UNRIPE

ポケモンに関する、Twitter (@lkm_mm) 上で吐き出した妄想をまとめていきます。

#5. ミュウツーに起因する各地への影響とそれらを取り巻く人々

@lkm_mm

 

以前「こんな考察を書こうと思っています」と言ったのですが、その第1弾です(以下の記事を参照)。気づけばそれから約4ヶ月、#4.の記事を書いてからは半年と少し経過していましたね。。

Let's GO!ピカチュウ・Let's GO!イーブイ発売直前となってしまいました。

その前に、第7世代までの内容で考えたことを一度公開します。

抜け漏れや再考の余地がある部分、おかしな部分はそれなりに見つかってくる気がしていますが…(そのうちアップデートしようと考えています)。

lkmmmigapkmn.hatenablog.com

 

各所で考えられていた仮説を反芻してみたのと、それっぽいストーリーを無理やり作り上げようとした…というのが正しいのかもしれません。

 

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【概要】

 いでんしポケモンミュウツーは第1世代(初代;赤・緑、青、ピカチュウ)で登場した伝説のポケモンである。第1世代ではその存在がグレンタウンに存在する廃墟であるポケモンやしきで初めて示唆され、その後殿堂入りを経てハナダのどうくつ(ななしのどうくつ)の最奥部に到達することで遭遇することができる。ポケモンやしきに残されている日記やポケモン図鑑の記述よりミュウツーは人工的に創り出されたポケモンであるとされ、その開発にはフジはかせと呼ばれる人物が深く関与することが示唆されている。近年ではカロス地方(第6世代)のポケモンのむらに存在する洞窟であるななしのどうくつに出現したほか、アローラ地方(第7世代;ウルトラサン・ウルトラムーン)に現れた組織であるレインボーロケット団のサカキの手持ちとしても登場した。しかし、ミュウツーカロス地方やサカキとどのような関係があるかについては描写が存在せず、その詳細は不明である。本考察では、第1世代から第7世代までの物語から明らかになっている事実・証言を中心としてミュウツーと人々の関係、及びそれらの人々が与えた影響について仮説を提唱する。

 

【背景】

 カントー地方・グレンタウンには、ポケモンやしき(以降、「ポケモン屋敷」と表記)と呼ばれる廃墟が存在する。そこにはかつて、グレンタウンに存在する研究所であるグレンラボラトリー(ポケモンけんきゅうじょ、ポケモンラボとも呼ばれる)の創設者であるフジはかせ(以降、「フジ博士」と表記)が住んでおり、ポケモンについての研究を行っていたと言われている。ポケモン屋敷にはフジ博士のものと思われる日記が残されており、しんしゅポケモン・ミュウの発見やいでんしポケモンミュウツーの誕生についての記録を確認することができる (文1 A)。この日記とポケモン図鑑の記述 (文1 B) より、ミュウツーはミュウの子供の遺伝子を操作することで創り出された人工のポケモンであると推測されていた。

 第3世代の作品であるエメラルドでは、ふるびたかいず(以降、「古びた海図」と表記)という配信アイテムを用いることでさいはてのことう(以降、「最果ての孤島」と表記)に行くことができる。この島にはミュウが存在し、島の奥へと進むことで遭遇することができる。さらに、島のはずれには古い書き置き (文2) が残されている。この文の末尾には「…ジ」という、名前と思われる記述が存在する。これは前述したフジ博士の名前の一部である「ジ」であるという推測がなされ、書き置きの内容、島にはミュウがいたこと、ポケモン屋敷の日記、ポケモン図鑑の記述等を総合して「ミュウツーを創り出した研究者はフジ博士である」と考察されるに至った。また、不明瞭な経歴と「フジ」という名前から、ミュウツーを創り出した「フジ博士」とはシオンタウンで慈善活動を行う人物である「フジろうじん」(以降、「フジ老人」と表記)と同一人物であるという見解がなされてきた。

 ゲーム本編外ではあるが、この仮説には第6世代の作品であるX・Yの発売直前に進展があった。X・Yの発売を記念して放送された特別アニメである「ポケットモンスター THE ORIGIN」に登場したフジ老人は、自らがミュウツーを創り出した人物であることを示唆する発言をした。ゲーム本編においては第7世代現在に至るまでフジ老人がミュウツーを創り出した人物であるということは直接語られていないが、「THE ORIGIN」のフジ老人の発言は、ゲーム本編においても「フジ老人とフジ博士が同一人物であり、ミュウツーを創り出した人物である」可能性を高いものとしたと言える(これらについては、さらに詳細を後述する)。

 以降の記述ではミュウツーとの関連が示唆される人々や組織、事柄について述べるとともに、それぞれの関係から導き出される可能性について考えていく。

 

A

にっき 7がつ5か ここは みなみアメリカの ギアナ ジャングルの おくちで しんしゅの ポケモン はっけん

にっき 7がつ10か しんはっけんの ポケモン わたしは ミュウと なづけた

にっき 2がつ6か ミュウが こどもを うむ うまれた ばかりの ジュニアを ミュウツー よぶことに……

にっき 9がつ1にち ポケモン ミュウツー つよすぎる ダメだ…… わたしの てには おえない!

 

B

 赤・緑、ファイアレッド

けんきゅうの ために いでんしを どんどん くみかえていった けっか きょうぼうな ポケモン なった。

 

青、リーフグリーンX

ひとりの かがくしゃが なんねんも おそろしい いでんし けんきゅうを つづけた けっか たんじょうした。

 

ピカチュウ

ミュウの いでんしと ほとんど おなじ。だが おおきさも せいかくも おそろしいほど ちがっている。

 

,ハートゴールド

きょくげんまで せんとうのうりょくを たかめられたため めのまえの てきを たおすことしか かんがえなくなった。

 

銀、ソウルシルバー

たたかいで ちからを さいだいげんに だせるように ふだんは すこしも うごかず エネルギーをためている。

 

クリスタル

たたかいの ためだけに うみだされ いまは どこかの どうくつふかくで ねむっていると いわれる。

 

ルビー・サファイア・エメラルド、オメガルビーアルファサファイア

いでんしそうさに よって つくられた ポケモン。にんげんの かがくりょくで からだは つくれても やさしい こころを つくることは できなかった。

 

ダイヤモンド・パール・プラチナ、ブラック・ホワイト、ブラック2・ホワイト2Y

ミュウの いでんしを くみかえて うみだされた。 ポケモン いちばん きょうぼうな こころを もつという。

 

1. ミュウツーに関して明らかとなっている知見

A. カントー地方・グレンタウンのポケモン屋敷に残された日記。ミュウの発見とミュウツー誕生に関する記録が残されている。

B. ポケモン図鑑におけるミュウツーの頁。

 

 

A

なんねんも まえに かかれたような

ふるい かきおきが ある‥‥

 

……がつ 6

ここに たちいる にんげ……

ふたたび ……らわれると すれば

こころ やさし…………で あらんことを

…………こに その ねがいを しるし

この ……を あとにする

……ジ

 

B

The writing is fading as if it was written a long time ago…

 

“…ber, 6th day

If any human…sets foot here…

again…et it be a kindhearted pers…

ith that hope, I depar…”

 

2. ミュウと関係がある人物が残したと考えられる書き置き

A. 最果ての孤島に残された古い書き置き (日本語)。

B. 最果ての孤島に残された古い書き置き (英語)。

 

【仮説の提唱とその根拠】

 フジ博士(フジ老人)以外でミュウツーとの関連が示唆される人物や組織、事柄にはどのようなものが存在するだろうか。ゲーム本編においては、第7世代の作品であるウルトラサン・ウルトラムーンに登場する組織であるレインボーロケット団が暗躍するまでその存在を示唆する描写は他に存在しなかった(後述)。本考察ではまず、(i) 本編に登場したロケット団以外の組織が伝説のポケモンを求めていたこと、(ii) 1998年に公開された、劇場版ポケットモンスターの第1作である「ミュウツーの逆襲」においてはミュウツーロケット団には接点が存在したこと、(iii) レインボーロケット団のボスであったサカキがミュウツーを手持ちに加えていたこと、の3点に着目し、ゲーム本編においてもロケット団ミュウツーに関連があり得たかについて考えていく。

 

ロケット団について

 ロケット団は、第1世代(初代)で登場した悪の組織である。第1世代の作品である赤・緑、青、ピカチュウ及び赤・緑のリメイク版であるファイアレッドリーフグリーン(第3世代)ではカントー地方で暗躍し、窃盗(ハナダシティの民家における、わざマシン28 “あなをほる” の盗難)やポケモンの乱獲(シオンタウン付近(ポケモンタワーとも考えられる)でのこどくポケモン・カラカラの狩猟)、ポケモン関連のグッズを扱う企業の本社襲撃(ヤマブキシティシルフカンパニー本社ビルの占拠)といった悪事を働いた。ロケット団は主人公の活躍によって解散するが、その3年後の世界が舞台である金・銀、クリスタル(第2世代;ジョウト地方)及び金・銀のリメイク版であるハートゴールドソウルシルバー(第4世代;ジョウト地方)ではその残党が団の復活を目的として暗躍した。

 カントー地方で暗躍していた頃のロケット団は、ボスであるサカキのもと、ポケモンを使った金儲け及び世界征服を目的に行動していたとされる。そのため、ロケット団のターゲットとなるポケモンや物品は多岐に渡ると予想され、必ずしも特定の目標が狙われているとは言えなかった。

 

ロケット団以外の組織は野望達成のために伝説のポケモンの力を欲した

 第3世代以降に登場する(悪の)組織は、組織(ボス、主犯格)の野望を実現させるために伝説のポケモンを手にいれることを画策していた。ルビー・サファイア、エメラルド(第3世代;ホウエン地方)、及びルビー・サファイアのリメイク版であるオメガルビーアルファサファイア(第6世代;ホウエン地方)に登場する組織であるマグマ団とアクア団(ルビー及びオメガルビーではマグマ団が、サファイア及びアルファサファイアではアクア団が主人公と対立する組織で、もう一方の組織は主人公と部分的な協力関係にある。エメラルドでは両組織とも主人公と対立する)は、マグマ団がたいりくポケモングラードンを、アクア団がかいていポケモンカイオーガを求めていた。そして、マグマ団は世界の陸地を広げることを、アクア団は世界の海を広げることを目的としていた。ダイヤモンド・パール、プラチナ(第4世代;シンオウ地方)に登場する組織であるギンガ団は、ボスであるアカギが考える「心が存在しない完全な世界」を創造するために、ダイヤモンドではじかんポケモンディアルガを、パールではくうかんポケモンパルキアを、プラチナではディアルガパルキアの両方を求めていた。ブラック・ホワイト(第5世代;イッシュ地方)に登場する組織であるプラズマ団は、イッシュ地方の伝説に登場するドラゴンであるこくいんポケモンゼクロム(ブラック)、はくようポケモン・レシラム(ホワイト)を利用して人間とポケモンを引き離そうと目論んだ(組織としては「人間からのポケモンの解放」が目的だったが、この目的の先にはプラズマ団七賢人(幹部のような役職に就く7人の知識人)の1人であるゲーチス(実質的なボス)の「ポケモンの独占」という野望が存在した)。ブラック・ホワイトから2年後のイッシュ地方が舞台であるブラック2・ホワイト2(第5世代)では2つの派閥に分裂したプラズマ団が登場するが、このうちゲーチスに賛同した派閥(もう一方は、ブラック・ホワイトで「プラズマ団の王」であったNに賛同した派閥)はきょうかいポケモンキュレムを求め、イッシュ地方の征服を企んだ。X・Y(第6世代;カロス地方)に登場する組織であるフレア団は「争いのない美しい世界」を実現するために、Xではせいめいポケモン・ゼルネアスの力を、Yでははかいポケモンイベルタルの力を利用して、約3000年前にカロス地方の戦争を終わらせた「最終兵器」を起動することで自分達以外の人間やポケモンの命を奪おうとした。サン・ムーン(第7世代;アローラ地方)に登場するエーテル財団の代表であるルザミーネは、一部の財団職員とならずもの集団であるスカル団を利用して、ウルトラビーストと呼ばれる異世界ポケモンを我が物にしようとせいうんポケモンコスモッグの力を悪用した(コスモッグはげんしせいポケモンコスモウムを経た後ににちりんポケモンソルガレオ、またはがちりんポケモンルナアーラに進化する伝説のポケモンである)。サン・ムーンとは異なるアローラ地方が舞台であるウルトラサン・ウルトラムーン(第7世代;アローラ地方)でもルザミーネコスモッグの力を利用するが、こちらではプリズムポケモンネクロズマの別世界からの侵攻を阻止することが目的となっていた。このように、第3世代以降に登場した組織は少なからず伝説のポケモンに関与し、その力を利用することで目的・野望の達成を試みている(スカル団エーテル財団に手を貸していただけであるため、スカル団自体は目的達成のために伝説のポケモンを利用していない。ただし前述の通り、エーテル財団を介して伝説のポケモンに関与はしている)。一方でロケット団は第1世代から第7世代の作品であるサン・ムーンまで、伝説のポケモンとの接点が歴代で唯一確認されていない組織であった。

 

レインボーロケット団のサカキはミュウツーを所持していた

 サン・ムーンの次の作品であるウルトラサン・ウルトラムーンでは、「レインボーロケット団」と呼ばれる、サカキが率いる組織が登場した。このサカキは平行世界から来た人間であり、同じく平行世界から来た他の悪の組織のボス(マグマ団ボス・マツブサ、アクア団ボス・アオギリ、ギンガ団ボス・アカギ、プラズマ団七賢人(実質的なボス)・ゲーチスフレア団ボス・フラダリ)と共にレインボーロケット団を結成していた。歴代のボス達は平行世界で野望を達成した人物であり、そのボスと関わりがあった伝説のポケモンを手持ちに加えていた(マツブサグラードンアオギリカイオーガ、アカギはディアルガ(ウルトラサン)またはパルキア(ウルトラムーン)、ゲーチスゼクロム(ウルトラサン)またはレシラム(ウルトラムーン)、フラダリはゼルネアス(ウルトラサン)またはイベルタル(ウルトラムーン)を使用)。前述の通り、ゲーム本編において、サカキ(ロケット団)はこれまで伝説のポケモンとの接点が描写されなかった。しかし、レインボーロケット団におけるサカキはミュウツーを手持ちに加えており、ウルトラサンではメガミュウツーXに、ウルトラムーンではメガミュウツーYメガシンカさせることまで行った。何故サカキの手持ちにミュウツーが加わっていたかについて、その詳細は不明である。ここからは、その理由について仮説を提唱する。

 

カントー地方におけるロケット団の出没ポイント

 仮説の提唱に先立ち、まずは第1世代(赤・緑、青、ピカチュウ)及び第3世代(ファイアレッドリーフグリーン;リメイク版)においてロケット団が登場した場所を確認する。主人公の旅路の中で、ロケット団はおつきみやま(以降、「おつきみ山」と表記)で最初に姿を現した。おつきみ山は、ニビシティとハナダシティの間に存在する山である。この山は珍しいポケモンであるようせいポケモン・ピッピが出現することで知られる山であるほか、ポケモンを進化させる石の1つであるつきのいしが見つかることでも有名である。また、ポケモンの化石が見つかる場所としても知られているようで、ニビシティの掲示板には化石泥棒が出没しているという情報も掲示されていた (図1A)。この化石泥棒の正体がロケット団であり、主人公はおつきみ山で化石を狙うロケット団と対峙することになる (図1B, C)。

 ロケット団はおつきみ山を越えた先の町であるハナダシティでも悪事を働いていた。ある民家はロケット団の団員による空き巣の被害に遭い、ポケモンに技を教える道具であるわざマシン(以降、「技マシン」と表記)を盗まれた (図1D-G)(この技マシンは「技マシン28」で、記録されている技は ”あなをほる” である)。また、ハナダシティの北側に位置する24番道路にもロケット団は潜んでいた。24番道路にはゴールデンボールブリッジと呼ばれる橋があり、そこでは5人のトレーナーとの勝ち抜き戦が行われていた(ただし、必ずしも連戦しなくてもよい)。これに勝ち抜けば6人目のトレーナーから道具きんのたまをもらえるが、この6人目はロケット団の団員であった。この団員は、バトルを勝ち抜いたトレーナーをロケット団にスカウトしていた (図1H)。

 さらに冒険を進めていくと、シオンタウンでロケット団の話を聞くことになる。ここでは、ロケット団はカラカラの狩猟を行っていたという。ポケモンセンターでは、とあるカラカラの母親であるほねずきポケモン・ガラガラがロケット団の手にかかり、命を奪われてしまったという話が聞ける。シオンタウンには、これらの悪行を見かねてロケット団に行動を慎むように直訴した人物がいた。その人物はフジという名の老人(フジろうじん;以降、「フジ老人」と表記)で、シオンタウンのボランティアハウスで人間に傷つけられたポケモンの保護を行っている人物として知られている。あるロケット団員によれば、フジ老人はロケット団のアジトに自ら赴いてきたという。しかし逆に軟禁され、ポケモンの墓地であるポケモンタワーの最上階に捕らえられてしまっていた(ストーリーの進行上、ポケモンタワーの最上階へ進むことができるのはタマムシシティのロケット団アジト攻略後である。ただし、道具「ピッピにんぎょう」を用いればこの限りではない)。

 タマムシシティにはロケットゲームコーナーと呼ばれるゲームコーナーが存在しており、コインゲームに夢中になる住人達が散見された。スロットで遊ぶ、とある人物からはロケットゲームコーナーはロケット団が経営する店であるという噂が聞ける。実際、このゲームコーナーの奥にはロケット団の団員がおり、この団員はポスターを監視しているという。実はこのポスターの下には秘密のスイッチが隠されており、それを押すと地下に広がるロケット団アジトへの階段が現れる。

 カントー地方中心の大都市であるヤマブキシティには、シルフカンパニーというポケモングッズを扱う企業の本社ビルが存在する。シルフカンパニーは未知の存在の正体を見通す道具であるシルフスコープや人工のポケモンであるバーチャルポケモン(旧:シージーポケモン)・ポリゴンの開発を行ったことで知られている。さらに、ポケモンを必ず捕獲できるモンスターボールであるマスターボールの開発を行っており、ロケット団はこれを狙って本社ビルを占拠したとも考えられていた (図2A)。ロケット団ボスのサカキはシルフの社長に対して何かの要求(おそらく、試作版マスターボールの譲渡 (図2B))をしていたようだが、主人公によってこの目論見は食い止められる。

 グレンタウンのジムを制覇し、最後のジムを制覇するために主人公は再びトキワシティへ赴く。トキワジムは長きに渡ってジムリーダーが不在という理由から閉鎖されていたが、ジムの目の前にいる人物によればリーダーが帰ってきたという。実はトキワジムのジムリーダーはサカキであり、サカキはトキワジムに潜伏しながら組織を立て直すことで力を失ったロケット団を再興しようと企んでいたのだった。しかし、ポケモンバトルに敗れたサカキは自らの敗北を認め、主人公にトキワジムの公認バッジであるグリーンバッジと技マシン27 “じわれ” を授ける。そして組織のトップとしての立場からロケット団を解散させ、自らもどこかへと姿を消す。 

 

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1. おつきみ山、ハナダシティ周辺で暗躍したロケット団

A. おつきみ山の化石泥棒についてを知らせるニビシティの看板。

B, C. おつきみ山に化石を探しに来たロケット団員。

D-F. 空き巣被害にあったハナダシティの民家。

G. ハナダシティの民家へ空き巣に入ったロケット団員。

H. 24番道路(ゴールデンボールブリッジ)で勧誘を行うロケット団員。

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2. ロケット団マスターボールを狙ってシルフカンパニー本社を占拠した

A. ロケット団のシルフ本社占拠の目的(予想)について話すシルフ社員。

B. シルフカンパニー社長とロケット団ボス・サカキの話し合いを邪魔されないように立ちはだかるロケット団員。

 

シオンタウンにおけるロケット団の暗躍とフジ老人

 これ以降、前項で記述したロケット団の暗躍がミュウツーと関連する可能性について考えていく。本考察ではまず、シオンタウンにおけるロケット団に着目する。前述の通り、第1世代、及び第3世代でのリメイク版の物語において、ロケット団は頭に被る骨を狙ってカラカラの狩猟を行っていた (図3A)。ロケット団の行動を見かねたフジ老人は自らロケット団の元へ赴き、そのような行動をやめるように説得を行ったとされる (文3B)。その結果、フジ老人はロケット団によってポケモンタワーの最上階に軟禁されてしまったが、ここで1つ疑問が生じる。ロケット団はフジ老人を追い返すのではなく、わざわざ軟禁したのである。さらに、ポケモンタワーの頂上にいる団員は自分達を倒さない限りフジ老人を助けることはできないという発言をすることから、フジ老人を解放する気がないということも伺える (図3B)。

 

フジ老人の経歴

 フジ老人が追い返されるわけではなく、軟禁されたことに理由はあるのだろうか。この点を考察するためにまず、フジ老人とはどのような人物なのかについて考えていく。フジ老人はシオンタウンのポケモンハウスというボランティア施設の管理人をしている人物である。人間に捨てられたポケモンの世話をしていおり、シオンタウンの住人からは心優しい人物として知られている (文3A)。しかし、あるシオンタウンの住人によれば、フジ老人はシオンタウンの出身ではないという (文3D)。フジ老人はどこから来たのだろうか。ファイアレッド・リーフフリーンでは、フジ老人の人間関係を垣間見ることができる。ファイアレッドリーフグリーンのグレンジムには、グレンジムジムリーダーであるカツラとフジ老人の写真が飾られている (図3C, 文3E)。「かたを くんで たのしそうに わらってる!」とも描写されることから、カツラとフジ老人は仲が良いと考えられる。

 フジ老人はグレンタウンと深い関わりがあったのだろうか。グレンタウンを散策していくと、「フジろうじん」とは記述されていないものの、「フジ」という名の人物の存在を知ることができる。グレンタウンはポケモン研究で有名な島として知られており (図3D)、グレンラボラトリー(ポケモンラボ;ポケモンけんきゅうじょ)という研究所が存在する。この研究所ではポケモンに関する研究が行われており、いでんしポケモンイーブイについて語る研究員 (図3E)や技マシン35 “ゆびをふる” をくれる研究 (図3F)が在籍する。大きな特徴はポケモンの化石を復元する技術を有することで、研究員の1人である「エラーイはかせ」に頼めば太古のポケモンを復活させてもらうことができる (図3G)。グレンラボラトリーの玄関付近には創設者の写真が飾られているが、この創設者こそが「フジ」という名の研究者(フジ博士)なのである (図3H)。

 グレンタウンには、着目すべき施設がもう一箇所存在する。ポケモン屋敷である。この屋敷は長い間無人であったことから荒れ果てた廃墟となっており、いつからか野生のポケモンが棲みつくようになったという (図3I)。前述したように、この屋敷にはある研究の記録が書かれた日記が残されている (文1 A)。これはフジ博士が残したミュウツー誕生の記録とされ、ミュウの発見からミュウツーが博士の手に負えなくなるまでが断片的に記されている。

 その後フジ博士がどうなったかについては明らかにされていなかったが、「ポケモン考察」という観点からは、「フジ」という名とポケモンの保護という慈善活動を行っているという点(ミュウツーを創り出してしまったことに対する罪滅ぼし、と解釈されてきた)から、「シオンタウンのフジ老人」は「ミュウツーを創り出したフジ博士」と同一人物ではないかとファン(プレイヤー)によって考察されるに至った。

 フジ老人に関する情報は第3世代で増加した。ファイアレッドリーフグリーンでグレンジムにカツラとフジ老人の写真が飾られていることについては前述した通りであるが、当該作品で登場した道具であるボイスチェッカーについても着目すべきである。この道具は主人公が冒険の中で出会う著名な人物に関する証言を記録する装置であるが、証言が記録される対象人物の中にはフジ老人もいる。これは、少なくともファイアレッドリーフグリーンにおいてはフジ老人が重要人物であることを示唆している。さらに、2005年に配信された道具である「ふるびたかいず」(以降、「古びた海図」と表記、エメラルドで受け取ることができた)を用いて訪れることができる「さいはてのことう」(以降、「最果ての孤島」)にも注目すべき情報が残されている。最果ての孤島は野生のミュウと出会うことができる島であるが、この島には古い書き置きが存在する (文2A)。この文は所々が薄れて読めなくなっているが、情報を補いながら推測すると、フジ博士が書き残した文章であると考えられている。また、この文章の英語版 (文2B)では、日本語では「…がつ」とされている部分が ”…ber” とされている。これは文章が書かれた日付が9月(September)、10月(October)、11月(November)、12月(December)のいずれかであることを示唆しており、ミュウツーが手に負えないことが記された日付が9月であること (文1 A) を考えると、こちらの日付も9月であるという見解がなされている。すなわち、ミュウツーが自身の手に負えなくなったことで、自らの研究が間違った方向に進んでいたことにようやく気がついたフジ博士が、古びた海図以外には載っていない島である(実際、最果ての孤島でマップを開いても地図中にこの島は表示されない)最果ての孤島にミュウを逃がし、文を書き残したというストーリーが見えてくる。その後はグレンタウンを去り、シオンタウンにて(罪滅ぼしのために)慈善活動を始めたと予想されている。

 この仮説はゲーム中で登場した断片的な情報から考察された仮説であったものの、フジ老人がフジ博士と同一人物であるということは直接語られてはいなかった。しかし2013年、X・Yの発売を記念して放送された特別アニメである「ポケットモンスター THE ORIGIN」でこの仮説の核心を突くとも言える描写がされ、フジ老人がミュウツーを創り出したことが直接示された。この描写は「ポケットモンスター THE ORIGIN」においてはフジ老人とフジ博士が同一人物であることを意味しており、ゲーム本編においてもフジ老人とフジ博士が同一人物である可能性を極めて高いものにしたと言える。

 

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3. フジ老人とグレンタウンの関連性

A. シオンタウンで暗躍するロケット団について語る人物。シオンタウン周辺では、ロケット団はカラカラを襲っていたらしい。

B. ポケモンタワー最上階でフジ老人を軟禁していたロケット団員。

C. グレンジムに飾られているカツラとフジ老人の2人が写った写真。

D. グレンタウンがポケモン研究の島であることを話す20番水道のトレーナー。

E, F. グレンラボラトリーの研究員。ポケモンの進化についてや、技について研究している研究員が在籍しているようだ。

G. ポケモンのカセキを復元してくれる研究員(エラーイはかせ)。

H. グレンラボラトリーの創設者であるフジ博士の写真。

I. ポケモン屋敷について話す20番水道のトレーナー。

 

 

A

なにを しているひと?

シオンタウン/おんなのこ

じいちゃん やさしいのよ! すてられたり かえなくなった ポケモンを あずかって せわ してるの

 

B

どんなひと?

ポケモンタワー/ロケットだん

この じいさん ロケットだん アジトに くるなり ポケモンを いじめたり ころしたり するなって うるさくて ここで おとなの はなし あいを してた ところだ!

 

C

どんなひと?

シオンタウン/ざっし

ごうか しょうひんが あたる! げっかん ポケモンの とも ビッグ・プレゼント! …おうぼ ほうほうは …あら きりとって ある! けんしょうが すき なのかな?

 

D

こんな うわさが…

シオンタウン/おじさん

きけば フジろうじんも もともとは この まちの しゅっしんでは ないらしいな

 

E

かぞくや ともだちは?

グレンじまジム/しゃしん

カツラと フジろうじんの しゃしんが ある! かたを くんで たのしそうに わらってる!

 

F

どんなひと?

グレンじま/ポケモンジャーナル

インタビューは にがての ようで ことわられて しまいましたが シオンの ひとたちに したわれる やさしそうな かた でした

 

G

フジから主人公へ

きみの ポケモン だけではなく みんなの ポケモンの しあわせ… どうか きみも いのって くれんか

 

3. ボイスチェッカーに記録されるフジ老人に関係する発言

A-G. フジ老人に関する発言集。ボイスチェッカーには、フジ老人の人物像が垣間見える発言が多く記録される。ポケモンジャーナルのインタビューには応じなかったということだが、これはここで言われているように単に苦手だからということなのだろうか。あるいは(何か理由があって)メディアを避けているということなのだろうか。

 

ロケット団はフジ老人を「かつてミュウツーを創り出した人物」として軟禁した可能性がある

 前述したフジ老人の経歴を踏まえて、ロケット団がフジ老人を軟禁した理由を考察する。仮にロケット団ミュウツーを我が物にしようとしていたのだとすると、ミュウツーを創り出した人物に接触を試みることは当然とも言える。ゲーム中では描写されていないが、ロケット団ミュウツーを手にいれるためにフジ老人を軟禁したとも考えられる。ロケット団が聞き出したかった内容は「手に負えなくなったミュウツーはどこへ行ったのか」、「オリジナルのミュウはどこへ行ったのか」、「ミュウツーはどのようにして創り出されたのか」等であることが予想されるほか、フジ老人にロケット団の研究に協力することを求めていた可能性も考えられる。もっとも、フジ老人の「ポケモンに非人道的な行いをするな」という主張に反発したというのも本当のことであろう (文3B)。

 

ロケット団はミュウの化石を探していた可能性がある

 シオンタウンでのフジ老人の軟禁以外に、ロケット団ミュウツーが関連付きそうな点はあるだろうか。本考察では次に、おつきみ山の化石に着目する。ロケット団は、おつきみ山でポケモンの化石を探していた (図1A-C)。ここでは、「化石」に着目して考察を行いたい。

 映画「ミュウツーの逆襲」においても、ミュウツーは人間の科学力で創り出されたポケモンとして登場した。当該作において注目すべき点は、ミュウツーが「ミュウの睫毛の化石」より得られた遺伝情報を元に創り出されている点である。これは、「ポケモンの化石(こうらポケモン・カブトの化石である『こうらのカセキ』やうずまきポケモンオムナイトの化石である『かいのカセキ』など)より得られた遺伝情報が古代のポケモンの復元に利用されている」という仮説と一致する(私は以前、この化石復元技術を開発・実用化したのはフジ博士であるという仮説を立てた)。仮にゲーム本編のロケット団がこの技術にも着目していたのだとすると、ロケット団がおつきみ山でポケモンの化石を狙っていた理由の解釈が少し変わってくる。ロケット団は、単に「珍しいからお金になる」という理由だけで化石を探していたわけではなかったのかもしれない。また、興味深いことに、ピカチュウ版のポケモン図鑑(ミュウの頁)ではミュウには体毛が存在すると記述されている (文4)。ミュウツーの逆襲の公開を記念して発売されたピカチュウ版でこのような記述が登場したことは、ゲーム本編の世界においてもミュウの睫毛の化石が存在するということを示唆し得るのかもしれない。

 

赤、緑、ファイアレッド

みなみアメリカに せいそくする ぜつめつしたはずの ポケモン。ちのうがたかく なんでも おぼえる。

 

青、リーフグリーン

いまでも まぼろし ポケモン いわれる。そのすがたを みたものは ぜんこくでも ほとんど いない。

 

ピカチュウ

けんびきょうで のぞいてみたら ひじょうに みじかくて ほそい こまやかな たいもうが はえていた。

 

金、ハートゴールド

きよらかな こころと つよく あいたいという きもちを もつと すがたを あらわすらしい。

 

銀、ソウルシルバーY

いでんしには すべての ポケモン じょうほうが ふくまれているので あらゆる わざが つかえるという。

 

クリスタル

すべての わざを おぼえるため ポケモン せんぞ ではないかと けんきゅうを はじめた ひともいる。

 

ルビー・サファイア・エメラルド、オメガルビーアルファサファイア

すべての ポケモン いでんしを もつと いう。じゆうじざいに すがたを けすことが できるので ひとに ちかづいても まったく きづかれない。

 

ダイヤモンド・パール・プラチナ、ブラック・ホワイト、ブラック2・ホワイト2X

あらゆる わざを つかうため ポケモン せんぞと かんがえる がくしゃが たくさん いる。

 

4. ポケモン図鑑に記述されているミュウの説明

ポケモン図鑑におけるミュウの頁。

 

ハナダシティの空き巣には明確な意図が存在した可能性がある

 前述した、ロケット団がおつきみ山でポケモンの化石を探していた理由についての仮説を考えるにあたっては、着目すべき事件が存在する。ニビシティ側からおつきみ山を抜けた先の町であるハナダシティでは、ある民家が空き巣被害にあっていた (図1D-F)。この犯人はロケット団の団員であるが、この団員が盗んだものは技マシン28 “あなをほる” であった (図1G)。ロケット団ポケモンに穴を掘らせる必要があったのかと考えると、これはおつきみ山の化石と結びつく。この事件は、おつきみ山において「ポケモンの化石を掘り出すために地面を掘る必要があった」ために起きた盗難であるとも考えられないだろうか。

 

ロケット団シルフカンパニー本社占拠の目的はマスターボールだった可能性がある

 前述した通りであるが、ロケット団ヤマブキシティシルフカンパニー本社を占拠するという事件を起こした。この目的については複数の可能性が考えられ、ポケモングッズそのものを狙ったという可能性やポリゴンの技術を狙ったという可能性が考えられる。ここでは、シルフのある社員が予想したように (図2A)マスターボールが狙われたものとして考察を行っていく。ロケット団のボスであるサカキは社長室で何かの要求を行っていた。その詳細については明らかとなっていないが、シルフカンパニーにおいてサカキに勝利するとシルフの社長からマスターボールをもらうことができる (図4)。このマスターボールは社長曰く秘密の試作品であり、まだ製品化されていない商品であると考えられる。そのようなボールを、高値を付けることで自分たちの資金源にしようと考えるか、あるいは使ってしまおうと考えるかは定かではないが、本考察ではロケット団マスターボールを使用する目的で求めていたと仮定する。ロケット団マスターボールを手に入れていた場合、それはどのポケモンに使用されたのだろうか。ここで、ウルトラサン・ウルトラムーンのレインボーロケット団に着目する。レインボーロケット団のサカキは手持ちにミュウツーを加えていたが、このときにミュウツーが入っているボールに着目したい。他のボスの手持ちに加わっている伝説のポケモン達も同様ではあるが、このミュウツーマスターボールに入れられている。レインボーロケット団に登場する各組織のボス達は、それぞれが元々いた世界で自らの野望を達成した人物達であると考えられている。レインボーロケット団のサカキは、自身の野望を達成する仮定において、シルフカンパニーからマスターボールを得ることに成功したのではないだろうか。そして、ハナダの洞窟に潜伏していたと思われるミュウツーの捕獲に着手し、手持ちに加えるに至ったと推測することができる。

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4. マスターボールシルフカンパニーの「秘密の試作品」であった

ロケット団ボス・サカキとの戦いに勝利するとシルフの社長からマスターボールをもらえる。ロケットゲームコーナーではポリゴンが、その地下に広がるロケット団のアジトにはシルフスコープが入手できることからシルフの製品はロケット団側に流れている可能性が示唆されるが、ポケモンを必ず捕獲できるマスターボールだけは渡すわけにいかないと社長は考えていたのだろうか。

 

【残された謎と更なる仮説 (I)】

 ここまでの記述では、ミュウツーロケット団は関わり得たのかという点について仮説を提唱してきた。以降の記述では、前述の内容よりも手がかりが少なく、より多くの部分を推測で補わなければならない問題について考えていく。

 

ミュウツーカロス地方にも潜伏している

 ミュウツーは、第6世代の作品であるX・Yの冒険の舞台となるカロス地方にも登場する。カロス地方にはポケモンのむら(以降、「ポケモンの村」と表記)と呼ばれる場所が存在し、ミュウツーはそこから行くことができる洞窟であるななしのどうくつ(以降、「ななしの洞窟」と表記)に潜伏している。このミュウツーについては第7世代現在ではほとんど言及がされておらず、どのようなバックグラウンドを持つポケモンであるのかが不明である。ななしの洞窟のミュウツーは、フジ博士が創り出したミュウツーのように科学の力で創り出された存在なのだろうか。エイセツジムのジムリーダーであるウルップによれば、ポケモンの村に棲むポケモン達は人間によって酷い目に合わされた経験を持つポケモン達であるという。これはシオンタウンのポケモンハウスに身を寄せるポケモン達と似た境遇であることを思わせるが、そのような場所に潜伏するミュウツーには何かを感じるところがあったのであろうか。あるいはウルップが語るように、独りでいるという点において都合が良かったから居座っているのだろうか。真相は現在のところ不明である。

 

フジ博士とカロス地方は結びつくか

 前述の通り、ななしの洞窟(ポケモンの村)のミュウツーのバックグラウンドについては不明であるが、ミュウツーと深い関係を持つ人物であるフジ博士が、ミュウツーの研究という点においてカロス地方と関係している可能性はあるのだろうか。そもそも、フジ博士がカロス地方と関係している可能性はあるのだろうか。この疑問に対する考察はメタ的な側面をより多く含む推測になると言わざるを得ないが、本考察では (i) 現実世界におけるギアナにはフランス領が含まれる(フランスはカロス地方のモデルとなった地域である)、(ii) ミュウツーメガシンカすることができる、(iii) ポケモンのふえ、という3点からフジ博士とカロス地方について考えていきたい。

 

南米・ギアナにはフランス領が含まれている

 まずは(i)について考える。ポケモン屋敷の日記には「南アメリカギアナ」が登場する。現実世界におけるギアナは複数の国の領地となっているが、そこにはカロス地方のモデルとなった地方であるフランスが含まれている。日記の内容からはフジ博士がギアナに直接赴き、ジャングルの奥地でミュウを発見したという推測が可能であるが、この「ギアナ」はポケモン世界ではカロス領ということなのだろうか。ただし、この点について掘り下げていくのは難しい。日記の「南アメリカ」とは現実世界の南米(アメリカ大陸の南)と同義であると思われるが、カロス地方をはじめとしたポケモン世界の地理に「南米ギアナ」を組み込んで考えることが可能であるのかが不明である。また、前文では「カロス領」という表現を用いたが、これはポケモン世界の「地方」を「国」として考えた場合の表現である(オメガルビーアルファサファイアのエピソードデルタの登場人物であるヒガナは「背の高い異国の男」という発言をしているが、ここで言及されている「男」が古代カロスの王であるAZのことを示すのだとすれば、ホウエンとカロスが別の国であるとも考えられる)。「飛び地」というニュアンスでカロス領という表現をすることも可能かもしれないが、「ポケットモンスター」というフィクション作品の世界観と現実世界の地理や行政についてを混合して考えるには多くの点を考慮しなければならず、論理的に説明を付けることが困難であると予想される。

 

最果ての孤島はカロス地方の近海に存在する可能性がある

 前項ではギアナについて簡単な言及を行ったが、以降は最果ての孤島について考える。前述したように、最果ての孤島はホウエンマップ中には表示されない島である。では、最果ての孤島はどこに存在するのだろうか。古びた海図の詳細をゲーム中で確認することができないため詳細については不明なままであるが、おおよその位置を1つの可能性として推測することはできる。ルビー・サファイアのリメイク版であるオメガルビーアルファサファイアでは、リメイク版の追加要素としてホウエン地方カロス地方の関連を示唆する記述・描写が散見された。ここでは、ホウエンマップで見ることができる108番水道の説明に着目する。この説明によると、この海域にはカロス地方から泳いでくる人が存在するという。これはホウエン地方カロス地方が地理的に近い位置に存在していることを示唆している。また、カロス地方のアズールわん(以降、「アズール湾」と表記)では、ホウエン地方から泳いできたと発言するかいパンやろうが登場する。これらの情報を合わせて考えると、アズール湾(あるいはわだつみのあな)を越えた先の海が108番水道であるという予想ができる。

 カイナシティ、もしくはミナモシティから出航した船が古びた海図に示された航路を辿った先は、カロス地方の近海に存在する島なのかもしれない。本項の説明だけでは根拠に乏しいことは否めないが、前述した「ななしの洞窟のミュウツー」や、メタ的な視点故に考察が困難ではあるものの「ギアナ」について、後述する「メガシンカ」((ii)について)や「ポケモンのふえ」((iii)について)のような状況証拠はこの仮説を支持する根拠になる可能性があるのではないだろうか。

 

フジ博士はミュウツーメガシンカを意図して組み込んだのか

 次に(ii)について考えていく。第6世代X・Yからは戦闘中限定の進化である「メガシンカ」が登場した。メガシンカにはそのポケモン専用のメガストーンが必要であるが、ミュウツーにはミュウツナイトX及びミュウツナイトYと呼ばれるメガストーンが存在する。人工のポケモンであるミュウツーメガシンカすることができる理由については一考の余地がある。フジ博士の手で創り出されたミュウツーは、先天的にメガシンカする能力を有していたのだろうか。あるいは、フジ博士の元を離れた後に何らかの理由で後天的に獲得した能力なのだろうか。そして、ミュウツーのメガストーンの起源とは何なのであろうか。

 ポケモン図鑑の記述によれば、ミュウツーは極限まで戦闘能力を高められた存在であるという。メガシンカしたポケモンは従来よりも強い力を発揮すると考えられるため、ミュウツーメガシンカは意図して組み込まれたものであるとも考えられる。仮にそうであるとするならば、ミュウツーを創り出したフジ博士はメガシンカと関係が深い地方であるホウエンやカロスとも関係していた可能性が浮上してくる。

 ゲーム本編外の話になってしまうが、アニメ「THE ORIGIN」ではフジ老人は主人公であるレッドにキーストーン(メガシンカに必要なストーンで、トレーナーが使用する)とメガストーンを託していた。このアニメにおけるフジ老人はかつてメガシンカについても研究していたらしいが、その研究成果はミュウツーにも反映されていたのかもしれない。また、このときレッドが受け取ったメガストーンはかえんポケモンリザードンメガシンカさせるために必要なストーンの1つであるリザードナイトXであった。ミュウツーリザードンは2種類のメガシンカ形態(それぞれ、メガミュウツーXメガミュウツーYメガリザードンXメガリザードンY)を持つポケモンであるが、これにフジ老人が関与していたことには理由があるのか、あるいは偶然なのかは興味深い点である。

 

ポケモンのふえはカロス地方のとある一族に伝わる道具である

 前項までで(i), (ii)について言及してきたが、フジ博士がカロス地方と関与していた可能性を示唆する根拠としては弱いと言わざるを得ない。そこで、本項では(iii)について考える。ポケモンのふえ(以降、「ポケモンの笛」と表記)は、ポケモンを眠りから目覚めさせる効果を持つ音色を奏でることができる笛である。赤・緑、青、ピカチュウ及びリメイク版のファイアレッドリーフグリーンのストーリー中では12ばんどうろ及び16ばんどうろを塞いでいるいねむりポケモンカビゴンを起こすために必要となる。この道具は、ロケット団によって軟禁されたフジ老人を救出することでフジ老人からもらうことができる。ポケモンの笛は、X・Yのストーリー中にも登場する。カロス地方・コボクタウンにはショボンヌじょう(以降、「ショボンヌ城」と表記)という城が存在し、その城主の一族には代々ポケモンの笛が受け継がれている。X・Yに登場する城主は笛の名人であるとされ、ストーリー中では第1世代と同じように道路を塞ぐカビゴンを起こすために音色を奏でる。カロス地方では貴族の家系(城を持つ一族であることからこのように予想する)に受け継がれるほどの道具であるポケモンの笛を、フジ老人が持っていたという点には一考の余地がある。ポケモンの笛がどのような歴史、あるいは由来を持つ道具なのであるかは不明であるが、仮にカロス地方に由来する道具であるとするならば、ポケモンの笛はフジ博士とカロス地方を結びつける根拠の1つとなり得る可能性がある。

 

【残された謎と更なる仮説 (II)】

 以降は、前述までで述べてきた仮説に対して残された疑問について、また、主に第1世代から3年後の世界である金・銀、クリスタル及びリメイク版のハートゴールドソウルシルバーカントー地方から見えてくる事柄について考えていく。

 

ミュウツーの研究に携わった人物は1人ではない

 まず、「ロケット団はフジ老人を、ミュウツーを創り出した人物として軟禁した」という前述の仮説から出てくるであろう疑問について記述する。そもそも、ロケット団ミュウツーの存在を知る可能性はあったのだろうか。この疑問に対する答えも、グレンタウンに着目することで見えてくる。フジ博士は、グレンラボラトリーの創設者である。この研究所は赤・緑、青、ピカチュウ及びファイアレッドリーフグリーン時点で稼働していることから、グレンラボラトリーに在籍する研究員の中にはミュウツーの研究について知っている人物が存在する可能性がある。また、ポケモン屋敷の日記も注目すべきポイントがある。日本語版の日記(9月1日)は「わたし」とされているものの、英語版の日記を見てみると、7月10日 (July 10)、2月6日 (Feb. 6)、9月1日 (Sept. 1) の文には “we” という単語が使用されている (文5)。これは、ミュウツーに関する研究はフジ博士が単独で行った研究ではないことを示唆している。さらに、ポケモン屋敷の中には複数人のトレーナー(「かじばどろぼう」及び「はぐれけんきゅういん」(第1世代);「たんパンこぞう」及び「かじばどろぼう」、「けんきゅういん」(第3世代))が登場するが、この中にはフジ博士の弟子であった研究員がいる (図5A)。これらの点を考慮すると、ミュウツーの研究を知る可能性がある人物がフジ博士以外にも存在する可能性が見えてくる。また、カツラがジムリーダーを務めるグレンジムには鍵がかけられていた。ジムの扉を開けるために必要な道具であったひみつのカギはポケモン屋敷の最奥部に存在していたが、この事実はフジ博士とカツラを関連付ける可能性もある。前述したように、ファイアレッドリーフグリーンのグレンジムにはフジ老人とカツラが仲良く写る写真が飾られていた。さらに、グレンタウンの住人の発言によれば、カツラはグレンタウンに研究所ができる前から住んでいたという (図5B)。つまり、カツラがフジ博士と面識を持っている可能性は十分に考えられることであり、フジ博士とフジ老人が同一人物であるならばカツラもミュウツーの研究を知る人物の1人である可能性すら浮上する。

 ミュウツーの研究を知る可能性がある人物はこれだけにとどまらない。ポケモンの権威であるオーキドはかせ(以降、「オーキド博士」と表記)もその研究を知っていた可能性がある。オーキド博士は主人公及びライバルにポケモン図鑑を託す際、「ポケモンは150種類いる」という旨の発言を行っている。この150種にはミュウツーが含まれている。つまり、物語開始時点でオーキド博士ミュウツーの存在を知っていたことになる。また、青、リーフグリーン、Xのポケモン図鑑 (文1 B) からは、ミュウツーを創り出すための遺伝子研究は何年もかけて行われたことがわかる。主人公とライバルにポケモン図鑑が託されたのは、ポケモンを捕獲することでその生態を調べ、記述するためであった。しかし、この事実はポケモンの生態調査から明らかになる内容ではない。このような視点からも、ミュウツーの研究の詳細を知る疑惑を持つ人物をあぶり出すことができる。ただしメタ的な観点からは、前述したオーキド博士の発言は「ゲーム開始に先立つプレイヤーへのアドバイス/ヒント/説明」という側面があるとも考えられるため、人によって解釈が分かれる点かもしれない。

 さらに、ポケモンリーグの関係者はミュウツーの存在そのものを知っていた(実物を見たことがあった)可能性がある。ミュウツーが潜んでいるのはハナダの洞窟であるが、第1世代及び第3世代ではこの洞窟は殿堂入り後でないと入ることができない。ポケモンリーグの関係者が洞窟の入り口前に立っているためである。この人物によれば、ハナダの洞窟はポケモンリーグの許可がないと入ることができない危険な洞窟であるという(レベルが高い野生ポケモンが生息しているため)。根拠は薄いが、ポケモンリーグがハナダの洞窟を管理下に置いた理由はミュウツーを監視するためだったとも考えられる。フジ博士らの手に負えなくなったミュウツーがハナダの洞窟に潜伏したことを知ったポケモンリーグは、ミュウツーによる事故がどこかで発生することを防ぐために監視を行うようになったとも考えられないだろうか。もしかすると、ジムリーダーであり様々な事情を知っていたカツラによってポケモンリーグに情報がもたらされた可能性もあるかもしれない。そしてこの監視は、ロケット団がハナダの洞窟に侵攻することを食い止めていたとも考えられる。前述の通り、ロケット団はおつきみ山及びハナダシティ、24番道路のゴールデンボールブリッジと、ハナダの洞窟の周りで暗躍を行っていたのである。仮にロケット団がハナダの洞窟のミュウツーに狙いを定めていたのだとしても、ポケモンリーグの監視を突破することは容易ではなかっただろう。

 しかし反対に、ポケモンリーグの監視がロケット団に情報を与える原因となってしまった可能性もある。ロケット団のボスであるサカキは、トキワジムのジムリーダーでもあった。この事実は、サカキがポケモンリーグと関わりを持っていたことを示唆するものである。もしサカキがジムリーダーであったが故にハナダの洞窟やミュウツーの情報を知る機会があったのだとすれば、ロケット団にはミュウツーの情報がサカキを介して知れ渡ってしまったということになる。

 ゲーム本編では、グレンタウンにはロケット団は登場しない。しかし、ミュウツーに関する情報をロケット団が掴む可能性は十分に考えられるのである。

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5. グレンタウンに見えるポケモン研究の存在

A. ポケモン屋敷のはぐれけんきゅういん。この人物はフジ博士の弟子であると考えられるが、ミュウツーやミュウについて知っていることはあるのだろうか。

B. グレンタウンの女性。この発言における研究所とはグレンラボラトリーのことだと考えられる。また、グレンジムのジムリーダーであるカツラがグレンタウンに住み始めてから長い年月が経っていると予想される。

 

 

Diary: July 5

 

Guyana, South America

A new Pokémon was discovered deep in the jungle.

 

Diary: July 10

 

We christened the newly discovered Pokémon, Mew.

 

Diary: Feb. 6

 

Mew gave birth.

We named the newborn Mewtwo.

 

Diary: Sept. 1

 

MEWTWO is far too powerful.

We have failed to curb its vicious

tendencies…

 

5. ポケモン屋敷に残された日記(英語版)

ポケモン屋敷の日記の英語版。単数形や複数形、代名詞等に着目することで日本語の文章からは分からない情報を得ることができる。

 

ロケット団解散から3年後のカントー地方から考えるミュウツー考察

 本項より、ロケット団解散から3年が経過したカントー地方金・銀、クリスタル及びハートゴールドソウルシルバー)で見聞きできる情報からミュウツーロケット団の関連について考えていく。メタ的には「ROMの容量」という問題があったためとも言われているが、赤・緑、青、ピカチュウカントー地方金・銀・クリスタルのカントー地方は大きく様子が違っている(ハートゴールドソウルシルバーでは、トキワのもりやハナダの洞窟といったリメイク前には簡略化、または立ち入り不可とされてしまった場所のいくつかが冒険できるようになっている)。大きく様子が変わった場所の中で、本考察でこれまで考えてきた仮説と繋がりうる事柄はあるだろうか。

 

シオンタウンのポケモンタワーはカントーラジオ塔へと姿を変えた

 まずはシオンタウンに着目する。この町に存在したポケモンタワーは、金・銀、クリスタル、ハートゴールドソウルシルバーではカントーラジオとう(以降、「カントーラジオ塔」と表記)へと姿を変えていた。3年の間に一体何があったのだろうか。

 ラジオとう(以降、「ラジオ塔」と表記)は、金・銀で初登場した施設の名称である。ジョウト地方においてはコガネシティに存在し、「オーキドはかせのポケモンこうざ」や「ポケモンミュージック」といった番組を配信する電波塔の役割を担っている。金・銀、クリスタル、ハートゴールドソウルシルバーではコガネシティのラジオ塔は団の復活を目論むロケット団の残党によって占拠されてしまい、主人公は塔の解放のために戦いを繰り広げることになる。コガネシティのラジオ塔は、ロケット団に勝利した後は全フロアの見学をすることができるようになる。これに対し、シオンタウンのラジオ塔は1階のみしか見学ができない。階段の前に立つ警備員によれば「ジョウトのラジオ塔がロケット団に占拠されたために警備を強化した」とのことである。既にロケット団の復活も頓挫した後に警戒体制を整えるというのは少し動きが遅いようにも思えるが、かつてロケット団が暗躍していたカントー地方ロケット団のような悪に対してはより敏感になっているということの表れなのかもしれない。

 

フジ老人はカントーラジオ塔の建設に反対しなかった可能性がある

 本題に移る。ポケモンタワーは、何故カントーラジオ塔へと姿を変えるに至ったのだろうか。ポケモンの墓地であり、かつてのパートナーを偲んで多くのトレーナーが訪れる施設であったポケモンタワーを、施設として全く機能が異なるものに作り変えてしまうというのは普通ではないように思われる。ロケット団の解散から3年が経過したシオンタウンにもフジ老人は住んでいるが、彼はポケモンタワーの閉鎖に反対しなかったのだろうか。フジ老人自身の性格、及びポケモンハウスの管理人という立場を考慮すれば、彼はこれに反対しただろうと予想できる。しかし本考察では、これとは逆の可能性を考える。フジ老人は、むしろポケモンタワーの閉鎖とカントーラジオ塔の建設を推し進めたかった可能性があるのではないだろうか。

 前述した通りであるが、ロケット団はフジ老人を「かつてミュウツーを創り出した人物」であるために軟禁した可能性が考えられる。前項では言及しなかったが、この仮説は以前から一部のプレイヤー(ファン)の間で既に提唱されていたものである。そしてこの仮説に付随される形でもう一つ、「ポケモンタワーにはミュウツーの暴走によって犠牲となったミュウの遺体が埋葬されている」という別の仮説も提唱されている。これら2つの仮説を合わせて考えると、フジ老人は自身が知るミュウツー創生についての技術・経緯をロケット団に知られたくなかったということだけでなく、ポケモンタワーを捜索されることでミュウの遺体がロケット団に渡ってしまう可能性に危機感を抱いた可能性が浮上する。ただし、あくまでも想像の域を出ることはなく、それらしい根拠も存在しない。しかし、この仮説の方向性を支持するならば、例えば「ミュウの遺体(遺骨)」ではなく「ミュウツー創生の仮定で犠牲になった生き物(ポケモン)」が埋葬されているという想像もできるため、妄想を広げられるポイントではあると言える。

 ミュウの遺体(遺骨)や「ミュウツーの研究で犠牲になったもの」の亡骸がロケット団の手に渡るということは重大なことなのだろうか。ここで忘れてはならないのがグレンラボラトリーの化石復元技術である。詳しくは以前の考察(「#4. ポケモンの化石復元技術の原理とその開発者」)で述べた通りであるが、ミュウの遺体、もしくは遺骨からはミュウのDNAが採取される可能性が考えられる。ミュウのDNAが手に入ってしまえば、あとはフジ老人(フジ博士と同一人物という前提として話を進める)がかつて行っていたことと同様の操作をすることでロケット団は「第2のミュウツー」とでも呼ぶべき人工のポケモンを創り出していたという予想ができる。また、それがミュウではなかったとしても、フジ博士の研究の過程がロケット団の手に渡ってしまうということ自体が脅威のタネとなり得ただろう。

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  ロケット団に軟禁された(もしかしたら実際にミュウツーやミュウについて問い詰められたかもしれない)ことで、フジ老人が前述したような危機感を抱いたと仮定する。その場合、フジ老人は「いつか同じことを目論む人物がまた現れるかもしれない」と考えるのではないだろうか。このような可能性を危惧したのであれば、「ポケモンタワーに存在する(埋葬されている)、ミュウツー研究の犠牲になった何か」を他人の手に渡らないようにしようと画策するという可能性が浮上してくるのではないだろうか。しかし、埋葬されている遺体を掘り起こし、別の場所へ移動させるというのは簡単なことではない。ましてやシオンタウンでは名の知れた人物であるフジ老人だからこそ、そのようなことを実行に移すのは難しいかもしれない。では、どうするのか。これが根拠の存在しないただの妄想であるということは言うまでもないが、施設全体、すなわちポケモンタワー自体を手にかけてしまったとするならば、「フジ老人が利用されることを恐れている存在」、すなわち「ポケモンタワーに存在する(埋葬されている)、ミュウツー研究の犠牲になった何か」をどさくさに紛れて移動させる(隠してしまう)ことが可能とは考えられないだろうか。無茶苦茶ではあるものの、木を隠すなら森の中、という理論である。筆者としてはこのような可能性は考えたくないが、「フジ老人は表向きにはポケモンタワーの改築計画に反対していたが、実際には計画を推し進める真の黒幕であった」という可能性すら考えられるのかもしれない。

 前述した仮説を支持する根拠とは言い難いが、ロケット団暗躍から3年後のシオンタウンでは興味深い話が聞ける。このシオンタウンにもポケモンハウスが存在するが、その中にいる1人の人物はフジ老人しか入れない部屋の存在を語っている。そのような部屋が本当に存在するとしたら、そこには何が存在するのだろうか。前述した仮説のようなことが本当に起こっていたとするならば、「フジ老人がポケモンタワーから移動させたかった何か」がその部屋に存在するという妄想もできないだろうか。

 ただし、この仮説の反証となり得る手がかりも存在している。ポケモンタワーにミュウの遺体(遺骨)が埋葬されていたと仮定した場合、最果ての孤島に存在したミュウの解釈について矛盾が生じる可能性がある。「フジ博士が発見したミュウは1匹ではなかった」、「ミュウが産んだ子供は複数匹存在していた」とするならばこの限りではない。しかし、ポケモン屋敷の日記の英語版は”A new Pokémon was discovered deep in the jungle.”とされている。冠詞に”A”が使用されていることは”new Pokémon”が単数であることを示すため、ギアナのジャングルにてフジ博士が発見したミュウは1匹であると分かる (文5)。一方、ミュウが産んだという子供についても” Mew gave birth. We named the newborn Mewtwo.”という文より1匹であると解釈できる (文5)。これらの英文から考えると、最果ての孤島に存在したミュウはミュウツーの産みの親であると解釈可能であり、前述したような「ミュウの遺体(遺骨)」は存在しないということになる。もし本当にポケモンタワーに何かが埋葬されていたのだとすると、それはフジ博士の何年にも及ぶ研究(ポケモン図鑑の記述 (文1B)を考慮すると、ミュウの発見から約7ヶ月(ポケモン屋敷の日記の日付から算出)でミュウツーが誕生したわけではないということになる)の間で失われたものということになるのだろうか。一応、ミュウツーの父親に当たるポケモンについては何も語られていないため、そのような存在が埋葬されているという妄想も可能ではある。しかし、やはり根拠を一切伴わず、妄想の域を脱しないため、現状では考察が収束することはないだろう。

 

グレンタウンの噴火が人為的に引き起こされた可能性がある

 次に、グレンタウンに着目する。金・銀、クリスタル、ハートゴールドソウルシルバーで登場したグレンタウンは、噴火によってほとんど何も存在しない町となってしまった。かつてカントー地方から旅に出たポケモントレーナーであるレッドのライバルで、レッドの前のポケモンリーグチャンピオンであり金・銀、クリスタル、ハートゴールドソウルシルバーでトキワジムのジムリーダーを務めるグリーンは自然の力による噴火との解釈をしていた。しかし、金・銀、クリスタル、ハートゴールドソウルシルバーでは火山の火口と思われる部分がかつてグレンジムが存在していた場所に存在すること、及びポケモン屋敷にはミュウツーに関する日記が残されていたという点から、プレイヤー(ファン)の間ではグレンタウンの噴火はミュウツーの研究に関する記録を隠滅するために、人為的に引き起こされたものであるという考察が行われた。グレンジムのジムリーダーであるカツラがほのおタイプ使いであるために火山への干渉が可能であると考えられていることや、カツラとフジ老人が友人関係であるということもこの仮説を支持する点とされている。

 前項で記述したような危機感をフジ老人が抱いていたとするならば、この仮説も考えられる可能性の1つなのかもしれない。「ポケットモンスター」シリーズ最新作であるLet’s GO!ピカチュウ・Let’s GO!イーブイカントー地方が冒険の舞台となることが明らかとなっているが、発売前の情報として解禁されたカントー地方のマップにはグレンタウンに火山が描かれていた。その火山は島の左側に描かれており、グレンジムが存在する場所の真逆に位置している。これは前述した仮説の元となった情報の1つ(火口と思われる場所)と相違することとなるが、実際はどうなのだろうか。この仮説についても、今後明らかになる事実次第では再考が必要となるだろう。

 

ハナダの洞窟の入り口は一度崩れ落ちた

 赤・緑、青、ピカチュウファイアレッドリーフグリーンではミュウツーが潜伏していたハナダの洞窟であるが、金・銀、クリスタルでは入り口が崩れたために入れなくなっていた(代わりに、はかいのいでんしというミュウツーを連想させるような道具が元々入り口が存在した場所に落ちている)。一方ハートゴールドソウルシルバーでは洞窟が開かれており、入れるようになっていた。前述の通りであるが、メタ的には金・銀、クリスタルではデータ容量の問題からカットされたものと考えられるが、ハートゴールドソウルシルバーのマップでハナダの洞窟にフォーカスすると一度崩れた洞窟が再び入れるようになったということが分かる (図6)。この点は興味深い。入り口が崩れた理由、及び再び開かれた理由については不明である。しかし例えば、一度人為的に(フジ老人の手回しによって)崩された洞窟の入り口が、何者か(ミュウツー、あるいはミュウツーを狙う誰か)によって再び開かれたという妄想も可能である。

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6. ハナダの洞窟の入り口は再び開かれた

ハートゴールドソウルシルバーのマップで確認できるハナダの洞窟の説明。金・銀、クリスタルと同様に、一度は洞窟が崩れて入れなくなっていたことが分かる。メタ的に考えれば「リメイク版では入れるようになった」という意味にも解釈できるかもしれないが、そうでないとするならば、何故このようなことが起こったのだろうか。

 

今後の作品で明かされる秘密は存在するか

 最後に、ゲーム本編やその他関連作品について簡単に考える。

 2019年の夏に公開の映画として、劇場版ポケットモンスター最新作である「ミュウツーの逆襲 evolution」が発表されている。劇場版第1作の「ミュウツーの逆襲」では、例えばゲーム本編では関連が描かれなかったミュウツーロケット団接触が描かれたが、最新作では何が描かれるのだろうか。現時点ではどのような映画であるかが一切不明であるが、ミュウツーについての知られざる秘密が描かれる可能性も考えられる。タイトル的には「ミュウツーの逆襲」のリメイクや続編という受け取り方もできるため、多くの観点からこの映画への注目度は高いものと思われる。

 発売が間近に迫っているシリーズ最新作である「Let’s GO!ピカチュウ」及び「Let’s GO!イーブイ」では発売前の時点で公開されているPVにミュウツーが登場しているが、そこに新しく誰かが、あるいは何かが関わってくる可能性はあるのだろうか。

 本考察では触れなかったが、赤・緑、青、ピカチュウファイアレッドリーフグリーンのクチバシティに停泊する豪華客船であるサント・アンヌごう(以降、「サント・アンヌ号」と表記)にはロケット団を追う国際警察が登場した。サン・ムーンでも国際警察のメンバーが登場したが、このときは別の世界(平行世界とも考えられている)同士を繋ぐウルトラホールを潜った人物(Fallと呼ばれる)について言及がなされた。また、ウルトラサン・ウルトラムーンで登場したレインボーロケット団もウルトラホールを通じてウルトラサン・ウルトラムーンのアローラ地方に現れた。サント・アンヌ号の国際警察は、ウルトラホールに何らかの関係を持つだろうか。もし関係を持つとするならば、レインボーロケット団のサカキがミュウツーを手持ちに加えていた理由について、あるいはサカキが通るためのウルトラホールを開けるUB(ウルトラビースト;ウルトラホールを通って現れるという、別世界の存在とされるポケモン)についての手がかりを得られるかもしれない。

 今後、本考察で提唱した仮説を進展させるような情報が提示されるだろうか。現在考えられる仮説の真偽はともかく、非常に興味深い。

 

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7. 本考察で提唱した仮説に基づく人物・組織・ポケモン間の相関図

本考察で提唱した仮説のまとめ。本文中では言及しなかったが、フジ博士がポリゴンの開発に関与していた可能性があるとすれば図のようになるだろう。フジ博士が人工のポケモンであるミュウツーの研究を行っていたこと、ポリゴンの開発がどこかの研究所で行われていたことを合わせて考えると、両者の間には関わりがあるのかもしれない。仮にそうだとするならば、ロケット団シルフカンパニーの内部情報からフジ博士やミュウツーについての情報を得た可能性も考えられるようになる。

 

 

【方法】

 

「世代」の区分

 本考察では、バージョン(赤・緑など)を「世代」で区分した。赤・緑、青、ピカチュウを第1世代(初代)、金・銀、クリスタルを第2世代、ルビー・サファイアファイアレッドリーフグリーン、エメラルドを第3世代、ダイヤモンド・パール、プラチナ、ハートゴールドソウルシルバーを第4世代、ブラック・ホワイト、ブラック2・ホワイト2を第5世代、X・Y、オメガルビーアルファサファイアを第6世代、サン・ムーン、ウルトラサン・ウルトラムーンを第7世代とした。Let’s GO! ピカチュウ・Let’s GO! イーブイはこれらの区分から除外した。

 

画像

 本考察のゲーム画像は、全て筆者のROMを用いたプレイ画面を使用した。プレイ画面はiPhone 7のカメラを用いて撮影し、MacBook Airに取り込んだものを必要に応じて編集した。画像編集及び図の作成は、Keynote (バージョン6.5.2) を使用して行った。

 

使用ROMと本体

 ファイアレッドピカチュウ(VC)及びハートゴールドを使用した。各ROMの起動には、ファイアレッドニンテンドーDS Liteを、ピカチュウ(VC)はニンテンドー3DS LLを使用した。ハートゴールドについては、両方を使用した(状況に応じて使い分けた)。

 

ゲーム中の記述(ポケモン屋敷の日記、最果ての孤島の文、ボイスチェッカー、ポケモン図鑑の説明文)

 ポケモン屋敷の日記は、VC版ピカチュウを用いて記述を確認した。その他の記述は、日本語版は【参考・引用文献】に示す1を、英語版は2を参照した。

 

【謝辞】

 本考察に関して、情報提供や貴重なご意見を賜った方々に感謝の意を示します。

 

【参考・引用文献】

  1. ポケモンwikihttps://wiki.ポケモン.com/wiki/
  2. Bulbapedia:https://bulbapedia.bulbagarden.net/wiki/Main_Page