげんくうかんでの かつどうを めざし プログラムを こうしんしたが おかしな きょどうが めだつ。
F
ウルトラサン
ふあんていな きょどうが めだつ。 プログラムを アップデートした ぎじゅつしゃの うでの せいらしい。
G
ウルトラムーン
ついかした プログラムが まずかった。 おかしな きょどうが めだつので じっけんしっぱい なのかも しれない。
文4. 各バージョンにおけるポリゴンZの図鑑説明
A-G. ポケモン図鑑におけるポリゴンZの説明文。進化したポケモンの挙動やあやしいパッチの説明を踏まえて考えると、シルフカンパニーによるアップデートではない可能性が考えられる。
【方法】
ゲーム中の記述(ポケモン図鑑の説明文)
【参考・引用文献】に示す1を参照した。
「世代」の区分
本考察では、バージョン(赤・緑など)を「世代」で区分した。赤・緑、青、ピカチュウを第1世代(初代)、金・銀、クリスタルを第2世代、ルビー・サファイア、ファイアレッド・リーフグリーン、エメラルドを第3世代、ダイヤモンド・パール、プラチナ、ハートゴールド・ソウルシルバーを第4世代、ブラック・ホワイト、ブラック2・ホワイト2を第5世代、X・Y、オメガルビー・アルファサファイアを第6世代、サン・ムーン、ウルトラサン・ウルトラムーンを第7世代とした。
【参考・引用文献】